本当の敵、抗う者
次回は明日20時に更新予定です
『月』――それは皆が焦がれた美しさを持つ――
『星』――それは多くの輝きを放ち空に浮かぶ――
そんな二つが見下ろすものは『人類』人と人が繋がり、多くの欲を持ち、多くの知性を持つ。最も醜く、それでいてどんなものよりも美しい存在。
『月』は焦がれた、その美しさに。『星』は焦がれた、その生き方に。焦がれ、羨み、妬み……そうしてかの者らは『人類』を手に入れるため、『人類』になるために全てを飲み込んだ。多くの命と多くの宝を……そうして出来た新たな世界は混沌の渦に飲まれ、異形が徘徊する姿へと変わり果てた。だが、『人類』はこれを良しとしなかった。足掻いて足掻いて、そして異形に対抗するための武器を生み出すことに成功した。彼らは『アンドロイド』、世界を、『人類』を異形から救うために造られた機械兵器であり、『人類』を取り戻すための希望である――――
――本当に?――
七号が地下から地上へ登っているその時、大きな地響きが辺りに響き渡る。危うくバランスを崩しそうになるが何とか耐える。
「一体何が……まさか、もう追っ手が来たのか……!」
急いで階段を駆け上がり、勢いよく扉を蹴り飛ばし外に出ると辺りは炎に包まれていた。屋敷が燃え始めている、そう認識すると同時に、死角から攻撃が飛んできた。咄嗟に避け、距離を置こうとするも、攻撃は次々に七号へと襲いかかってくる。必死に避け続けるが、その間にも屋敷が崩れていっている。このままではどっちみち殺されることが確定している。何か策はないかと思案する、その時一瞬の判断が遅れ、相手の攻撃を避けれず食らってしまい体制が崩れよろけてしまった。
「――っ!しまっ……!」
やってしまったと思っても時すでに遅く、もう刃は目の前まで来ていた。ここまでなのか……そう思い悔し紛れに諦めて目をつぶっていると、いつまでたっても切られた感覚が来ず、ゆっくりと閉じていた瞼を押し開けるとそこには新種の異形が、七号を守るかのように立っており、そして七号に攻撃してきたアンドロイド達を己の刃で、貫いていく。また七号は、異形に助けらてたのだ。
「……また、恩ができてしまったじゃないか…………おいお前、どうして私を助けたんだ。言っただろ、私とお前は敵同士だと……」
「……敵、同士、でも、ト、トモダチ、友達、だから!アナタ、あなたと、友達、にナ、なりたい!から!」
「――!っ……もう、仕方ないな…お前は、異形のようで、異形とは全然違うのだな……」
「に、ニゲヨウ!にげよう!い、イッショ、一緒に!」
「……ああ、負けだ負け、私の負けだ…そうだな……にげよう、逃げようか、一緒に」
こうして、二人はこの世界からの敵になることを決意し逃走した。二人はかけてかけていく。どこまでもどこまでも誰にも見つからないように、誰にも悟られないように、生きるために逃げて逃げて逃げていく。
―今から語るはひとつの資料であり誰かの真実である―
意識が芽生えた時、すでに異形は異形であった。その真実は変わることなく、異形は人類の敵である。異形はアンドロイドたちの敵である。異形は……
――異形の敵でもあった――
そう、異形は生まれながらに異形という訳ではなかった。全ては人類が犯した誤ちが始まりだった。かつて人類は永遠を手に入れようとした。永遠の命、永遠の時間、ありとあらゆる永遠に焦がれた人類はそれを現実に確立させようとした。そしてついに、『月』に手を出してしまった。『月』は知っていた愚かな人類の願いを、だから契約を結んだ。
『人類は永遠を望む、ならば我は人類の美しさを求める。これは契だ、これは約束だ、これはお互いが解けぬ呪いだ。永遠の呪いだ、それでもなお望むと言うならば、我もお前たち人類を求める』
人類は喜び、歓喜に満ち溢れ、契りを結んだ。そして、人類が住む『地球』は『月』によって飲み込まれた。全てを包み込み、全てを飲み込み、そして少しずつ人類という生き物を化け物に変えていった。外から見れば異形と人の戦争だが、正しくは人と人との戦争が起こっていった。殺された人は異形に生まれ変わり『月』からこぼれ落ちた『星』に触れた者は異形へ変わり、こうして異形は生まれ、感情も理性も失われた化け物に世界は飲まれていった。このままではまずいと生き残った数少ない人類は地下に逃げ込みシェルターを用意した。そして異形の対策を進めていった。ある時は異形から人へ戻れるようになる薬を開発したり、ある時は世界技術を使い何にも負けない武器や、防具を作ったり、あらゆる手を尽くしていく人類はついに、『最終兵器であるアンドロイド』を産み出すことに成功した。そして、シェルターを使い、地球から遠い星へと打ち上げることに成功した。多くの犠牲の元に産み出された『アンドロイド』はたったの一機だけだった。だが、その一機は自分に埋め込まれた真実を元に多くの『アンドロイド』産み出していった。そして現在、西暦一万三千年真実を知る『アンドロイド』はすでにセーフハウスの最深部にあるコアとしての役割をしていた。産み出された『アンドロイド』たちの目を使い、内部回路を使い、情報を記録していく。この時すでに、終わらない戦いが永遠に続くことを理解していたコアはただただ傍観する。それが人類にとっての命令だったからだ。この星の行く末を記録し観測することこそが『アンドロイド』にとっての使命だったからだ――
次で完結!
2人はこの先どうなるのか……!




