7-7 封者たちの証明
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カロが父を呼んだ時、その胸に白い光が灯る。と、カロは、
「そうか――――」
と、何かを閃いたようにハッとした。
「……ずっと、不思議だった。あの無限の白い魔力はどこからやってくるのか、封者という存在が現れると、なぜ悪魔たちは出てこなくなるのか」
カロの語りは、たった1つの結論に向かって進んでいく。
「――――お前たち悪魔は、封者という存在に勝てない。支配されているんだ魔力すら」
そう口にしたカロを眺める悪魔たちは皆、怯えたように顔を引き攣らせていた。
「それで、なんだっていうの?」
そう食い下がったのは、ヴァ―テルだった。
「たとえ、それに気づいたからってどうにかなるものでもない。でしょ?」
「その通り!」
ヴァ―テルにヴァイオレットもそう続く。
しかし、カロは、
「どうかな。心の中にあった白いこの光がこの世界に存在するなら、封者だって呼び出せるかもしれねえ」
と返すと、悪魔たちが制止するよりも早く、
「なら、試すまでだ。出てきてくれ。――――《尊重》、《行動》、《寛容》、《素直》、《理解》、《行動》、《自立》、《愛情》」
と、その白い空間の中に呼びかけるのだった。
「――――よくぞ、私たちの名前を呼びましたね」
それから、少しのしんとした間の後で、そんな声が響き渡る。――――と、ずっとそこにあったのか、白い空間の中でキラキラとした何かが揺れた。
目を凝らすと、それは悪魔たちを構成する黒い線とは対をなすような、意識しなければ見ることもできないようなキラキラとした白い線だった。
白い線は、それから形を持ってカロを囲う悪魔たちの背後に現れる。と、
「アイポニー、惜しかったですね。あなたたちの負けです」
と、禁書《妄信》の封者であり《尊重》の名を冠するウェズーリは言った。
「負けってなんだよ……!!」
アイポニーは、ウェズーリを睨む。しかし、ウェズーリはあくまで諭すような態度で、
「私たちは、禁書を持つ者が真に正しい心を持たなければ出会えない存在。そして、出会ったところで、それを忘れてしまっては見逃されてしまう存在。――――ですが、この者はそれを最後まで忘れなかった。今までの出会いが、簡単な欲望からこの者を引き止め、私たちを呼び出すに至らしめたのです。――――あなたたちは私たちを望まぬようですが、それまでに無理矢理にでも誘導して願いを叶えさせられなかった。それが、あなたたちの負けでなくてなんだというのですか」
「……!」
苦虫を噛み潰したような顔になる、アイポニー。
しかし、一方でサンズは、
「だが、それが本当にその者の幸せとは限らない」
と、食い下がるのだった。
すると、ウェズーリはカロの方を振り返って尋ねた。
「――――カロ、あなたの願いは?」
それに、カロはまっすぐと見つめ返して答える。
「禁書を、破壊することだ」
その言葉を聞き、その目を見て、ウェズーリはにっこりと笑った。
「あなたの願い、叶えて差し上げましょう。――――しかし」
「しかし?」
「この者たちの意見を、最後にもう1度聞くのです。そうして、あなたの心残りを払い、決断の意思の強さと正しさを証明してみせましょう」
「……分かった」
カロはウェズーリの言葉に頷くと、改めて悪魔たちと向き合う。
すると、まず口を開いたのは、《支配》の名を冠するヴァ―テルだった。
「そもそも、私を殺すと玉砂シズクも死んでしまうかもね。なんせ、私の力で彼女はこの世に顕現したのだし」
いつかカロに言ったことを、同じように繰り返す。しかし、それに《支配》の封者であるサタは、
「ならば、特魔で貴様が封印されていた時、なぜ玉砂シズクは平気だった? この世に召喚し、定着した魂は、むしろ貴様の管轄を離れているのでは?」
と、返してみせた。
「……!」
動揺する、ヴァ―テル。
そこで、今度は《依存》の名を冠するキュルソンが、
「玉砂シズクのいない未来。そんなものを選ぶなどありえぬことは明白だ」
と、強く断言してきた。
しかし、《依存》の封者であるマンデラは、
「そうだな。――――しかし、普通に考えりゃ、お前たちがいない未来にも玉砂シズクはいるはずだぜ」
と、それを軽くいなしてみせた。
「まあ、あたしはどの未来を選んでもいいと思うわよ。……ただし 他の未来が良かったと嫉妬しないようにね♡」
それから、《嫉妬》の名を冠するサラがそう忠告するように言っても、
「他の未来が良かった。もっと選べたことが、出来たことがあったのではないか。そう思わないために、貴様らを破壊するのじゃ」
と、《嫉妬》の封者であるフライは、それを肯定しつつ否定してみせる。
そこで、《虚栄》の名を冠するヴァイオレットは、
「自分というのは時に大きくみせることも大事であるが、今は意地を張る時ではない!! 自分の心に従うべきだ!!」
と、いかにも正しいことを言っていると言わんばかりに声を張ったが、《虚栄》の封者であるサンタニアに、
「……意地を張っているのは、どちらかしら。それに、これは意地を張るのではなく、信念を貫くってことよ」
と、静かに諭されてしまうのだった。
ならばと、《無情》の名を冠するチャリオットは、
「選択は、手に入る結果だけを見るべきでしょう。あなた自身に残るものが何か、それが重要なのです」
と、今度はカロに冷静に諭すように言葉を語る。しかし、
「何かを得ようとして手に入るものと何かを取り除いて手に入るもの、どっちもあるよねぇ〜。だけど、カロは簡単な幸せよりも、世界から悲しみを取り除きたいって、今回はそっちの方が自分だけでなく周りの幸せも手に入ると知ってるんじゃないかな〜」
と、《無情》の封者であるチュズスキンには、むしろそれを利用されてカロの考えを肯定されてしまった。
「より確実なものを、確実な幸せを」
《臆病》の名を冠するサンズは、誰にも聞こえないような呟きをぼそりと漏らす。
が、それが一抹の心残りとしてカロの心に毒針のように突き刺さって気になってしかたなくなる前に、
「そうだな! あたしたちが来たからには、安心だ!! 確実に願いを叶えてやれるぜ!!」
と、《臆病》の封者であるサーズは簡単に吹き飛ばした。
そして、最後に残ったのは《妄信》の名を冠するアイポニーと、その封者であるウェズーリだった。
アイポニーは珍しく焦った様子で、
「カロは、ここまで正しいことをしてきたんだ。出来うる限りの中で。だから、ここまで来られた。なら、今回もそうするべきだよ。カロ」
と、言葉を放つ。と、それに言葉を返そうと、
「ここまでが、正しいことというのなら――――」
と、ウェズーリが口を開いたその時だった。
しかし、それをカロが止めた。
「自分で……。ということですね?」
ウェズーリの問いかけに、カロは頷く。と、アイポニーに、
「俺のしてきたこととが、正しかったって?」
と、尋ねた。
「そうだよ! カロ! だから、今回も騙されちゃいけない!! 禁書を破壊するなんてことに願いを使えば、君の幸せは手に入らないかもしれないよ!!」
しかし、アイポニーは焦るあまり、それこそが今のカロを肯定することになっていることに気づけなかった。
「俺は今まで自分が正しいと思ってきたことを、できることをしてきたつもりだ」
「そうだよ! 玉砂シズクとの幸せな生活を手に入れるために、ここまでやってきたんじゃないか!!」
「そして、それが全て正しかったってんなら……」
「うんうん」
「だったら、今回も俺は自分の中の正しさに従って、お前たちを破壊する! それが、この俺の心の声だ!!」
「なっ――――」
その宣言に、アイポニーは目を丸くする。
そして、
「だ、だめだよ、カロ!! それじゃあ、玉砂シズクとの幸せは――――」
と、必死に訴えかけた。
しかし、カロはそんなアイポニーの口をガシッと手で掴む。と、次の瞬間、
「さっきから、うるせえんだよ。――――幸せにはなぁ、自分で、いや、シズクとなるんだよ! 2人でな!! それが、俺とあいつとの約束だ!!」
そう、力強く言った。
そして、最後に、
「余計なお世話だ。悪魔野郎」
と、その顔に言い捨てると、そのままアイポニーを投げるように放すのだった。
ウェズーリはそんなカロの姿を見て、母のように優しく笑う。そして、
「お見事。最後に、迷いは晴れましたか?」
「ああ。すっきりした」
「そうですか」
と、そんなやり取りをした後で、
「それでは、『魂に誓って、宣言する』と」
と、告げるのだった。
カロは目を閉じて息を整え、再び目を開く。
「魂に誓って、宣言する」
すると、そう口にしたカロの目の前には、バレーボールサイズほどのキラキラとした白い魔力の渦巻く塊が現れた。
カロは、それを両手で受け止める。と、それに向かって、
「禁書を、この世界から消してくれ。もう誰も、悲劇に巻き込まれなくていいように」
と、今度こそ願いを口にするのだった。
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