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【10000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【第3章まで 完結済み/最終章 更新中】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第2話 影の大戦

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2-3 戦場を駆け抜ける者たち

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 1つの島になったイギリスとアイルランドを――――ストーンヘンジからニューグレンジへ。


 月の光を辿って、アザミたちが車で駆け抜けてくる。と、その瞳に映ったのは――――特魔とそれ以外の大勢力による、魔術士同士の戦争。



 そして――――かつての狭かった塚であったニューグレンジとは違い、元の大きさをゆうに超える姿で空に浮かび上がる遺跡の姿だった。



 アザミは、言葉に詰まる。


「あれが、ニューグレンジ……?」


 その巨大なハチの巣のような姿に加え、それを構成する小石たちが共鳴して青白い光を放つ姿は、まさに“妖精の塚”と呼ぶに相応しかった。


「――――で、どうするんですの?」


 飛鳥が聞いた。すると、それに良月が、


「ストーンヘンジから放たれた月の光は、あの遺跡に続いています。(そら)の“宝珠“はその光を通って、進んでいきました。自分の頭も貫いたので、おそらく物や人は干渉できないのだと思います」


 と、付け加える。


 それにシズクが、


「なら、空の“宝珠”は、あそこに?」


 と尋ねると、良月は迷わず頷いた。


「……行くしかねえか」


 アザミはため息を吐くと、覚悟を決めたようにそう呟いた。


 そして、隊長らしい顔つきになって、


「これから、あたしたち“禁特”は独断でニューグレンジに突入する。ただし、この戦場を駆け抜ける必要がある。それに、入り口にはどんな仕掛けがあるか分からない。――――だから、あたしが先頭で障害物や敵を爆発して退かす。サイドをシズクと良月が追走。襲ってくる振り払う。で、最後尾から飛鳥が《茨衣封吾(シイフウア)》の茨でフォローで行こう」


 と、指示を出した。


 了承する一同に、アザミは、


「いいか、くれぐれも戦闘をするな。受け流すか、逃げろ。目的は、ニューグレンジへの侵入だ」


 と、続け、その最後に、


「それと、何があるか分からないから扉に触れるのはあたしが最初だ」


 と、強調した。



   ▼ ▼ ▼ ▼



「魔石も戦闘員も……。これだけの数、今までどこに潜んで……!!」


 赤木芭月は、ニューグレンジの前のすっかり焼け野原になった戦場でそう漏らす。――――と、その横でまた1人、仲間が倒された。


(防衛に成功したドイツ、そして赤木天日と骨喰ヒュウガの襲撃による日本の禁書強奪以外は、岩手福寿主導によって全てこの残党――――ロンドンマフィアたちによって突破されている。つまり、それだけの力があるということ! 果たして、ロンドン支部の魔術士だけで対応できるか……!!)


 芭月はそう不安を噛み殺しながらも動きは止めず、仲間を襲った敵を睨むと、


「オニ、オニ、オニ……」


 と口にし、《米爪糸内(マイソウシナイ)》でその場から消え、


「カチ、カチ、カチ……」


 と、今度は敵の背後に現れて、その首を手に持った魔術で生み出した包丁で掻っ切った。


「数が多すぎる。やはり、1度魔術士を集め、大規模魔術で一掃を――――」


 改めて戦場を見回す、芭月。すると、そこへ、


「その紫の髪……。お前、残党狩りで名を上げた赤木芭月だな?」


 と、2人。――――刀のような形状をした魔石具で、襲いかかってきた。


「――――ッ!」


 芭月は、咄嗟に《米爪糸内(マイソウシナイ)》で巨大なクマのぬいぐるみを呼び寄せる。と、そのクマの腹に刺さっていた包丁を引き抜き、片方の刀を自身の持つ包丁で受け流し、もう片方をそのぬいぐるみで受け止めた。


「殺せなかったね、北斗(ほくと)

「次は殺せばいいさ、七星(ななせ)


 芭月と向かい合ったのは、首元をぐるりと隠す丈の短いローブの下にスーツを着た七星と呼ばれた青年と、コートにスーツという戦場には似合わない格好をした北斗と呼ばれた青年だった。 


 青年たちは双子のようで、同じ水色の髪に同じ背丈、そして目には同じモノクル(片眼鏡)をしていた。


 芭月を冷たい目でじっと観察する、2人。しかし、


「悪いけど、子供と遊んでる暇はないの。――――オニ、オニ、オニ」



 その2人に対して芭月がとった行動は――――逃走だった。



 芭月はここで時間を使ってたった2人倒しても、戦況を変えられないことは知っていた。

 ならば、今すぐにでも司令部と合流し、その戦うはずの時間で作戦を考え、戦況を変える一手を打ちたかった。



 しかし――――その背を、北斗と七星の2人が襲う。


 芭月の能力は、その場から姿が消えるだけであって攻撃を喰らわないわけではなかった。だから、広範囲攻撃には弱かった。――――が、


「ピンポイントで私を……!? どうやって!?」


 そう芭月が漏らした通り、致命傷とは言えないものの2人はその背中を手に持った刀で襲ったのだった。


「そうか! そのモノクルで……!!」


 芭月の気づきに、北斗と七星は、


「魔力見え見えだよ。ねえ、北斗」


「それにしたって雑魚雑魚だ。なあ、七星」


 と、口にする。


 2人が見下す先には、背中から血を流した芭月が自分たちを睨みながら倒れていた。


「……っ、《鉄槌(クラック・ダウン)》ッ!!」


 すると、そこへやってきたのは、味方の魔術士だった。


 その魔術士は、地面に手を当て一瞬にして北斗と七星と芭月との間に巨大な土壁を作り出すと、


「大丈夫か!?」


 と、芭月に駆け寄った。


「今、救護所へ……」


 それから、駆けつけた味方は背中の傷の処置よりも先に芭月をそこから運び出そうとする。しかし、その手を止めたのは、他でもない芭月自身だった。


「私のことはいい……」


「何言って……」


「それより、あなた土を操れるのね」


「あ、ああ」


「今から作戦を伝えるわ。――――これより、戦線を縮小し、敵をある程度の箇所にまとめる。そこで、敵を一気に合体魔法で焼き払うの。でも、これはフェイク。きっと防がれるでしょうね。だから、それすらも囮にする。――――その合体魔法に敵が気を奪われている隙に、あなたが空から静かに石の雨を降らすの。形状は小型のミサイルをイメージして。10センチに満たないくらいでいいわ。尻尾に矢尻のような羽がついていれば、安定して落ちていくはずよ。そうすれば、魔力の宿ったそれは音もなく大量の敵を殺せる。味方の多少の犠牲は気にしないで」


「おい、痛みで気でも……」


 すると、芭月は自身についたドッグタグをちぎって、その味方の手に押し付けた。


「本部に、赤木芭月からの命懸けの提案と伝えて。このドッグタグがそれを証明してくれる」


「あなたが、赤木芭月……!」


「大きな目的のためには、小さな犠牲など気にしてはいけない。――――だから、彼らを足止めするのは私でいい。戦況を変えるには、あなたの力が必要なの」


 ぎゅっと握られたその手は、赤木芭月という人間にあったことのない者にさえ、その強さを伝える。――――と、間も無くして、芭月と味方の頭上には影が2つ現れた。


「あいつら、駆け上がって!」


 味方が見上げる先――――いたのは、刀を構えながら岩の壁から飛び降りてくる北斗と七星だった。


 すると、困惑する味方を突き飛ばして、芭月は北斗と七星を睨む。――――次の瞬間、岩の壁を砕いて現れたのは、芭月の召喚した巨大なクマのぬいぐるみだった。


「クマ!?」


 驚く北斗と七星を、クマのぬいぐるみを岩の壁を砕いた勢いそのままに殴り飛ばす。――――と、芭月は味方に、


「――――行って! 全ては勝利のためです!」


 と、喝を入れた。


 そうして、味方はギリッと感情を噛み殺してようやく司令部に向かって走り出す。と、その背後では芭月とクマのぬいぐるみを前に、


「まさか自立型とはね、北斗」


「ぬいぐるみならバラバラに咲いちまえばいいさ、七星」


「それに、いま逃げた人。何か託された感じがするよ、北斗」


「なら、こいつを殺して、さっさと追いかけるぞ、七星」


 と、立ち上がる2人の姿があった。


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