最悪の誕生日
ベル、ラント、セラが村に帰ると、村が地獄絵図となっていた
「な、なに、これ」
「お、おい、どうなってんだよこれ!?」
「あの旗…パウムス帝国騎士団!!なんでこんな辺境の村に…」
ベル達が村に帰ると、そこには地獄絵図が広がっていた、家は燃え、所々に村人達の無残な死体、そして騎士団の雄たけび…
「クソ…どうすれば…」
「父さん…母さん、俺の家が…父さん!!母さん!!」
「なっ!?待てラント!!!」
「パパ!!ママ!!!」
「セラまで!!クソ、何でこんなことに…」
突如、ヒュンと風を切る音がなり、ドさ、と同時に何かが倒れる音がした
「え?ラント?セラ?なんで、そんな所で倒れて…」
ラントとセラの頭には、弓から放たれたであろう矢が刺さっていた
「うそ、うそうそうそ!!!ラント!!セラ!!!!息…してない…」
「パパと、ママは?あ、パパ!!!ママ!!!!」
ベルは自らの家に向かって走った、何本も矢や槍が降る中を走って、ついに、家に着いたと思ったら
「ベル!?逃げろ!!!」
剣を持ち、パウムス帝国騎士団と戦っているジェラルの姿があった、その腕の中にはだらんと力なく腕が垂れているメアの姿があった
「ママ…ママ!!!」
「待て!!ベル!!来るな!!ガっ!?」
「パパ!!!!やだやだやだ!!!置いていかないで!!もう苦しいの嫌なの!置いていかないで!!」
だが、そんな願いは虚しく、ジェラルの体は地に付した
「ほぉ、体中矢だらけになりながら走ったか、小娘」
ジェラルを殺した老人がこちらに向かって歩いてくる、だが、悲しみに溺れたベルには、そんな事気にしている暇などなかった
「パパ…ママ…置いていかないで、死なないで…」
「立て、わしと立って戦え、貴様は中々強そうだ…」
「お願い…起きて…起きてよ…」
「ふむ、立たぬか、ならば!!」
老人は、剣を抜き、ジェラルの死体を切り刻んだ
「さあどうじゃ小娘!!これで少しはっ…」
「お前…今…なにした、パパの体に…なにした」
「小娘、その目は、なんじゃ」
ベルの目は、まるで龍のような、細長い瞳孔になり、赤く染まっていた
「まあよい、わしは空間の英雄パウムス、参る!!」
パウムスがベルに向かって剣を振りかぶる斬りかかった、ベルは腕で剣を受けたが当たり前のように右腕が無残にも切り落とされる、だが、ベルが口をあけ、一言つぶやくとパウムスの剣が粉々になった
「『壊れろ』」
そう言って、落ちた腕を拾い上げ、ぐりぐりと断面に押し付ける、すると何故か直ぐに引っ付いた、ベルは手を開き閉じを繰り返し治ったかの確認をしていた
「なんで、パパを斬ったの、斬る必要なんてなかったよね」
「何故斬ったかと言うか、主の気を引くためだ」
「そう、わかった、戦ってあげる、そんなに戦いたいなら」
「よし!!さあやるぞ!!!空間よ、我が体を運べ『異界連門』!!」
突如パウムスの姿が目の前から消え、ベルの真後ろに、剣を大きく振りかぶった姿で、真後ろに現れた
「身体改造『甲殻』」
ベルがそう唱えると斬りかかられた首が白く変色し、剣を弾き、小気味いい好い金属のはじかれる音と共にパウムスの剣がへし折れ飛んで行った
「なんと、なんと硬い首か…剣が折れてしまった」
パウムスが転がっていた兵士の体に刺さった剣を引き抜き再び構える
「すまんが、借りるぞ我が兵士よ、さて、自己紹介がまだじゃぞ?お主の名を聞かせろ、殺した後に剥製と共に名を刻んでやる」
「…いいよ、冥途の土産に教えてあげる、ベル、お父さんとお母さんの娘、ベル・エヴァーモア、おじいちゃんが死んだら剥製にしないであげるから安心して死んでね」
「ふん、戯言を、では再び、参る!!!魔力よ、我に力を『鬼神力』!!」
パウムスの体が膨張し、明らかに力が強くなったのだろうとわかる、持っている剣が、その握力でミシミシと音を立てている程だ、だがそんなものを気にもできないベルは、悪態をつきながら詠唱を始めた
「早めに火葬してあげる、墓に入れてほしい?それとも豚の餌がお似合いかな?まあいいや、あとで考えよ、炎よ、我が宿敵を塵にせよ『大焦熱』」
ベルの手の平に小さなこぶし分程の炎が現れる、それを前に突き出し、パウムスに向けて放つ、それをパウムスは剣で斬った
「この程度か!!!」
「ううん、それはブラフ、頭が衰えちゃった?」
ブラフの火炎弾を放った隙に真上に移動し、パウムスの頭目掛け『大焦熱』を放った
「む!?まずい!!」
あまりの熱で、パウムスの持つ剣と鎧が解け始める
「あはは、高そうな鎧なのにもろいんだね、年代物なんだしコレクションしなよ、おじいちゃんの趣味らしくていいじゃん」
「この程度ぉぉぉぉ!!!!」
パウムスは落ちてきた大焦熱を真っ二つに割った、自慢げな顔をベルに向ける
「しわとシミだらけの汚い顔むけないでよ、今バラバラにしてあげるから、大地よ、我が手に王を切り裂く武器を与えよ『妖刀村正』」
ベルの手の中に怪しげなオーラを放つ日本刀が現れる、それを見てパウムスはまるで子供のように目を輝かせた
「なんと!千歌月の刀か!それは!!なんと見事な!!!」
「…本物じゃない、本物はもっとすごい、あくまでレプリカ…」
「何を謙遜する!!魔術で刀を作り出したではないか!!」
「まだ血を吸ってないから、妖刀とも言えない、だから、おじいちゃんの血で妖刀にしようか!!!」
ベルはそういい、驚異的な脚力で前に飛び、パウムスの腹を斬りにかかった、パウムスは何とか避けたが、鎧が紙のように切れ、薄皮一枚が斬られた
「グッ、さすが刀、噂に聞く凄まじい切れ味じゃ…鎧が紙のように斬られた」「そろそろ、終わりにしようか、私も我慢の限界だから」
刀についた血を振り払い、再びベルが刀を構える、それに合わせてパウムスも刀を構える、そして、お互いの汗が地面に落ちた瞬間、二人は一瞬で前方に飛び、お互いの首目掛けて刀を振る、そして一秒早く、ベルの刀がパウムスの首に入った瞬間
「っ…!『空間転移』!!!!」
「っ………、は?消え、あの、クソじじいがぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!」
同時刻、パウムス王国王城
「はぁ!はぁ!あの小娘、ベルと言ったか、まさに、化け物…引退間近の老いぼれでも英雄…ここまで追いつめられるとは…」
白と黒の混じった如何にも怪しそうな男が膝をつき、首から血を流すパウムスの元にゆっくりと歩いてくる
「へぇ~、おじい様結構危なかったんですね、そろそろ僕と変わってはどうです?」
「まだ変われん、あの小娘、ベルを殺すまでな…!!」
時は戻りベルナ村
「ごめんね、お母さん、お父さん、守れなくて…最後に、近くに居れなくて…」
そう言い亡骸となった父と母の間に潜り込み、眠りについた、せめて最後に、父と母の温もりを、匂いを感じようと…
朝
ベルが目を覚ますと二人の体は真っ黒に焼け焦げていた、夜の間に騎士団が退散するついでに村に火を放ったのだろう、ベルが死んでいないのは、最後に二人が守ってくれたからか…ベルは立ち上がり、村人達の死体を集め、それぞれを家族で分けて埋葬した
「おやすみなさい、お父さん、お母さん、ラント、セラ…また、戻ってくるからね…行ってきます…すぅ~…『■■■■』」
そうしてベルは村を出た、心を復讐の炎で燃やしながら。




