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【10000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【完結】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第2話 影の大戦

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2-2 すべてが変わってしまった地

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 ストーンヘンジ。


 黒い魔力の繭の中から解放されると、アザミたちは月光に貫かれて輝くヒールストーンに向かって走り出していた。


「『不変的にそこになく、しかし、不変的にそこにあり。いかなる時も、姿を現すものではなく。目には見えぬ、(そら)の“宝珠“。それを、満ちた器に掲げよ。さすれば、道導(みちしるべ)は満たされ、扉が全てを招くだろう』。――――やっぱり、ここが本命なのか!?」


 青白く光を放つヒールストーンの足元に立ち、それを見上げると、アザミたちは魔術を使ってその元まで浮かび上がる。――――そして、その石に触れた時だった。


 石が――――ガラスの割れるような甲高い音を上げて、砕けた。


「砕けっ――――」


 飛鳥が、目を丸くする。――――と、飛鳥が次に(まばた)きをするまでの人には感知できないほどの刹那の静寂の中で、青白い月の光はブワッとあたりに広がり、それから砕けた石の中心に向かって収縮した。


 それは、まるで心臓が脈を打つようだった。



 そして、飛鳥が瞬きを終える。



 次の瞬間――――アザミたちは激しい風によって壁に叩きつけられた。


「な、何が……!」


 良月は、気づけば倒れていた体を起こす。

 そのスーツの下から見えた《心套(しんとう)》――――魔石のつけられ鎧が、良月を守ってくれたのだろう。


 しかし、良月以外のシズク、アザミ、飛鳥はそうではなかったようで、あたりに倒れたままだった。


 さらに、ストーンヘンジに立ち並んでいた石の柱や板たちもあたりに倒れていた。これも、ヒールストーンに触れた時の衝撃のせいなのだろうか。


 残って立っていたのは、ヒールストーンのあった岩の柱だけ。


 そして、その先端に浮かび上がっていたのは、土星のリングのように渦巻く砕けた石の破片と中心で輝く透明の球状の結晶だった。


「空の“宝珠”……?」


 良月は、思わずそれに目を奪われてしまった。


 すると、透明の玉を突き抜けて、月光が1本の線のように良月の額を貫く。

 良月は咄嗟に頭を守るために手で押さえたが、しかし、それは光線は光線でも攻撃的なものではなく、むしろ何者をも通り抜けて何者にも干渉せず邪魔されずに伸びていった。


 何者にも干渉せず邪魔されずと書いた通り、月の光は良月の手もその頭も真っ直ぐ通り抜けて、良月の背後にあった倒れた石の板に刻まれたこの遺跡特有の渦巻き模様に触れる。


 すると、次に月の光は渦巻きに沿うようにぐにゃりと曲がった。


「光が曲がって……!」


 頭の中を月の光が通り抜けたままのまるでおでこからビームを放っているような無様な姿で、良月が驚きを口にした。


 それからも、月の光はまた渦巻に当たればそれに沿って身を曲げ、進行方向を変えていく。



 そして――――月の光は崩壊した遺跡の跡地を出て、ニューグレンジのある方へ伸びていった。



「ニューグレンジ……。あそこで、何が起きてるんだ……!? あそこに何か……!」


 良月が困惑していると、続けてその頭の中を光の線に従って空の“宝珠”が通り抜けていく。その姿は、まるで月の光に通された数珠玉のようだった。


 2度も頭の中を何かが貫くという経験をした良月は、それでキャパオーバーになりかける。


 しかし、それをシズクが、


「私が行く」


 と、引き戻した。


「玉砂補佐……」


 シズクの体は、ボロボロだった。しかし、シズクは胸ポケットの中から平べったい粘土のようなものを取り出すと、それを口にする。――――と、シズクの体はぼこぼこと動き、空の“宝珠“に触れた時の衝撃で傷ついた体を補修した。


「空の“宝珠“、追いかけないとどうなるか分からない。――――良月はここに残って、2人を運んできて」


 しかし、そう意気込むシズクを、


「ま、待ってください! 追いかけるなら、自分が」


 と、止めた。


「どうなるか分からないなら、なおさら自分が」


 そう言った良月の目を、シズクはまっすぐと見つめ返して、


「それは、だめ」


 と、断った。


「どうして!」


「良月、臆病なくせにすぐ命を賭ける。死のうとする。嫌なことはちゃんと嫌がるけど、誰かのためになったら命の価値が軽くなっちゃう」


「……!」


「そんな人、仲間が来るまで待てない。待つために何かするかもしれない」


「自分は……」


 良月は何も言えなかった。だから、


「――――なら、運びましょう。2人とも」


 と、提案した。


「え……」


「ニューグレンジで何かあれば、先に待機している赤木芭月幹部らが対処しているでしょうし、それにそっちの方が救護班もいます。起きるのを待つよりは、車に乗せて移動したほうが確実かと」


 置いていくか、連れていくか。どちらがよりいいかを検討するには、時間がなさすぎた。だから、シズクは、


「……分かった」


 と、良月の案を信じることにした。


 しかし、ニューグレンジはすでに予想とは違う光景になっていた。



   ▼ ▼ ▼ ▼



「なんだ、これは……」


 1つになった島をストーンヘンジからニューグレンジへ、月の光を辿って車で駆け抜けてきた良月の口から思わずそう溢れる。――――と、シズクの背で目を閉じていたアザミが、その声で目を覚ました。



 その瞳に映ったのは――――特魔とそれ以外の大勢力による、魔術士同士の戦争だった。



 互いにまだニューグレンジの中に入っていないのか、その前の草原では空をさまざまな魔力が飛び交っていた。


「まさか、ロンドンマフィアですの……?」


 すると、遅れて目を覚ました飛鳥が、良月の背から降りる。そして、


「――――あれって、魔石具ですわよね」


 と、戦闘中の特魔ではない勢力の1人を指差した。

 そこに握られていたのは、間違いなく魔石具の武器だった。


「なんでロンドンマフィアって……」


 そう尋ねながらシズクの背から降りるアザミに、飛鳥は、


「だって、ロンドンマフィアは禁書災禍の生き残りで、もとは赤木天日と岩手福寿の下についていた黒魔術師や魔石具を扱った戦闘員たちだったのでしょう? ――――今の関係がどう言うものかは知りませんが、もし今もなお赤木天日が彼らを従えているとするなら、このタイミングで呼び寄せたとしても不思議はないですわ」


 と、自分の推察を述べた。


 すると、シズクが、


「そんなことより、今は空の“宝珠“」


 と、割って入る。


 シズクの言っていることはもっともだった。今は、誰が敵かなんてどうでもいい。


 しかし、それはそれでまた別の問題があった。それは、ニューグレンジが戦場になっていることもだが、


「それに、あの塚……」


 そう、アザミが呟いた先、かつて“妖精の塚“と呼ばれていた小石が積まれていて通路を通るにも身が狭かった遺跡は――――いつの間にか元の自身の大きさをゆうに超えた巨大な繭のような姿で、空に浮かび上がっていた。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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