アルカナで起きている異変
モノクロスとの戦いの後、ベルはレルゲンに起きていたことを報告する、そして、モノクロスの死体に異変が。
泣きつかれて眠ったメルを、部屋で寝かせ、ベルはレルゲンに、モノクロスとの戦いのことを報告していた。
「あいつと戦って、一応は討伐した、ホワイトサーペントがブラックサーペントの死体を食べて合体して、モノクロスに進化しちゃったけど」
「なるほど……そんなことがあったのですね、ベルさん、モノクロスの討伐、感謝します、ベルさんがいなければ、アルカナどころか、パウムス…いや、周りの国にも被害が及んでいたかもしれません」
「ううん、五十一人も…私のせいで…」
「なんども言いますが、ベルさんのせいではありません」
「そう…かな…」
そんな話をしていると、モノクロスの死体を解体していた研究員達が、ベルとレルゲンのいる、組合長室に飛び込んできた。
研究院の男は非常に焦った様子で、体には、血が付着していた。
「れ、レルゲン組合長!!大変です!!」
「ど、どうしたんですか!?」
「モノクロスの死体が爆発しました!!」
「な、なんですって!?」
「……ねえ、レルゲンさん、あいつと戦ってるとき、違和感感じたの、どこか、機械的な動きっていうか、戦うことが一番の目的じゃない動き、偵察が目的みたいな」
「偵察?」
「そう、ねえ死体が爆発したんだよね?」研究員に話しかける
「は、はい!解剖していた研究員によると、何か魔石のようなものが埋まっていて、それに触れると爆発したとか…」
「やっぱり、モノクロスは死んでから爆発とかはないと思うの、だから…」
「人為的な事件だと?」
「そう…裏に…何かいるかもしれない」
現在の情報だけでも、人為的な事件の可能性が高い。モノクロスの体内にあった魔石、機械的な動き、本来A級魔獣が出ないはずの蛇の森、すべて一つ一つは偶然で片付くが、偶然が重なりすぎている。
明らかに人為的な事件だと言わざるを得ない。
「………となると……妖狐…ですかね」
「…妖狐…どっかで聞いたことある気がする…あ、水龍村で討伐した」
「えぇ、お話は伺っております、水龍村で現れた盗賊達は下っ端、そして、このアルカナにいるのは、アルカナの裏社会を牛耳っている部隊なんです」
「そんなのがいるんだ…確かに手配書とかいろいろあった気がする」
ベルがアルカナに入った時、壁によく手配書が張り付けてあったのだ。
そこには、「妖狐」と書かれた、盗賊団の手配書があった。
「となると、盗賊団にはもっと強いのがいるかも…」
「そうですね、早く解決しなくては…ですが、モノクロスのせいで冒険者がもうほとんど残っておりません…」
「……」
ベルは思う、アルカナは好きだが、特に思い入れもない、棘の三人が逃げさえすれば、別に滅んでも構わない…だが、少しの良心が無視できないのだ。
そして、今、ベルの体に漲る力なら、どうにかしてしまいそうな自信があった。
この力の源はおそらく、アイツのせいで龍化が進み、基礎能力が向上してしまったからだろう。
「ねえレルゲンさん、盗賊団の住処さえ分かれば、私が行くよ」
「……確かに…今や、このアルカナに残る冒険者で一番強い冒険者は、ベルさん、あなただけでしょう、ですが、あまりにも危険すぎます」
「……大丈夫、私はメルがいる限り、死ぬ気も何もないから」
「……ですが……わかりました、あなたに任せます」
「うん、ありがとう」
「それでは、今から残った下級冒険者と調査員達に妖狐のアジトを探させますので、ベルさんはそれまで、ゆっくり休んでください、持ち物などの準備はこちらで行います」
そうして、ベルはメルの待つ部屋に戻った。
メルはまだベッドの上で丸くなって眠っていた、メルが頭を置いている枕が濡れていた。
怖い夢を見たのか、はたまた…、ベルは、眠ったメルの事を抱きしめた、龍の力で死ぬことはない、龍化も、まだ余裕があることが、なんとなくわかる。
だから、メルが独り立ちできるぐらい、パウムスを…殺すまでは、絶対に、人間のままでいる。
ベルは、そう心に決めた。
翌日
「ベルさん、妖狐のアジトが発見されました、場所は、裏カジノのさらに裏に存在していたそうです」
「うん、わかった、ねえレルゲンさん、メルをお願いね」
「ママ……また行っちゃうの?絶対帰ってきてね?」
「うん、絶対に戻ってくるからね」
レルゲンがベルとメルの部屋に来て、妖狐のアジトが発見されたことと、回復薬などの準備ができたことの報告に来てくれた。
ベルは、メルに必ず戻ると約束し、冒険者組合を出た。
渡された依頼書を見て、アジトがあるらしい、裏カジノの場所を確認する、その裏カジノは、アルカナの路地裏にあり、一目見るだけで、ここに来る奴は何かしらの悪い人だということがわかるような、オーラを放っていた。
「ここ…だよね」
「なんだ嬢ちゃん、ここはガキが来る場所じゃねえぞ!」
体のデカい男が、ベルを睨んできた。
おそらくはカジノに入る証的なのを確認する人だろう、名前はわからない。
男はベルを追い返そうと、懐から刃物を出して、脅してくる。
「はぁ…今日、ここを潰しに来た」
「あぁ~???何言ってんだガキ!」
男がガハハと笑っている間に、『鎌鼬』を男の首に当て、スパッと首を飛ばした。そのまま、ベルはカジノの扉を押し開ける、レルゲンのお墨付きで、この裏カジノにいる人間は皆犯罪者扱いなので、デッド・オア・アライブで、殺しても構わないらしい、なので…
「え~、今からここにいる人間全員殺します」
「何言ってんだクソガキ!お前みたいなのが出来るわけねェだろ!」
「あらあら、それにしてもかわいい子ね、あの子捕まえて奴隷にしちゃおうかしら」
「おいおい!あれは先にわしが狙ったんだ、諦めろ!」
「……気持ち悪い……『鎌風』」
ベルがカジノ内に放った『鎌風』が、ベルに近づこうとしていた変に豪華な服を着たババアと、おじいちゃんの腕を斬り落とした。
二人は地面を転げまわり、腕から血を垂れ流していた、その二人の部下だろう男たちが、剣を抜いて襲い掛かってきた。
「てめぇ!!うちのボスに何すんだ!!!」
「ねえ、今まで何人、人を殺したの?多分、何人かは殺してるよね」
襲い掛かってきた男の顔を鷲掴みにし、力を加える。
「ギャーーーーー!!は、離せーーーー!!」
「いいから、答えろ」
ベルはさらに強く掴み、男の頭蓋骨からミシッと音がするほど力を込めた。
「六人だ!!六人殺した!!」
「そう、ありがと、ここにいる人も同じぐらい?」
「そ、そうだ!だから早く離ッ!」
ベルはじたばたと暴れていた男の頭を握り潰し、手に『鎌鼬』を纏った、
ベルは、理由もなく生物を殺すことを、あまり好まなかった、野生での魔獣は、出会った瞬間に命がけの戦いが始まる、そんな世界だ。でも、人間社会では、人間同士の殺しなど、不必要なはずなのだ、それなのに、不必要に人を殺すこの人間達を、ベルは生理的に受け付けられなかった、だから……。
「ここにいる全員を、処刑する」
「「「な、舐めんな~~~~~~!!!!!!!!」」」
カジノにいたボディーガードどもが剣やナイフを抜き、こちらに襲い掛かってくる。
ボディーガードの主人どもはカジノの奥に避難して、酒を飲んでいた。
おそらくは、あの人数では勝てないと舐め腐っているのだろう。
「……腹立つな」
「が、あ、はな、ぜ!」
襲い掛かってくるボディーガードを掴んでは潰し、斬りかかられれば避けて首を飛ばし、単純作業のように、ボディーガードを殺していく。
いつの間にか、ボディーガードは最後の一人となっており、その最後の一人がベルの横を通り抜けて逃げようとしたので、ボディーガードの一人が落としたナイフを拾い上げ、男の頭に向かって投げ、突き刺した。
「あとは、この有機物どものご主人様達だね」
「ヒッ!や、やめろ!!金はいくらでもある!!いくらほしい!金貨五枚か?聖金貨一枚でもいいぞ!!!」
「わ、わしは聖金貨二枚出すぞ!!だからわしだけは!!」
「わ、私は聖金貨一枚と奴隷も付けますわ!!」
「ゴミどもが」
その日の裏カジノでは、金持ちどもの笑い声ではなく、断末魔のみが響いていた。




