負けた兵士たちのその後
ベル達は、ホワイトサーペントとブラックサーペントとの戦いに敗れた。
二体は死に、目標自体は達成したが、その戦場は…勝利した場所とは思えないありさまだった。
非常にまずい…アイツを出してしまった…。
メルはしっかりアルカナに戻れただろうか…、それより、ハーラ達は!?
そう思い、ベルは急ぎハーラ達の部隊が戦闘をしていたであろう場所に向かった、無茶な戦闘をしたせいだろうか、上手く走れず、何度も躓きながら、ハーラ達の元に向かう。すると…。
「うそ…うそうそ!ハーラ!!ラン!!サエラ!!生きてたら返事して!!」
ハーラ達が戦っていた場所は、ブラックサーペントが吐き出した毒の霧により、辺りの草木は枯れ、不毛の大地と、そこに横たわる冒険者達の死体だけになっていた。
「ベル……ちゃん…」
「ハーラ!!よかった!生きてた!!とりあえず、今すぐ毒消し飲んで!!」
「…私は…いいから、ランと、サエラを…あそこの岩陰にいるから…」
「わ、わかった!!とりあえず毒消し置いとくからね!!」
そう言って、ベルはハーラが指を指した岩の影に向かう。
そこには、まだ息はあったが、毒により、顔や胸、足などが溶けてしまった、ランとサエラが横たわっていた…。
「っ…!ラン…ハーラ……っ…!!」
二人がこれ以上溶けないように、二人に毒消しの薬を飲ませ、練習しておいた、回復魔術を二人の体にかける…。なんとか一命を取り留められるほどにまで回復させ、ハーラの元に戻った。
「ハーラ、今すぐ回復魔術かけるからね!死んじゃだめだよ!」
「ベル…ちゃん…二人は…無事?」
「っ…う…うん!二人は無事!だから、絶対に死んじゃだめだからね!二人が泣いちゃうからね!!」
「えぇ…そうね…」
ランとサエラほどではないが、ハーラも、右腕と片目を失っていた…。
これでは、冒険者としての仕事を続けることは不可能だろう。
ベルの脳裏に、ホワイトサーペントを発見しなければ、こんなことにならなかったのではないか。という考えが浮かんでしまう。それでも時間の問題でアルカナは滅んでいた、それはわかる、だが、どうしても受け入れられなかったのだ。
「ごめん…ごめんなさい…」
「ベルちゃん、謝らなくていいよ、私達が弱かったの」
「でも…でも!私が…発見しなければ…2人も…私のせいであんな姿に…」
「…そっか、大丈夫だよ、ベルちゃんのせいじゃないから」
ベルは今、罪の意識で埋もれていた。自分のせいで、ハーラ達があんな姿になってしまった。冒険者としての人生を終わらせてしまった。ハーラ達の体に、消えない傷をつけてしまった…。そんな、罪の意識に埋もれてしまっていた。
ベルが俯いていると、ハーラが立ち上がり、ランとサエラの元に歩き出した。
「まっ、待って!」
「…ラン、サエラ…ごめんね、守れなかった」
「…あ〜、命があるんだ…まあ、こんな顔になっちまったが」
「…は、はは、そうです…ね、それでも…愛してくれるんでしょう?」
「ふふ、もちろん、2人がどんな姿になっても、私の可愛い彼女達だからね」
「とりあえず…アルカナに戻るか」
「そうですね、私達も治療を受けないと…」
「私が3人を運ぶよ…」
そうして、ベルは3人をおんぶや抱っこして、アルカナに向かって歩き出した。
その最中に、モノクロスや、龍化が進んでしまった話を、3人に報告した。
「そっか…ベルちゃんが倒してくれたのね」
「ううん…私じゃない…」
「私じゃないって?」
「べるちゃんが倒したんじゃないんですか?」
「うん…3人には…話そうかな」
ベルは、3人に、例のベルではない何かの事を話した、あれが生まれた原因、あれが何故あそこまでの力を持つのか、あれの恐ろしさ、その全てを、3人に話した。それはおそらく、罪の意識や信頼から喋ってしまったからなのだろう。
「ベルちゃん、ごめんね、私達の力が無くて…辛いことをさせてしまった」
「そうだな、私達がもっと強ければ…」
「私も…ベルちゃんに申し訳ないです…」
「違う!3人のせいじゃないよ、私が…弱いから…」
そう言ったベルのことを、3人は抱きしめた。罪の意識で潰されないように。ベルは、とっても心が弱い子だと、3人は気づいていたから。
「…メル…大丈夫かな…」
「メルちゃん?」ハーラが言った
「メルに生きてた冒険者をアルカナまで運んでもらったの、もし…行くまでの間に何か魔獣に襲われてたら…」
「大丈夫だろ、メルちゃんは強い」
「そうですよ!メルちゃんならきっと無事です!」
「ほんとに、ベルちゃんはとってもいいお母さんね」
「…私は…いい親じゃないよ、約束を破ろうとしちゃったから…」
「でも…守ったでしょ?」
違う…約束を守ったのは…アイツだ、ベル自身は、自ら命を捨てて、メルを…1人にしようとしてしまった。
自分でも強く思う、ベルは…毒親だって…。
「私は…守ってない…アイツが約束を守ってくれた…」
「それでも、結果的には約束を守ったんだから、自分を許してあげて?メルちゃんも、元気なベルちゃんの方が嬉しいよ」
「…そうだと…いいな〜…」
そうして、ベルは3人を運び、アルカナまでたどり着いた。
アルカナに入る前に、急成長してしまった角と羽、爪を魔術でどうにか隠した。総勢60人の部隊は、今や、生き残ったのは9人だけだった、亡くなった51人の冒険者達には、家族がいた人も居ただろう、そんな人達を…ベルは巻き込んでしまった…。
アルカナの東門を潜ると、そこには、討伐隊に入ってくれた冒険者達の家族が、帰ってきてくれるのを、待っている、そんな状態だった。
「ベルさん!!ハーラさん、ランさん、サエラさんも!よくぞ…よくぞご無事で…」
「レルゲンさん…ごめん…ごめんなさい…51人も…」
「…冒険者とは、命をかける仕事です、皆、依頼を受ける時、どんな簡単な依頼でも、死ぬ覚悟を持って、依頼に挑みます、これは、あなたのせいじゃない、ベルさんが恨むべきは、冒険者達を殺した、ホワイトサーペントとブラックサーペントですよ」
「そう…なのかな…」
ベルに話しかけてきたのは、アルカナ冒険者組合の組合長、ハーフエルフのレルゲンだった。
レルゲンは、ホワイトサーペントとブラックサーペントの討伐部隊60人を集めてくれた人だ。
レルゲンが言ってくれる、優しい言葉は、ベルに響く、それでも…ベルの心の傷が、癒えることは無かった。目の前で、夫や息子、娘が帰ってこず、絶望の表情を見せる、冒険者達の家族達、その姿が、ベルの心を蝕んでいたからだ。
「レルゲンさん…メルは…生きてた冒険者を運んできた黒髪の子供は…いる?」
「メルさんですね、はい、メルさんとはどのような関係で?」
「私の娘…生きてるん…だよね?無事?」
「はい、傷一つありません、あの人のおかげで5人の冒険者が救われました」
「そっか、あの人達助かったんだ…早く、メルに会わせてくれる?」
「えぇ、もちろんです、こちらに」
レルゲンに案内され、冒険者組合の建物の中に入り、ハーラとラン、サエラをまず医務室に運び、メルの待っている、客間に向かった。
メルの待つ客間の扉を開け、部屋に飛び込む。
「メル!!!」
「ママ!!ママ…良かった…生きてた…」
「ごめんね…ごめん…心配かけたね…」
「ううん!ママ…約束守ってくれたもん!!ねえ…ママ、約束…最後まで守って?」
「っ…!うん!」
ベルは約束の通り、メルをいっぱい、強く抱きしめた、二度と離さないように、どこにも行かないように、メルを…一人ぼっちにしないように、メルを悲しませないように、強く…強く抱きしめた。
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