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【10000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【完結】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第3話 天日覚醒

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3-5 封じ手

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



 手を組んだ、カロと安久良。


 カロたちは《魔術:浮遊》で飛びながら、互いに位置を入れ替え、天日に迫る。



 しかし、その攻撃を天日はただじっと待った。



 どれだけ動き回ろうと魔力を使おうと動じず、それを正面から受け止める。


 それが、天日にっとっての矜持であり、全ての魔術士の頂点に立つ者であるという自信――――否、自覚だった。


「金、知識、技術、医療、集団……。人間というものは前に進む。だが、それは誤解を生む。それは、自らが強いという錯覚。それが、当たり前という錯覚。そして、それに隠されるのは――――」


 そして、カロが《魔蜘蛛の糸(フィル・アラクネ)堕天(レべリオン)》を構えて襲いかかる。


 それは、カロでもコントロール不能になるほど暴れながら、天日の首を右から狙った。



 しかし、天日はそれをしゃがんで躱す。――――と、カロがその場でくるっと周りはなった2撃目を、左手で捕まえた。



「――――本当は自分1人なんぞ、ちっぽけで何も出来ない無力な存在であるという事実だ!!」



 そのまま天日はムチを引っ張り、カロを引きづり込もうとする。


 そして、それに当然カロも何かを――――例えば先ほど見せた《死線咆哮(アムスタ・アバク)》やもっとそれ以上の魔術をぶつけてくると思っていた。



 しかし、その瞬間を、


「加那太! 挑むな!」


 という、安久良の声がぶった斬る。



 すると、その声にカロはムチを解除した。


 カロには、事前に安久良から「自分に考えがあること」「隙を作ってくれれば無理に挑まないでいいこと」を伝えられていた。


 そのため、カロはムチを解除すると同時に、


「――――《(ソー・)蜘蛛古城(アリラスティーク)》ッ!!」


 と、以前とは比べ物にならない量の魔術の糸で編まれた網を、天日に向かって放った。



「ああ、くそ! 安久良のやろう、余計なことを……!!」



 天日はそう言いながら、自身を取り囲う魔術の網を引きちぎる。と、そこへ、



「《方向性矢印(ロット・ゼウ)》」



 という言葉と共に飛んできたのは、かつて禁書《無情(チャリオット)》を求めて特魔に突入したときに安久良が召喚して見せた黒い棺だった。


「ぐっ……!」


 網に遮られていた視界のせいで反応が遅れ、銃弾のように螺旋回転して飛んできた棺が天日の腹に刺さる。――――と、それに押されて少し飛んでいく天日の目には、「Ⅲ」と刻まれた手をこちらに向ける安久良の姿だった。



「たった禁書Ⅰ冊で、俺に勝てる気になったか……!? なら、分からせてやるよ……! 俺とお前の、圧倒的な差をなぁ!!」 



 天日は棺をダンッと強く両手で叩き、歪んだそれを怒りのままに「うらぁッ!!」と安久良に向かって投げ返す。――――しかし、それを安久良は手を伸ばして《方向性矢印》の力でピタッと止めてみせた。


「――――《五亡星(ステラ=ハザード)》ッ!!」


 そこへ、天日が空間を殴ってヒビを飛ばす。と、安久良も棺を再び天日に向かって飛ばすが、ヒビと棺がかち合うと棺はあっさりと砕かれてしまった。


 そのまま、棺を貫いてなおも勢いを失わず安久良に迫る赤黒いヒビ。


「……!」


 それを対処するのは無理と考えたのか、安久良は前に出ながら飛び上がって避ける。


 と、かつてアザミの姉の陽華(ようか)がそうしていたように、《魔術:障壁》と《魔術:浮遊》を組み合わせて生み出した空気の弾丸を天日に向かって飛ばした。


「小賢しいッ!!」


 それを、天日は蹴って払う。――――と、空間にヒビを入れて手を突っ込み、無の空間を弓を引くように捻りながら引っ張り出して《(ディザスター=)兆星(ボルテクス)》の構えに入った。


 しかし、


「さっき棺に対してそれを使わず殴ったのは、その魔術に時間がかかるからか?」


 と、その時、安久良が笑った。



「――――嬉しいよ、禁書と紛い物の力とはいえ、最強のお前のお眼鏡に叶うとは」


「笑って――――」


 天日がその真意を知るのには、2秒必要だった。



 違和感に気づくのに、1秒。そして――――カロのことを思い出すのに1秒。



 その2秒が、禁書の前では命取りになる。


「しまっ――――」


 天日の背後に、確かにカロはいた。密かに息を潜め、《死線咆哮(アムスタ・アバク)》を構え、そして今――――その手から放たれる。




 ギュラォオオオオオオオオオオオオンッ――――叫びにも金属の軋む甲高い音にも似た歪みが辺りに響いた。




 結果、カロの手の先――――天日の体をその攻撃は貫いた。




 が、しかし――――天日の前には赤黒いヒビがあり、それで軌道を逸らしたのか天日の体は左腕以外はなんとか無事だった。



(その傷跡が壊死してやがる……! 悪霊に噛まれた時と同じ……!! だが――――)



 天日は、心の中でしてやられたとグッと悔しさを噛み殺す。しかし、何度もそうしてきたように、天日にも返しの手はあった。



(時間を戻せば、何も関係ない……!)


 そう思い、天日は禁書《無情》を自身の前へ。



 そして、その力を使おうとした。――――その時だった。



「注意散漫。――――だから、加那太のことも見失うんだ」



 天日の背後から飛び込んできたのは――――安久良だった。



 しかし、安久良は天日に決して()()()()()()()()()()()()



 その代わり、天日の操る禁書《無情》の前に手をかざす。――――と、それに向かって自身の持つ白の魔力を放ってみせた。



「……ッ! びびらせやがって! 飛び込んできた割に、魔術は不発か!?」 


 そう言って、天日は安久良を蹴り飛ばす。


 すると、そこで天日はようやくその異常に気がついた。


「どうやら、不発なのはお前の方みたいだな」


 カロが、その異常を言い当てる。


 なぜ言い当てることができたのか。



 それは――――天日の体の時間が戻っておらず、左腕は欠けたままだったからだった。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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