7-1 はやる気持ち
カロたちが遺跡を探索している時と同時刻。
遺跡の前。
その入り口を背に“デュラハン“10体たちと戦う、アザミ、シズク、文壱の姿がそこにはあった。
「――――シズク!」
アザミの声で、シズクが“デュラハン“による背中への攻撃を回避する。――――と、文壱が寝そべっている“クラーケン”の触手を振るって襲ってきた“デュラハン”を払い、同時にシズクに道を作り出した。
シズクは触手を駆け上がって、アザミたちの元へ戻る。と、3人は苦々しい表情を浮かべていた。
「あの体液をどうにかするには、この空間は広すぎるな……」
アザミの言ったことは正しく、相変わらず“デュラハン”たちに魔術は効かなかった。
しかし、その状況を打開しようと、
「けれど、触手は効いています! なら、叩き潰せばいいだけだ!!」
と、文壱は、はやる気持ちを魔術に込めて“クラーケン”の触手を振り上げた。
「待て、文壱! 倒さなくったっていいんだ!! カロたちが戻ってくるまで粘れば――――」
しかし、そんなアザミの静止を振り切るように、文壱は触手で辺りに散らばっていく“デュラハン”たちを追いかけていく。
「この旅で、やっと仲間になれた気がしたんだ。なのに、病院送りになって……。ここで、魔術のぶつけ合いで踏ん張らなきゃ、体もボロボロの僕は本当に足手纏いになってしまう!」
すると、その触手は1体また1体と“デュラハン”を潰し、追い払っていった。
そして、その攻撃の隙間からすり抜けてくる個体はシズクが弾き飛ばし、アザミはできることを探しながらそんなシズクに指示を飛ばしていた。――――その時だった。
文壱の追っていた“デュラハン”とシズクの追い返そうとした“デュラハン”が重なる。と、文壱は躊躇う。そして、シズクも躊躇いを見せた。いわゆる、お見合い状態になった。
その刹那の隙を逃さず、“デュラハン”は片方が土台になるともう片方がその背中を蹴って飛び上がり遺跡の入り口に向かって抜け出す。
そんな“デュラハン”の前に最後に立ちはだかったのは、アザミだった。
「アザミ、魔術が効かないのに……!!」
そのシズクの懸念は、正しかった。
そこで、アザミは、
「直接効かないなら、間接的に攻撃するだけだ!」
と、近くの柱を爆破して壊すと破片をハンマーで殴り、“デュラハン“に向かって飛ばしてみせた。
しかし、“デュラハン”の体液は刺突や打突などの点の攻撃を受け流す性質も持ち合わせていた。
だから、破片はその体に届こうとも纏う体液の滑りによって力の方向を受け流されると、体には傷が全く残らず、スピードも弱まることはなかった。
「……っ、だったら、こいつはどうだ!」
今度は破片の中でも平面的な平べったい板のようなものを“デュラハン”に向けて飛ばす、アザミ。
すると、破片が腹に当たった“デュラハン”は、押し戻されるように後ろに転がった。
そこを、追いついたシズクが狙い打つ。
(――――掴んで、とにかく遠くに放り投げる!)
しかし、同じ時同じ場所を睨んでいた者がいた。――――文壱である。
「影……!?」
シズクは、自身の背後に大きな影を感じて顔を上げる。と、そこにあったのは触手だった。
「もう、逃さない」
文壱は狂気的な目を覗かせる。――――と、今度はその触手でシズクごと構わず振り抜こうとした。
「文壱……!!」
それを、シズクは顔を顰めながらもなんとか飛んで避ける。
しかし、その際に3体の“デュラハン”を通してしまうと、アザミがハンマーと破片を使って1体は止めるものの、
「くそっ……!!」
と、他2体は遺跡の中に通してしまうのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
時間は進んで、“デュラハン”のやってきた遺跡の中。
カロたちは、台座の並ぶ円状の部屋を出て、分岐の多い通路の影に隠れていた。
「どうして、こんなところに“デュラハン”がいますの!?」
「まさか、隊長たちがやられたんじゃ……!」
「それなら、もっと多くの数がくるはず。奴らの爪や体に血痕がなかったことからも、恐らくすり抜けてきただけだと思います」
飛鳥が喚き、良月が動揺し、カロがそれを落ち着かせる。
すると、飛鳥が、
「ともかくあたくしたちは紋章に魔力が溜まるまで逃げ延びられれば、それでいい。――――そして、そこで願いを叶える。あなたの口にした、あの願いを。――――ですわね?」
と、確かめるように目標を共有した。
頷く、カロと良月。
そこで、良月は唐突に、
「《弌平死ノ太刀》――――《風雷雌雄》」
と、持っていた魔石具の大剣を2つに分けた。
そして、そのうちの1つをカロに差し出した。
「これ、持っていてください。魔石の力は魔力同様使えませんが、“デュラハン”たちを押し退ける道具や盾代わりにはなるはずです」
「でも……」
戸惑うカロに、飛鳥が、
「受け取るべきですわ。――――恐らく願いを叶えるのに必要なのは、その主。つまり、あなたです。あなたが死ねば、あたくしたちの計画は、ここまでの犠牲は全て無駄になるかもしれない。だから、もし持てるなら……」
と、促す。それに説得されて、
「分かった」
と、カロは大剣を手に取った。――――が、その時だった。
「重っ――――」
ゴンッ――――鈍い音が、辺りに響く。
カロは、その重さに大剣を思わず落としてしまった。
「こ、これ、2本に分かれたとしても扱えないですよ!」
「え?」
「……やっぱり。あなたの馬鹿力を、誰も持ち合わせていないということですわ」
すると、その鈍い音を聞きつけたのか“デュラハン“2体が、カロたちの隠れている通路に向かってやってきた。
「なら――――かかる火の粉は、自分が払います」
それを、先陣を切って通路から飛び出した良月が、大剣を横に持ってその面を“デュラハン”たちの腹に押し当てるとブルドーザーのように押し返す。
そして、
「今のうちに!」
と、良月はカロと飛鳥を逃した。
それから良月も“デュラハン”たちに押し付けた大剣はそのままに、カロが落とした大剣を拾い上げる。――――と、その1本だけを持って、カロたちに合流した。
カロたちは、台座のある部屋からはむしろ遠ざかるように通路を進んでいく。
そして、その影に隠れると、飛鳥は、
「罠が張られた通路を使った、最後の鬼ごっこ。いつの日かを、思い出しますわね」
そう、呟いた。
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