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【10000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【第3章まで 完結済み/最終章 更新中】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第3話 天日覚醒

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3-3 危険領域

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 イニシュモア島。


 先ほどまでの天日は、禁書の魔力を禁書の魔術を使う時にだけしか使用していなかった。



 しかし――――今は違う。



 カロ同様、溢れ出る禁書の魔力を自身の魔力と織り交ぜ、魔術に転用するようになっていた。


 その結果――――。



「《壊灰廻快(シ・カイ)堕天(レベリオン)》」



 天日の拳が、カロの防御をもろともせずに撃ち込まれる。――――と、カロはその威力に押されて、随分と多くに着地した。



 しかし、カロのその腕へのダメージとは裏腹に、天日は不満足そうだった。


 そして、手を見つめると、



「朱に染まれば、赤くなる。俺の《壊灰廻快(シ・カイ)》は、禁書によってさらに強くなる。――――だが、それだけじゃあ満足できない。それじゃあ、俺が禁書の力を借りてるだけだ。――――だから、俺は全ての俺から逸脱する。禁書と混ざり合い、まだ見ぬ俺へ生まれ変わる」



 そう、口にした。



 次の瞬間――――天日は血管を浮かび上がらせながら、皮膚をめくれ上がらせながら、目に血を迸らせながら、全身に力を溜め込むようにしてオレンジと赤の混ざりあったような自身の魔力と黒の魔力を激らせた。



 そして、天日の手は1度前に掲げられぐぐっと開かれると、何かを掴んだように強く握られる。――――と、その直後、




「――――《五亡星(ステラ=ハザード)》ッ!!」



 そう振るわれた赤黒い魔力を纏った拳は、雷のように宙をヒビを入れた。



 そのヒビは、先ほどまでの打撃とは違った。

 それはまるで生き物のように意志を持って(ほとばし)り、宙を駆け抜けていくと、四方八方からカロに襲いかかった。


「……っ、んぐぁッ!!」


 カロは、赤黒いそのヒビを手で受け止めようとする。――――が、ヒビに触れた瞬間、その手は肩を外される勢いで押し戻され、それから天日が何もしなくとも追撃してくるヒビに何度も殴られた。



 天日は、その力を確認すると笑顔になる。そして、子供がおもちゃを何度も試すように、



「せあッ! せあッ! ――――せあッ!!」


 と、その場で宙を何度も殴った。


 すると、その打撃もさっきの一撃と同じように空間にヒビを入れながら、カロに襲いかかった。


「これだよ、これ……。これがあれば、俺は誰にも負けない……!!」


 高揚した表情になる、天日。


 その言葉通り、その魔力も相まってもはやこの世に彼に敵う者はいないように思えた。



 しかし――――そこでカロは逃げない。



「力を貸せ。――――禁書《妄信(アイポニー)》《嫉妬(サラ)》」



 カロは転がり切ると、地面を四肢で引っ掻くようにして立ち上がり、そう口にする。


 と、禁書から飛び出た悪魔――――黒基調のフリフリのドレスから溢れた尻尾と褐色肌にお団子に纏められた薄ピンクの髪、アイポニー――――肌は白く陶器のようで紫の瞳には魅了されるだけでは済まない色気と危うさが宿っている緑髪の大人っぽい女、サラ――――の2体は、


「壊れても後悔しないでね。カロ♪」


「飽くなき覚悟、さすがですわ。ご主人様♡」


 と、悪魔らしく笑い、煌々とした目でカロを見下した。



 次の瞬間――――サラが大量の魔力を辺りの草木から奪い、地面からは大量の悪霊が溢れ出してくる。



 と、その悪霊たちは展に地に向かうのではなく――――カロの体の中に、飲み込まれていった。



「うぐっ……!! あぁ……!!」


 苦悶するカロに構わず、次々と取り込まれていく悪霊たち。

 それは、いつの日か叔父であるヒュウガが見せた禁書の覚醒そのものだった。



 しかし、カロは()()()()()()()()それに耐え切る。と、その硬った体で、



「――――《死線咆哮(アムスタ・アバク)》」



 そう、《(アバク)》と《断末魔(アムスタナムド)》――――禁書《妄信》と禁書《支配》の混ざった死霊と魔力の粒子渦巻く砲撃を、天日に向かって放った。


 《死線咆哮》は、通過する道にある全ての生命を死滅させながら天日に迫っていく。


 すると、天日は目の前の空間にヒビを入れ、さらにヒビの中に手を突っ込むとその中にある“無”の空間を、弓を引くように捻りながら引っ張り――――そして、手を離した。



「《死兆(ディザスター=)(ボルテクス)》」



 次の瞬間、放たれたそれは空間を稲妻のように血走り、赤黒い矢のようになってカロの砲撃と対峙する。――――と、2つの攻撃が触れ合う直前、空間はまるでそこに小さなブラックホールを作り出したかのようにぐにゃりと曲がり、そしてぶつかった。




 その衝撃波は、あたりの土を簡単に剥ぐとずいぶん遠くにいた安久良とその周りの木々も薙ぎ倒した。



 安久良は転がりながらもなんとか起き上がり、禁書《臆病(サンズ)》の持つ“物理法則に干渉できる力”――――《方向性矢印(ロット・ゼウ)》でなんとかその場に留まり、顔を上げる。



 すると、次の瞬間、安久良の瞳に映ったのは――――天日に飛び掛かるカロだった。



「《魔蜘蛛の糸(フィル・アラクネ)堕天(レベリオン)》」



 カロは、まるで気性の荒い生き物のように暴れる黒く染まったムチをその右手に呼び出す。


 と、天日は天日で空間を掴み、


「うらぁッ!!」


 と、カロに向かって空間に入った()()()()()()を投げつけた。――――しかし、カロの左右にアイポニーとサラが現れると、2体は、



「カロ、そのままやっちゃえ♪ ――――アイと混ざった今の《魔蜘蛛の糸》なら空間を切り裂くことだってできるんだよ!」


「カロ、あなたが望む限り魔力を増やしてあげる♡ ――――さあ、求めて! 今のあなたには、それに応えてあげられるあたしたちがいるんだから!」


 と、その背中を押すように言った。



 すると、カロはムチを振り回して天日の放ったヒビどもを砕き、その眼前に迫る。



 そして、それを天日に向かって振った時だった。



「――――《五亡星(ステラ=ハザード)》」


 天日は何もない空間をグッと掴む。――――と、それを、その場で獅子舞が踊るようにぐんと引っ張った。



 次の瞬間、ムチを振り切ったカロは気づけば天日と場所を入れ替わっていた。



 つまり、()()()天日に飛び掛かっているのではなく――――()()()、カロに飛び掛かっている状態になったということだった。



「しまっ――――」


「感謝するぜ、カロ。俺を次のステージへ上げてくれて。――――だが、前座はそろそろ退場願おうか! ――――《五亡星(ステラ=ハザード)》ッ!!」



 力強く拳を握ると、赤黒い魔力が溢れ出す。――――それを、天日はカロに向かって振り下ろした。



 近距離、無防備、全身全霊。――――喰らってしまえば、カロだって即死だろう。


 辺りの音が一瞬消えて、それから小さな影だけがその場から飛び出す。――――と、遅れてそれの通った後を、暴風が周囲を削りながら追いかけていった。


 小さな影の正体は、カロだった。


 カロはまるで水切りの石のように何度も地面をバウンドして飛んでいく。



 そして、その行方を眺める天日の表情は、自分の得た力と結果に満足して笑って――――は、いなかった。



「どういうことだ。……砕かれずに、飛んでいきやがった」


 天日はそう呟くと、ひどく冷たい表情で自分の手を見つめ、それからカロの飛んでいった先を見る。


 そして、


「お前がやったのか」


 と、闇を睨んだ。


 すると、天日の見つめるもっとずっと遠く。



 闇の中で、カロは抱き止められていた。



「どうして、今さら……」


 カロはボロボロではあるものの致命傷は避けていて、むしろ痛みよりも自分を抱き止めたその姿に驚いて声を漏らした。


 それも無理もない。



 今、カロの目の前にいるのは――――カロの父親であり、敵であったはずの安久良だった。




 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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