混合魔獣モノクロス
片腕を吹き飛ばされたベル、そして、さらなる絶望として、ベルの目の前にホワイトサーペントとブラックサーペントの二体が揃ってしまう。
腕を吹き飛ばされたベルの目の前に、さらなる絶望が舞い降りた。
ハーラ達が食い止めていたはずの、ブラックサーペントがベルの目の前に現れてしまった。
「な…なんで…ハーラ達が食い止めてるはずじゃ…」
「ま…ママ…あれ…!」
メルが指さした方向を見ると、ブラックサーペントが通ってきた場所にあった木々がなぎ倒されており、その方向を見ると、ブラックサーペントの相手していた部隊が…壊滅していた。
「う…うそ…ハーラ達が…」
「ま、ママ!!腕が!!」
ハーラ達のことが気になって意識していなかったが、飛ばされた腕の断面が、再生と溶けるを繰り返していた。
「クソ!!」
そう言いながら、腐食と再生を繰り返す肩を切り落とし、再生を再開させた。
ベルは辺りを見渡す、総勢30人も居た冒険者達は今や生存者10名、その10名も重傷を負い、戦闘が不可能になっている…更にはハーラ達の部隊すらもおそらく壊滅していた。
「…メル、生きてる人達を担いでアルカナに戻れる?」
「出来る!……けど、ママは?」
「ママはアイツらをここに留めないと、ね?おねがい、私の可愛いメル」
「………絶対、絶対帰ってきてね!それでいっぱいぎゅー!ってしてね!」
「うん…約束」
「絶対だからね!!」
メルはそういうと、気絶してるか四肢を欠損してもだえ苦しんでいる冒険者数人を担ぎ、アルカナまで走った。
アルカナまで逃げているベルに向かって二体がブレスを吐き出そうとしていたが、ベルが許すはずもなく、『影棘』を地面から生やし、二体の顎を強制的に閉じさせる。
「私のメルに手を出すな!!……ごめんね、メル…約束は守れないかも」
二体の視線をこちらに向かせ、メルが逃げる隙を作り出した。メルはしっかり約束を守り、振り向くのを我慢して、アルカナまで走ってくれた。
本当に、ベルにはもったいないほどのいい子だ、約束を守ってくれたのに、ベルは生きて帰って、いっぱいぎゅーをする約束すら、守れないのだから。
「ママとして…娘を守らないとだからね……!」
ブラックサーペントとホワイトサーペントの二体に、接近戦で勝負を仕掛ける、両腕に『鎌鼬』を装備し、二体の顔を斬りつける。
だが、逃げていた時に確認したのと同じで、硬い鱗にはじかれた。
その大きな隙をつかれ、また腹に風穴を開けられてしまった。
「ゲホ!クッソ……!『火球』!!」
腹が腐食して修復を阻害されていたので、腹に開いた傷を焼き、毒を消し去る。
そんな、命がけの戦いをしている最中も、ベルの頭の中に声が響いていた。
(なあなあ、ほんとに死ぬ気か?メルを置いて?とんでもない毒親だな~)
「うっさい!!黙ってろ!!」
(俺なら約束を守れるのにな~)
「そんなのわかってんだよ!!いいから黙ってろ!!!」
頭に響く声と話しながらも、毒の弾を避け続ける、それでも鱗に傷一つつけられない…
(ま、変わるのは時間の問題か)
「……っ!」
(お前のせいでクソみたいな状態なんだ、俺に全部押し付けやがって)
「うるさい…うるさいうるさい!!『絶対零度』!!!!」
怒りに任せて、『絶対零度』を放った。だが、それが大きなミスとなった。
ホワイトサーペントとブラックサーペントには全く効果がなく、発動の大きな隙を見逃さず、尻尾を横っ腹にぶつけられ、上半身と下半身が切り離されてしまった。
「あっ…がっ!?」
(クハッ!さあて、俺のターンだ)
脳内の声がそう言うと、上半身から血がタコの触手の様に伸び、無理やり上半身と下半身を繋げた。そして、回復が終了すると、ベルの背中に大きな銀色の…白銀の龍と同じような翼が生え、腕も、龍の爪が生えた。
皮膚の一部が銀色の鱗に覆われ、小さかった角が、立派な、大きな角に変化した。その見た目は、人の形をした龍となっていた。
「あ~~~、たっく、やっと自由だ、と言っても…すぐに戻ることになるんだが……とりあえず、メルとの約束は守らねえと、泣いちまうしな」
ベルは、見た目だけでなく、口調すらも変わっていた。その喋り方はまるで、生まれ変わる前の、前世の口調だった。
「どれ…黒蛇から仕留めるか…『黒星』」
ベルではない何かが、ブラックサーペントに手の平を向け『黒星』と唱えると、手に魔法陣が出現し、ブラックサーペントの目の前に、ブラックホールのような物が現れ、ブラックサーペントの体を引きずり込もうとしていた。
「ふむ……流石はA級、雑魚でもこれぐらいは耐えるか、なら『収束熱線』」
再度、ベルではない何かの手の平に、魔法陣が現れ、そこから、以前ベルが雷龍に放った『収束熱線』とは比べ物にならない『収束熱線』が放たれた。
その『収束熱線』が、ブラックサーペントの頭部に命中し、頭が消し飛んだ。
その断面は、キレイに焼き切られ、『収束熱線』の温度を物語っていた。
「…っと、なんだ、死体でも合体できるのか」
地面に倒れたブラックサーペントの体を、ホワイトサーペントが食っていた。
そして、ブラックサーペントの体をホワイトサーペントが胃に送るたびに、ホワイトサーペントの体に、黒い文様が現れていく。
だが、そんな隙を逃すはずもなく、再び『放射熱線』を放ったが、今度は尻尾で軽く弾き飛ばされてしまった。
「……ほむ、『絶対防御』か、魔獣風情が魔術を使いやがって」
捕食中は絶対防御を使っているせいで、止めることが出来ず、ホワイトサーペントがブラックサーペントと合体してしまった。
ベルの目の前にいたホワイトサーペントは、もうホワイトサーペントではない。伝承で聞く魔獣、混合魔獣モノクロスに進化を遂げてしまった。
その見た目は、二つの頭と、白と黒の文様が混ざった体、その鱗は更に硬度を増し、体が少し小さくなったことで、俊敏性が上昇していた。
「ふむぅ……確かに、普通の騎士達じゃ、止めることもできずに、国が滅んじまうわけだ、どう倒すかな~」
先ほど放った『収束熱線』じゃ、今や傷をつけることも出来ないだろう。
そして、省略詠唱なんかでは、倒すことは夢のまた夢…詠唱をすべて行うとなると、まずは動きを封じなければならない…。
「う~~~む、省略詠唱で動きを封じるのも無理かな~」
そんな考え事をしていたせいで、モノクロスが口からより強力となった、強酸性の毒をベルではない何かの両腕に命中させ、溶かされてしまった。
「イッタ……はあ、めんどくさ…!」
魔力を溶けた腕に集中させ、毒を無視して、修復能力を強引に上昇させ、無理やり修復させた。
それでもモノクロスは、毒が効かないと分かり、ベルではない何かに突っ込んできた。
ベルではない何かは、突っ込んできたモノクロスの二本の首を鷲掴みにし、魔術を行使した。
「はぁ~~~~…舐めんな蛇風情が『時間停止』」
その唱えた瞬間、ベルではない何か以外の時間が止まった、『時間停止』とは、時間系魔術の1つである。
ベルではない何かでも、時間停止ができるのは10秒程度、それでも、詠唱には十分だ。
「炎よ、我の手に集まり、我が敵を貫け『収束熱線』」
今度は、先ほど行った『収束熱線』とは比べ物にならない魔力を魔法陣に詰め込み、『収束熱線』を放つ。放たれた『収束熱線』は、モノクロスの二つの首の付け根に撃ち込み、同時に二本の頭部を破壊した。
「……そろそろか、チッ、久々の自由も終わりか~」
(…え…、か…せ…返せ!!!!)
ベルは、自らの体を取り返し、目を覚ました。
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