親子登山
ベルとメルは獅子龍との戦いを終え。
目的地である、ウルガルに向かうため、登山を始める。
ベルとメルは体勢を整え、獅子龍に向かって構える。
「ママ、大丈夫?」
「うん、もう治った」
さすが龍、抜け殻だけでこの威力。
そして、奴を倒すには恐らくは皮膚全体を破壊しなければならない。
となると『絶対零度』や『爆炎刀』の爆発を使うなどだが……
「ま、手っ取り早いのは殴って破壊かな」
「回復する前に全部壊すってこと?」
「正解!メルは頭がいいね~♡」
親ばかを発揮している隙に、獅子龍が喉に魔力を集め、炎のブレスを飛ばしてきた。
メルが羽を広げ、私を守ってくれた。
「ありがと!メル!!」
「ママやちゃえ~!!」
メルの羽から飛び出し、獅子龍の背中に飛び乗る。
獅子龍の背中を切り裂いた時に獅子龍が怯んだのは弱点が皮膚だったからだろう。
なので今回は全面、皮膚の下に魔術を打ち込み、下から皮膚全体にダメージを与える。
そういうわけで、獅子龍が体をブルブルと震わせ、ベルを振るい落とそうとするのを耐えながら、獅子龍の皮膚を斬り、それで生まれた傷に『氷風』を打ち込んだ。
「これでも食らえ!!!!」
獅子龍の皮膚と筋肉の間に空気が入り隙間が生まれ、その隙間が氷で塞がった。
そうして、獅子龍の皮膚は限界まで膨らみ、耐えきれず破裂してしまった。
本体を失った獅子龍の体は、キラキラと塵となって消えていった。
「ふぅ……倒せた~!」
「ママすごい!!!あんな強そうなの倒した!!」
「ふふん、そうでしょ~」
これで、パウムス帝国は国宝級の龍の残滓を失った。
これで強力な兵器の生産数が落ち、戦争などになれば不利になるだろう。
「さて、降りるのめんどくさいし、飛び降りようか!」
「は~い!」
ベルは足と腰回りを龍化させ、メルはワイバーン状態で塔から飛び降りる。
二人の肉体ならばどんな高さから落ちても、頭から落ちたりしない限りは痛くもないのだ。
そうして二人は飛び降りた、強い風を体に受け、凄まじい速度で地面まで落下する。
ドカンと大きな音とクレーターを作り、二人は地面に着地した。
二人とも頑丈な体のおかげで、傷どころか痛み一つ感じていない。
「ふ~、さて、やりたいことはしたし、ついに、ウルガルに向かおうか!」
「わ~い!それで、ウルガルってどんなとこなの?」
「えっとね~」
ウルガル、それは山岳に設置された要塞都市だ。
兵器の開発や実験などを行っている。
そしてもう一つ、龍と共存する都市と呼ばれている。
「龍と共存?そんなことできるの?」
「ほんとはできないんだけどね、その龍は特別なの、英雄の仲間だからね」
この世界には、七英雄の外にもう一人、英雄と呼ばれた者がいた。
その名を、魔術の英雄。
魔術の英雄は、多種多様な魔術を行使し、七英雄と共に、龍を討った伝説が残されている。
「例えば~、水龍村の水龍伝説、ラトルの雷龍伝説、あそこが古巣になったのは、魔術の英雄が龍を追い出したからって言われてるよ」
「へ~、そうなんだ、ラトルって、ママが前に行ったところ?」
「正解」
魔術の英雄の伝説は数多く、残されている。
そして、ウルガルにいる鱗龍ウルガルは、昔、魔術の英雄が拾った卵から生まれた龍であり、ともに冒険した仲間だったらしい。
英雄からの何らかの指示で、山岳都市周辺の山を、一匹で守っているとか。
「そんな伝説あるんだ~、魔術の英雄ってどんな人だったの?」
「えっとね~、どんな人でも助けて、困った人には手を差し伸べる、そんな理想的な英雄だったらしいよ」
「へ~、理想の英雄さんって感じだね」
「まあ、その分悪い噂もある英雄だったけどね」
「悪い噂?」
魔術の英雄には悪い噂があった。
街を訪れる度に嫁を作って、世界中に何人も嫁がいる。
戦闘狂で、人助けの依頼などは一つも受けずに、討伐系の依頼を受ける。
さらにはパーティーメンバーは、全員女で、全員に手を出している。
などなど、他にも、叩けばいくらでもほこりが出てくるのが魔術の英雄だ。
「うわ~、魔術の英雄さん可哀そうだね」
「さぁ~?どうだろ、火のない所に煙は立たないからね~」
「それどういう意味?」
「えっとね、悪い噂が出るのは、何か悪いことをしたかもしれない的な意味」
「ほへ~」
「まあ、妬まれたりする役回りだから、ってのが私の考察だけどね」
「確かに、英雄って、憧ればっかりって思ったけど、嫉妬とかの視線も向けられるのかもね」
「メルはそこまで考えられるなんてほんとに天才だね~!!!」
そうして、二人は獅子龍の神殿から、山の麓まで歩いていた。
獅子龍の神殿から、山の麓まで歩くと、二人の目の前に、断崖絶壁の、超巨大な山が現れた。
「ねえママ~、これ山なの?」
「そうだよ、これがウルガル山」
「ねえママ~、都市もウルガル、この山もウルガルなんだね」
「まあ、鱗龍ウルガルが目玉だからね、ここら辺は」
「なるほど~」
「さて、この辺りは冒険者が普通に来るから、メルの背中に乗って飛んで登るのはできないから、普通に登ろうか」
「は~い!頑張るぞ~!」
「お~!」
ベルとメルの二人はその巨大な岸壁を登り始めた。
本来なら到底人が登れるような壁ではなかったが、二人は何の問題もなく登っていく。
本来ならこの山を迂回して、王都へ向かうのがセオリ―それほど登るのが大変な山なのだが、ベルとメルならば、なんの問題もなく簡単に登れるので、この道を選んだ。
「ママ~、山登り楽しいね!」
「そうだね~、私たちぐらいになると、このぐらいがちょうどいいね」
「ね~!」
二人がこの崖まで来る道中も、Dランク冒険者程度では登れない程の急斜面や、危険な魔獣が出てくる危険地帯。
だが、ベルとメルの二人では全く危険などない、ただの坂道だったのだ。
なので、今登っている、この115度の崖の方が、多少疲れる、丁度いい登山なのである。
そうして、なんのスリルもない、ただの親子登山を終え。
二人は崖のてっぺんまでたどり着いた。
二人の目の前に現れたのは、大量の生物の死体が刺さった針山だった。
ここはウルガル山名物針地獄。
空には鳥型魔獣が跋扈し、獲物を掴み、空中から針のように鋭い岩に落として殺す。
そんな恐ろしい場所である。
「うわぁ~、とげとげ~」
「メル、上に注意ね、アイツらが掴んできて、あのとげとげに落としてくるから」
「わ、わかった!」
メルはそう言って、上空に注意をしながら、ベルの後ろをついてきた。
そんなことをしていると、上空の鳥型魔獣がベルとメルに狙いを定め、急降下してきた。
ベルとメルはそれをなんなく避け、地面に激突した衝撃で怯んでいる、鳥型魔獣にメルが攻撃をする。
「『黒柱』!!!」
「お~、メルお見事」
メルの放った『黒柱』が、見事鳥型魔獣の体を串刺しにしていた。
「えっと~、この魔獣は……スパインバードだっけか」
「スパインバード?」
「そう、この山岳地帯みたいな、とげとげな岩場に生息する魔獣だよ」
スパインバードとは、このウルガル山のこの針山がある場所に生息する魔獣だ。
獲物に突撃し、獲物がこけたりひるんだ隙に、仲間が獲物を持ち上げ、そのまま針山に落とす。
これがこの魔獣たちの狩りの仕方、かなり頭のいい魔獣だ。
なので、仲間が簡単にやられたのを見て、もう巣に帰っていた。
「頭いいんだね~」
「そうだね~、ある意味、環境を利用して狩りをするからね」
「………この鳥さん美味しいかな?」
メルはじゅるりとよだれを拭きとった。
「美味しいみたいだよ、ウルガル山の名物で、高級品でもあるみたい」
「メルこれ食べたい!!」
「そうだね、今日の晩御飯にしよっか」
「わ~い!!」
そうして、スパインバードを魔動袋にしまい、再び都市ウルガルに向かって、山を登り始めた。
ブックマークなど、お願いします!作者が泣いて喜びます!!!




