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【10000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【第3章まで 完結済み/最終章 更新中】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第5話 仇なす者たち

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5-1 闇に浮かぶ恨みの目

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 再び戻って、カロと天日の戦いの裏。


 行き止まりだった、イニシュモア島の遺跡。

 その中で、リトリーとレンと対峙したアザミたちは苦戦を強いられていた。



「《銀牙万咬(ぎんがばんこう)》――――」


「――――馬鹿、こんなところでそんな力……!」


 リトリーの持つ刀の光が()()明滅すると――――アザミはそう口にしながらシズクを飛びつくように抱え、同時に足元を爆破して飛び上がった。



 直後――――シズクのいた足元を、荒々しい空気が切り裂く。



 それは、リトリーの刀の通った軌道と一致していた。


「飛ぶ斬撃、ですわね……!」


 その様子を見て飛鳥がそう言うと、今度はそこをレンが、


「――――《砕雷(さいらい)》ッ!!」


 と、トンファーについているオレンジの魔石を稲光らせて襲いかかった。



 それを、飛鳥は《茨衣封吾(シイフウア)》による魔術の鎧を纏っていることもあって正面から受け止めようとする。


 しかし、


「――――飛鳥! 受けるな! 避けろ!!」


 と、アザミが言うと、飛鳥は咄嗟にそれを横に転げるように避けた。



 次の瞬間、トンファーが砕いた壁を見て飛鳥が、


「なんて凶暴な……」


 と、溢す。


 その威力は、全く《茨衣封吾(シイフウア)》で受けきれるものではなかった。



「――――全員外に出るぞ! Ⅰ回、遺跡は捨て置く!」


 混乱した戦況の中、アザミが指示を飛ばす。と、アザミ含む4人は一斉に遺跡の階段を駆け上がり、遺跡の出口を目指した。



「どうする?」


 一方で、狩る側のレンはそれの姿を見てリトリーにそう尋ねた。



「玉砂シズクは手足を捥いて捕獲し、それ以外は逃げないなら殺します」


「そいつがチャージ中なのに平気なのか?」


 リトリーのその答えに、レンが揶揄うように返す。と、それを、リトリーは、


「いざという時は、あなたを盾にするので平気です」


 と、一蹴し、その後を追った。



   ▼ ▼ ▼ ▼



 遺跡から出ると、夜はまだ明けていなかった。


 むしろ、戦場の激しさとは裏腹に、星は綺麗に静かに夜を彩っていた。



 そんな空の下、リトリーとレンが遺跡の外に出る。



 すると、その1歩目を――――飛鳥の《茨衣封吾(シイフウア)》の射撃によってすでに植え付けられていた茨が襲った。


「茨……!?」


 そう動揺するレンに、


「来ますよ」


 と、リトリーが言う。



 すると、その言葉通り――――そこへ、アザミとシズクがハンマーと拳を構えながら突っ込んできた。



「お前はお前でなんとかしろよ。――――《砕雷(さいらい)》ッ!!」


 そうリトリーに告げたレンは、トンファーをシズクの拳とかち合わせる。



 一方で、リトリーも胸ポケットから1枚のコインを取り出すと、それを親指に乗せ、


「《(エー)・スカーレット》――――《ランドリー》」


 と、アザミを睨んだ。



 そして、一呼吸置く。――――と、ハンマーが振り下ろされるその瞬間。



 ハンマーが、止まる。



 大きなハンマーの槌。

 その平べったい面には小さなコインが1つ。

 まるで川の流れに逆らう魚のように、ハンマーを押し返そうとしていた。



 直後、振り上げているハンマーのせいで空いているアザミの胴を、リトリーが手に持っている刀で切りにかかる。



 しかし、その刃が届く寸前――――アザミは()()()()()()()()によって、後ろに引っ張られた。



 空振ったリトリーは、


「爆破の魔術を利用して……? いや、しかし……」


 と、じっとアザミを見つめて、不可解な力の正体を探る。


 と、自身でも何が起きたのか分からず困惑しているアザミに、


「間一髪でしたね、隊長」



 そう声をかけたのは――――その身に包帯を巻き、上着だけを軽く羽織った文壱(ふみいち)だった。



 すると、シズクもレンと拳をかち合わせた反動で後ろに翻り、そこへ合流する。そして、アザミが、


「文壱、どうしてここに……!」


 と、当然に尋ねた。


「今は説明している暇はありません。僕は、病院で得た仮説を確かめに来たんです」


「仮説?」


「アザミ隊長、遺跡の中には?」


「入った」


「なら、もしかしてそこに祭壇へ続く道はなかったんじゃないですか?」


「――――!」


 唐突に披露された文壱の仮説とやらは、核心をついていた。



 しかし、そのあたりで、


「――――《マイニング》、《ランドリー》」


 と、2つに分かれたリトリーのコインが、シズクに向かって放たれた。



 それを、シズクが反射的に飛び上がって避ける。――――が、さらにそこへ、飛鳥の茨を払ったリトリーたちが邪魔しにやってきた。


「いいとこだってのに……!!」


 アザミがそう言ってリトリーの刀をハンマーで受け止めると、リトリーも、


「こちらも、いいところを邪魔されたんですよ」


 と、アザミの守る手よりも早く刀を使ってハンマーを弾き、さらに潜り込んでくる。



 そして、アザミにリトリーの刃が届こうかと言う時――――そこに、シズクが割り込んだ。



 シズクは、地面に拳を叩きつけてリトリーを後ろに退かせることに成功する。


 しかし、今度はその瞬間を好機と見たレンが、シズクにトンファーで殴りかかってきた。


「《砕雷(さいらい)》――――」


 その攻撃に対し、完全に不意を突かれたシズクは反応できずにいた。



 だが、そこをカバーしたのが――――良月であった。



 良月は、とにかくその場からシズクを遠ざけるべくシズクの背を引っ張って投げ飛ばす。――――と、シズクの代わりに身に纏った鎧の魔石具《心套(しんとう)》と手に持った大剣の魔石具《弌平死ノ太刀(いちびょうしのたち)》でレンのトンファーを受け止めた。



 さらに、すかさず文壱が自身の生得魔術《色即真空(しきそくしんくう)》の“手を伸ばした先の人や物を引きつける”力を使って、まるで見えない鎖で後ろから引っ張っているようにレンの動きを止めてみせた。


「――――良月さん!」


 その声に応えるように、良月はトンファーを払うと大剣の面の部分をレンにぶつけようと振るった。



「させませんよ。――――《ランドリー》」



 しかし、そこでリトリーが無防備になった文壱を狙って、魔術で2枚に増えたコインを飛ばす。



 すると、それは、なおもレンを抑え続けようとする文壱の、


(コイン2枚だけなら……!)


 という甘い算段を打ち砕くように体に食い込んで、文壱をその場から押し出した。



 そのおかげで、レンが抑えから解放される。――――と、レンは、


「よっしゃあッ!!」


 と、良月の振った大剣を()()()()()()、カウンターで良月の顔を殴った。



 一気にピンチになる、良月。



 しかし、飛鳥が追撃を許さない。


 飛鳥はリトリーたちに向かって《茨衣封吾(シイフウア)》の弾を浴びせる。


 と、リトリーたちに、


「またあの厄介な茨ですか……!」


 と、距離を取らせることに成功した。



 そして、それによって生まれた時間こそが、アザミをはじめとした“禁特(きんとく)”に与えられた今後を決めるための猶予だった。



 アザミはその事を悟り、


「文壱、端的に言ってくれ! あんたの推理を!」


 と、言った。


「遺跡の――――禁書の『場所』に通じる扉は――――この島の()()にあるんです!」


「どうやって行くんだ!? そこへ!」


「僕の魔力なら、海水を押し退けてそこへ近づけます!」


「分かった! ――――なら、飛鳥と良月を連れていけ!」


 そう指示を出すと、次にアザミは文壱に“宝珠”を押し付けるように渡す。



 しかし、一方でその指示を聞いた良月が、


「自分ですか!? アザミ隊長たちが言ったほうがいいんじゃ……」


 と、反応する。と、アザミは、


「あいつらの目的は、シズクだ。だから、まずシズクはここに残す。じゃないと、あいつらがついてくるからな」


 そう説明した。


 アザミの視線の先には、あいつらことリトリーたちがいた。


「そんで言っちゃ悪いが、飛鳥と良月。あんたらじゃ、あいつらは無理だ。――――あたしが残る。シズクと1番連携を取れるのも、あたしだしな」


「そんな、自分はまだやれます! 自分みたいな殴られても構わないやつの方が、粘るのには……」


 そこまで説明されても、なおもアザミの言葉に食いつく良月。


 すると、アザミはハンマーの柄で良月の膝をトンと殴った。



 次の瞬間、「あらららら〜……?」と、良月はよろよろとその場に膝をつく。



 と、その姿を見たアザミから、


「いや、限界じゃねーか」


 と、冷たいツッコミが入った。


「それに、個人的な因縁もあるんだよ。あいつらには」


 アザミはそれから真剣な顔つきに戻ると、再びリトリーたちと向き合う。



 すると、そんな背中に向かって、


「……どんな事情であろう因縁であろうと、死ぬのは許しませんわよ」


 と、飛鳥が口にした。


「あなたには、越えるべき目標でいていただかねば、あたくしが困りますわ」


 そう言いながら良月に肩を貸して立たせる、飛鳥。


 すると、アザミは笑って、


「あたしはお母様とは違う。あたしもシズクも、大きな事を成すための小さな犠牲になるつもりはねえよ」


 と、答えた。



 そうして立ち去る飛鳥を待ち、やっとこさアザミ、シズク、リトリー、レンの4人だけになる。



 すると、待ち侘びたとばかりにリトリーが、


「最後の別れは終わりましたか?」


 と、尋ねた。


「あんただって、待ってる間にちゃっかりコイン3枚に増やしてるじゃねーか。――――それに、その刀の使用待機時間も回復したかったんだろ?」


 そんなアザミの返答に、リトリーは表情を変えない。


 その横では、自身の魔術《(ヴィ)(ヨン)》で傷を治しきったレンが今か今かと戦いの合図を待っており、そんな姿を見るとアザミから思わずため息が溢れた。



「あんたたちのせいで、お姉ちゃんは死んだ。その顔を見ると、嫌でも思い出す」


「リトたちもですよ。どれだけ、あなたたちを殺したかったか」


「あたしは、カロみたいに優しくない。――――ちゃんと殺すよ、あんたらのこと」


「望むところです」



 アザミの呟きに、リトリーがそう返す。と、アザミは取り回しのいいサイズのハンマーを呼び出し、シズクもふんすと鼻を鳴らして拳を打ち合せて構えた。



「生きて帰るぞ、シズク」


「うん」



 アザミとシズクの2人はそう言葉を交わす。



 そして、雲に隠れた月が再び姿を現した時――――戦いの火蓋は、切られたのだった。





 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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