6-7 遺跡の中へ?
アトムがやられて“クラーケン”が倒れるとその頭の上から放り出される、エレミヤ。
それを、文壱は自身の生得魔術《色即真空》によって救うべく“デュラハン”たちに担がれながらその落下地点に迫っていた。
しかし、それでも魔術の有効範囲にエレミヤは入らなかった。
「これでもダメなのか……!!」
悔しさを噛み締める、文壱。
だが、文壱の判断とは裏腹に、“デュラハン”たちは諦めず宙にいるエレミヤを睨むと――――次の瞬間、文壱はエレミヤと同じく空にいた。
「なっ……。――――なぁああああああッ!?」
ぶん投げた。
“デュラハン”たちが、文壱を落下するエレミヤに向かってぶん投げた。
「あいつら……!! エレミヤが助かれば、こっちはどうでもいいってか……!?」
文壱は飛んでいく中で、“デュラハン”たちをキッと睨む。
しかし、次の瞬間には、
「チッ……!! けど、やるしかないか……!!」
と、覚悟を決めると、宙に浮きながら文壱は魔術でエレミヤを捕まえ、その場でなんとかぐるんと横に回って自分の背後にいる“デュラハン”たちの方に向かってエレミヤを投げた。
「ちゃんと受け取れよ!!」
そんな文壱の言葉通り、“デュラハン”たちはエレミヤを胴上げする時のように受け止める。――――と、次の問題は、そんな文壱自身だった。
「――――で、僕がどうするかなんだよぁ……」
文壱は、落ちていきながら考える。すると、その耳に、
「文壱!」
と、飛鳥の声が響いた。
そして、目の前には飛鳥の放った《茨衣封吾》の弾丸の雨が迫ってきていた。
「それを下に!」
飛鳥の言葉で、文壱は全てを察する。と、《色即真空》で弾の進路を変更し、自身の真下に叩きつけた。
ズシンッ――――着弾すると、それらは茨を文壱に向かって伸ばし始める。
そして、降ってきた文壱の体に絡みつき、上手く抱き止めた。
「た、助かったぁ……」
安堵する、文壱。
しかし、ギシッと茨が軋むと、文壱は嫌な予感がした。
「ギシッ……?」
そう口にした時、《茨衣封吾》の茨がパァッと役目を終えて消える。――――と、まだ地面に足をつけていないどころか5メートルほどのところで止まっていた文壱は、再び落下を始めた。
「嘘だろ――――」
そこそこ高い位置に加えて、怪我をしている体。
打ちどころが悪ければ死ぬし、そうでなくても無事では済まない。
その状況を想像してしまって、文壱は思わず目を瞑った。
「大丈夫ですか? ――――文壱2等」
しかし、その直後、文壱はガッチリとした安心感のある存在に抱き止められる。と、目を開いた先にあったのは――――良月の顔だった。
「良月、さん……?」
女の子のように身を縮めていた文壱は、不恰好なまま良月にお姫様抱っこされていた。
すると、その状況に気づき、途端に恥ずかしくなった文壱は、
「あ、ありがとうございます。でも、あの……。下ろしてください……」
と、顔を赤らめるのだった。
それから、飛鳥とも合流して3人はエレミヤの様子を確認しに“デュラハン”たちのもとへやってくる。
「これは……。早く治療しなくては……」
エレミヤの腹を見てそう呟く、良月。
しかし、その時――――飛鳥たちの足をある異音が止めた。
ズルッ……。グチャッ……。ヌチャッ……。
それは、クラーケンの向こうから聞こえていた。
ズシュッ……。ベタベタッ……。
まるで水溜まりの中で肉をミンチにしているかのような、そんな音。
振り返れば、そこには――――アトムの顔がなかった。
いや、正確に言ってしまえば、エレミヤを囲うのとは別の数体の“デュラハン”たちに殴られ潰され切り裂かれ、どこが顔ともわからぬ血溜まりの中に肉塊があるだけだった。
「何、して……」
飛鳥が、表情を引き攣らせる。と、その横で文壱が、
「殺した、のか……? それが、エレミヤの命令だから……」
と、呟いた。
直後――――“デュラハン”たちは答え合わせをするように、飛鳥たちの方を向いた。
――――協力して、アトムを殺す。そのあとで、こいつらも殺す。
それは、文壱たちと手を組む時にエレミヤの放った言葉だった。
そして、アトムが殺されたとなれば、次は――――。
「――――危ない!!」
その時、良月が飛鳥と文壱をタックルで横に吹き飛ばす。と、その間を背後から爪が駆け抜けていった。
「大丈夫ですか!? すみません! 体が、先に動いちゃって!!」
そうやって謝りつつも2人をピンチから救った良月は、しかし、今までの疲れに今の戦闘の疲労も加わったことで体に限界が来てガクッと膝を曲げてその場に倒れてしまう。
すると、エレミヤの周りにいた“デュラハン”たちは、それぞれがそれぞれに狙いを定め、爪を突き立てた。
そして、飛沫が上がる。
しかし、その飛沫の色は赤ではなく透明だった。
「――――骨喰特等!?」
良月が叫んで、全員が遺跡と海とを区切る水のカーテンに意識を奪われる。
すると、そこから飛び出してきたのは――――シズクとアザミを引き連れたカロだった。
「――――うおおおおっ……!? とりあえず、こいつら追い払えばいいのか!?」
そう口にしたカロの周りで、7つの禁書が渦巻く。と、禁書は白い魔力をカロに分け与え、カロが手を掲げて、
「――――《魔蜘蛛の糸》ッ!!」
と、魔術のムチを呼び出し振った。
次の瞬間――――その白く光輝くムチは、カロたちと飛鳥たち以外を全てその場から弾き飛ばした。
「弾き飛ばした!? って、この人の魔術は“デュラハン“に通用するって本当だったのか……!」
その光景に文壱が目を丸くしていると、合流したカロに飛鳥が、
「入り口は、あの巨大なイカの向こうですわ!」
と、声をかけた。
「うわ! なんだあのイカ!? イカか!?」
「むにゅむにゅ……」
それに、アザミとシズクが驚く。
すると、カロが、
「とりあえず、シズクとアザミで怪我人を! 俺が先導する!」
そう、指示を飛ばした。
その言葉通り、カロたちはアトムを殺していた“デュラハン”たちも払って、遺跡の入り口に到達する。
しかし、その時だった。
「――――!?」
1番に飛び込んだカロが違和感を覚えて、
「止まれ!!」
と、シズクたちを静止した。
「な、何がありまして……!?」
飛鳥が問いかけると、カロは、
「魔力が、使えない……!」
と、答える。そして、続けて、
「シズク、お前は来るな。魔力を必要とするその体だと、来たら死んじまう……!」
と、警告した。
「確かに、禁書も消えてしまいました……」
良月がカロの身の周りを見てそう口にすると、アザミは、
「分かった! ――――なら、あたしがシズクと残る。どうせ、あとは禁書を使うだけだ。なら、追っ手をここでこいつと足止めするよ」
と、宣言した。
しかし、そこで文壱が、
「しかし、骨喰特等がここにいるということは赤木天日は倒せたはず。なら、もう遺跡に行く意味なんて――――」
と、疑問を投じる。
確かに、それは最もだった。
遺跡に入るよりも足止めするよりも、ここからカロの力で逃げ出す方がずっと容易だろう。
だが、カロは違った。
「――――俺に考えがある! それを叶えれば、これまでの惨劇も悲しいことも全部全部終わらせられるかもしれないんだ。少なくとも、もうこんなことは起きなくて済むんだ!!」
その言葉に、文壱は目を丸くする一方で、カロは、
「頼む」
と、アザミに迫った。
「……何を願う?」
アザミの問いに、カロは答えを口にする。
「俺は――――」
その答えを聞いて、一同は目を丸くした。
「俺は――――禁書を破壊する」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
励みになりますので、良いと思ってくださった方は【☆】や【ブックマーク】をポチッとしていただけると嬉しいです!




