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【12000PV 感謝】カロ - 黒魔術の子 と 人形少女 - 【完結】  作者: 誰時 じゃむ
最終章 - 第1話 運命の子供たち

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1-8 あなたのために

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


「結局、あいつ2体までみたいだったな。操れるの」


 教会の傍。

 事件終焉後、車の入れる開けたところに大人たちや救急車が集まっていた。


 そんな光景を眺めながら、天日が言った。

 その頭には、タンコブが連なっていた。


「確かに、集まる時も規則的だったし、一斉操作は同じ動きしかさせられないのか……」


 と、そう返すヒュウガの頭にもタンコブが連なっていた。さらには、清流も、


「確かに、俺を攻撃する時は俺を蹴飛ばした土人形はその場に倒れていた。それも、もう1体が神夜を抑えておかなきゃならなかったからか。自立でもできていたら、もっと苦戦していただろうな……」


 と、冷静に分析するも、その頭には同じようにタンコブがあった。


「自立……」


 ヒュウガはその言葉を聞いて、何か思うところがあったのかそう呟く。しかし、すぐに天日が、


「ってか、兄貴まで殴られることなかったんじゃねえの? 『お前にも痛みが必要か?』って聞かれて、『お願いします』って……」


 と、話題を切り替えた。


「この事件を挑む判断に賛成したのは、俺も同じだ。だから、同じだけの痛みを食らうべきだろう」


「へっ、後継になるとそんなことも考えなきゃいけねえのか?」


「むしろ、当主としての自覚を持てということだ。――――『必要か?』と問われるということは、『言わなくても、間違った判断と分かっているだろう?』と言われているのと同じだ」


「……そこまで分かってんなら、食らう必要もねえだろうに。俺だったら遠慮するけどな」


 そんな会話を3人がしていると、今度は遠くから、


「何してるんだ!! あれだけ、勝手に出歩くなと……!!」


 と、怒声が聞こえてきた。


 3人が振り返ると、そこにいたのは――――安久良とその家族だった。


 安久良は第一声こそ怒られはしたものの、すぐに両親に抱きしめられる。と、そこでついに泣いてしまった。


「いいねえ、ああいう家は。ああいうのが、家族ってやつ?」


 天日がその光景を見て、茶化すように呟くと、清流が、


「彼は、緋山家らしい」


 と、言った。


「緋山家?」


 全く心当たりのない様子の天日に、ヒュウガが、


「緋山……。って、元々は有名魔術士を何人も輩出してた、あの?」


 と、補足する。そして、続けて、


「なら、うちとは関わりあるかも。もしかしたら、あったことあったり……」


 そう、ヒュウガは言った。


「いや、今は魔術士は輩出していないらしい。あそこにいる父親も、特魔の職員ってだけで」


「そうなんだ……」


「あいつは選ばされるこ”になるだろうな、今ここで。魔術に関わらない人生を選んで記憶を改竄されるか、それとも魔術士職員として生きていくか」


 物珍しそうなものを見る目のヒュウガとは違い、清流は少し警戒するような目つきで安久良を見つめる。



 その視線の先――――安久良は父に「お父さんは、大人の人たちと話があるから」と告げられ、母と共に父が戻ってくるのを待っていた。



 そこにやってきたのが、神夜だった。

 そのすぐ後ろには、彼女の母親もいた。


「あの、うちの子がお礼を言いたいと……」


「お礼?」


 子供同士の前に、親同士がまず会話をする。


 神夜の母親は、安久良の教師という職業由来の丁寧さとは違い、他人に警戒させないような柔らかな態度でありながらも快活さを感じさせる姉御肌の女性だった。


「なんでも、助けられたとか。な?」


 そうして母親に促されて、神夜はようやく前に出る。


 と言っても照れていたり警戒していたりしたから親の後ろに隠れていたわけではなくて、それはあくまで儀礼的な失礼の内容にと配慮しただけの行動だった。


「あなた、名前は?」


「え……?」


 いきなりの神夜の問いかけに、安久良は言葉に詰まる。と、神夜の母親が、


「まずは自分の名前からでしょ」


 と、改めさせた。


「あ、骨喰神夜です。今回はありがとう。あなたがいたから、助かりました」


 神夜は、そう言って頭を下げる。それにどうリアクションしていいか分からず、ヒュウガは、


「い、いや、こちらこそ。本当に、ピンチのところを助けてもらって……」


 と、しどろもどろになりながら返答するしかなかった。


 すると、神夜はクスッと笑って、それから、


「お母さん」


 と、自身の母親に声をかけた。


 その合図を受けると、神夜の母は、


「うちの娘が少し2人きりになりたいみたいなんで、いいですか?」


 と、困惑する安久良の母親を安久良たちから少し離れたところへと連れ去っていった。



 そうして、今度は2人きりになる。――――と、会話を切り出したのは、神夜だった。


「あの、名前……」


「あ、ああ。緋山安久良です……」


「安久良……。安久良は、どうしてあそこに?」 


「えっと……。ぼ、僕の家は両親が共に帰ってくるのが遅くて、だから放課後は暇になると遊びに行くんだけど、その時にホームレスがトラックに詰められていくのを見かけて、それでそれを見ていた僕もいつの間にか……」


「そう。……魔術士だからとか魔力が見えるからじゃないのね」


 すると、安久良はピクッと眉を動かし、


「それ! 君たちが使ってたあの紋章のやつ!?」


 と、その話題に食いついた。


 神夜は一瞬、それに答えるか迷う仕草を見せる。が、


「どうせ、消えちゃう記憶だし、いっか」


 と、呟くと、


「ううん。紋章のやつは、私だけ。でもね、清流……。あの赤髪の子たちも黒い髪の子も、みんな使えるのよ」


 と、説明した。


「へえ……。本当にあるんだ……」


 安久良は、飲み込めない驚きを口にしたところで気がつく。


「――――え? 記憶が、消える? 誰の?」


「あなたの」


「僕!?」


「うん。もちろん、魔術に関することだけ。たぶん、怪しい集団に攫われて警察に助けられたくらいになるんじゃないかな」


「君のことは?」


「私? 忘れちゃうんじゃない? 私だけじゃなくて、他の子のことも……。やっぱりリスクってやつだと思うし……」


「お、覚えてる方法ってないのかな?」


「うーん、特魔に関わる仕事に就くとか? 確か、君のお父さんは魔術のことを知っていても問題ないわけだし……」


「仕事……」


 それは、子供の安久良にとってはどうしようもないことだった。


「あ、覚えてるといえば、なんで初めて清流を見た時、“赤木“だって知ってたの?」


「それは……。神夜さんが覚えてるかは分からないけど、2年前に神夜さんの襲名式みたいなので見かけたことがあって……」


「襲名式……。ああ、“5つ歳口上“!」


「そう、それ! それで、君も彼らも見かけて……」


「そっか、覚えてないなー……」


 その言葉を聞くと、安久良は、


「無理もないよ。前のことだし、それに僕はたくさんの人の中の1人で……」


 と、目を伏せる。しかし、神夜は、



「――――でも、もう忘れないよ」



 と言って、すぐに安久良の顔を上げさせた。


「え……」


「ヒュウガに聞いたの。あの時、ヒュウガの提案で、囮を引き受けてくれたって。それって、すごい勇気のいることだったと思うんだ」


 それから、神夜は安久良の手を握る。

 その手は、魔術士といえど自分と同じ人間で温かかった。


「あなたが忘れても、私は忘れない。――――どれだけたくさんの人を助けても、助けられても。忘れない。私の中じゃ、あなたはもうなんでもない人じゃないから」


「……!」


「私ね、他の人より魔力がすごいらしいんだ。だからね、あなたのために祈らせて」


「祈る?」


「うん。あなたの行先が幸せでありますようにって。お母さんがね、お父さんに毎朝やってるんだ。魔力を通じて幸運を授けるおまじないなんだって。――――だから、そうやって祈ったらあなたが私を助けたことは忘れちゃっても、あなたのしたことの結果はあなたの中に魔力を通じて宿るかもしれないでしょ?」


「したことの結果?」


「つまりね、あなたが今日のことを忘れても、あなたが助けた私の祈りがいつか奇跡のような幸運となってあなたを助けるかもしれないってこと。――――そうなればいいなって思ったの。それくらいしか、してあげられないし」


 神夜は安久良にそう微笑むと、それから目を閉じる。そして、

 

「あなたの勇気が、あなたを幸せに導きますように」


 そう、祈った。


 魔力など安久良には見えないが、それでもその握られた手を通じて温かさ流れ込んでくるのを感じた。


 少しして目を開けると、神夜は「それじゃあね」と立ち去る。

 安久良は、その背中をじっと見つめていた。


「――――安久良、話は終わったか?」


 そこへ声をかけたのは、話を終えた父だった。

 父は、何人かの大人を引き連れて安久良の元に戻ってくる。と、安久良は父が何かを切り出すよりも早く、


「――――ねえ、お父さん。僕、特魔ってところで働いてみたい」


 と、切り出した。



 自分にこんなにも自信をくれた、彼女の力になりたい。彼女を、忘れたくない。



 そして、その日、安久良は忘れた先の未来より手の温かみを覚えていることを選んだのだった。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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