龍と共存する都市
ベルはついに山岳都市ウルガルに到着した。
厄介な輩に絡まれながらも、冒険者組合に到着すると、一人の女が待ち構えていた。
ベルとメルの二人は針山の間を歩く。
その針の先端には、いくつも生物の死体が突き刺さっていた。
その中には、ここを訪れたであろう、冒険者の死体もあった。
「ねえママ~、死体がいっぱ~い」
「あの鳥さんにやられたんだね~」
「あの鳥さん強かったのかな?」
「隙を突かれたんだろうね~」
死体の突き刺さった針山を、ベルとメルの二人は通り抜けていく。
しばらく歩いていると、針山地帯を抜け、その先に、大きな壁に囲まれた、
山岳都市ウルガルがあった。
「あれがウルガル?」
「そうだよ、ほら、ウルガルに入るから影に隠れて?」
「は~い」
ベルはメルを自分の影に隠し、ウルガルの正門まで向かう。
30メートルはあるだろう壁に、15メートルほどの大きな門が取り付けられていた。
その門の前には、長い槍を持った兵士が二人、あくびをしながら警備していた。
「こんにちは~」
「ん?おい嬢ちゃん、どうやって都市の外に出たんだ?」
兵隊の一人が言い、もう一人の男も口を開いた。
「ここは魔獣が多いから危険だ、ほら、早く家に帰りなさい」
「違うよ、私はアルカナからここまで来たの」
「そんな嘘はつかなくていいから、ほら、ママのところに帰りな」
「だから~、これ!冒険者証!!」
そう言って、ベルは懐からA級の冒険者証を取り出し、兵隊の二人に見せる。
兵隊の二人は一瞬動きを止め、ベルの手から冒険者証をひったくり、眼球に当たるんじゃないかという距離でそれを観察する。
「お、おい、これ本物だぞ!!」
「ま、まさか、こんな子供がA級!?」
「だから!そうだって言ってるじゃん!!!」
「あ、あぁ、わるかった、通っていいぞ」
許可が下りたことで、ベルとメルは無事、入国ができた。
ウルガルのその見た目はまさに要塞都市、という感じだった。
建物は全て頑丈な鉄筋コンクリート製で、高い壁に囲まれ、その上には砲台などが設置されている。
他国との戦争の為に、色々準備されているのだ。
メルを影から出すために、路地裏に入り込む。
「メル、ここなら出てきていいよ」
「は~い、わふ~、お外の空気が美味しい」
メルが影の外の空気を楽しんでいると、ガラの悪い男三人がこちらに歩いてきた。
「おい嬢ちゃんたち、ちょっといいかい?」
「こっちに美味しい飴ちゃんがあるんだ」
「おじちゃんたちと一緒に食べないか?」
「飴ちゃん!?食べる~!」
「メル、誘拐のよくある手口だから乗っちゃダメ」
「はっ!おじさんたち悪い人?」
「ち、違うよ~、お嬢ちゃん、おじちゃんたちいい人だよ?」
ベルは手だけを龍化させ、スキンヘッドの男の足を握りつぶす。
「あぎゃ!?」と情けない声をあげ、スキンヘッドの男はあまりの痛みに意識を手放した。
咄嗟の出来事で動きが止まっていたちびデブとスーツの男は、ハッとした様子で「何すんだクソガキ!!」と声をあげてベルに掴みかかってきた。
「メル、あんなふうな奴らにはついて行っちゃダメだからね?」
「は~い、ママごめんなさい……」
「わかればよろしい」
「無視してんじゃねえぞ!!!」
スーツの男がベルの腹に蹴りを食らわせようとしたが、ベルはジャンプして躱し、カウンターでそのままスーツの男の顔に蹴りを食らわせ、ダウンさせた。
「ヒえぇ!!」と、哀れな声をあげたちびデブに、そこらへんにあった道具をぶん投げ、頭にクリーンヒットさせ、ちびデブもダウンした。
「さてと、一応誘拐未遂犯だし、冒険者組合に連れて行こうか」
「お金貰えるかな?」
「さぁ、雑魚だしもらえないんじゃないかな~」
「ちぇ~、おじさんたちもっと強くなってよ~」
そうして、気絶している三人をロープで縛り、担ぎ上げる。
そのまま路地裏から出て、冒険者組合まで向かった。
その道中、「なんだあれ」とか「あいつら手配書の!」とか聞こえてきたが、もしかするとベルが担いでいる三人は結構ヤバい奴らだったのかもしれない。
「それにしても、ここって物価が高いね~」
組合に向かっている道中で、店などの商品の値段を見ていた。
どれも銀貨、確か元の世界で例えると、銅貨が千円、銀貨一万円、金貨百万円、聖金貨一億円なので、ここでの買い物はとんでもなく高い。
と言っても、ここで働いている人たちは皆研究者や兵隊なので、
みな給料は高額だ、だから成り立っているのだろう。
「はぁ、ここで生活できるのは優秀な冒険者とかじゃないと無理だね」
「ママ~、なんでこんなにいろんな物が高いの?」
「ん~、多分だけどね~」
おそらく、このウルガルに食料などを運ぶとなると、C級以上の冒険者を雇い、護衛をつけて、物資を運ばなければならない。
さらに、運べる量もあまり多くない。
それに、ウルガル内で野菜や家畜を育てても、数は少ない。
なので、物価が異常なまでに高くなるのだ。
「なるほど~、だからこんなに高いんだね」
「そういう事、だからここに来る人は家族を故郷において、出稼ぎに来ている人が多いんだよ」
そうこうしていると、ウルガル冒険者組合が見えてきた。
ウルガルの中でも、かなり重厚な見た目をしており、
宿が付いているのだろう、四階建ての、高い建物が見えてきた。
「ん?なんか人が待ってる」
「なんだろ、ママに手を振ってるけど」
ベルたちに向かって手を振る女性が、冒険者組合の扉の前で待っていた。
その女性は、豪華な装飾の付いた、踊り子のような服装をしている、赤い髪の女がベルとメルに話しかけてきた。
「お待ちしておりました、ベルさま、メルさま」
「………だれ?」
「これは失礼しました、わたくし、ウルガル冒険者組合の組合長、ベレーザと申します」
「それで、私たちに何の用?」
初めて見る人のため、一応警戒して、メルを背中に隠す。
ベレーザと名乗った女が、少し頬を赤らめたのをベルは見逃さなかった。
「なんで頬赤くしてんの……」
「あぁ……いえ、とても可愛らしかったので……♡」
ベルはこの手の人間に見覚えがあった。
そう、ハーラと同じ、ロリコンである。
「それで……何の用なの?」
「おっと、失礼しました、え~、アルカナ冒険者組合の組合長から報告が来ておりまして」
「レルゲンさんから?」
「はい、A級冒険者のベル様がこちらに来てくださると報告を受けました」
「それでお出迎え?それだけじゃないよね、何かしてほしいことがあるとか」
「ご名答です!今、このウルガルでは、強力な兵器が開発されています」
強力な兵器。
その話は有名だ。
このウルガルは山岳要塞であり、兵器の実験場であり、発射地点なのだ。
このウルガルで今作られているのは対龍用兵器。
龍用と名前についているが、その使用用途は戦争用。
人間に使うものだ。
「私たち冒険者組合は、すべての戦争に反対なのです」
「つまり……私に兵器を破壊しろと?」
「はい、A級冒険者である、ベル様に破壊してほしいのです」
「まあ大体理由はわかるけど、理由を詳しく教えて」
「我々冒険者組合はどの国にも属さない組織です、そして、人間種を守ることを中心に動く組織、なので、戦争は断固として反対、さらに戦争が起こりそうなら、止めるのが、我々の考えです」
「なるほど……」
ベルは思う。
ベル本人的にも、パウムスの弱体化は臨んだこと。
さらに、戦争は嫌いだ。その火種を潰せるのならば臨んだことなのだが…。
「それってさ、こっちが処罰されたりしないよね」
「破壊するための侵入の際に見つかれば極秘に処罰されますね」
「破壊した後は?」
「今回の兵器の開発は違法です、なので、破壊し、冒険者組合が告発すれば、ベル様が処罰される心配はなく、さらに、帝王パウムスも逮捕できます」
「なるほどね~………」
ベルの考え的には問題のないことだ。
パウムスが捕まり、処刑されれば、復讐は果たされる。
それに、自らの手を汚さずに済む……となれば。
「わかった、その依頼を引き受けるよ」
「感謝します!ベルさま」
そうして、ベルはウルガルに存在する、対龍用兵器の破壊を引き受けたのだった。
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