磁場を纏う龍の古巣
ベルはいつものように長い白髪を揺らし、みすぼらしい服を着て、魔術袋を背負って歩いていた。今歩いている場所は龍の古巣と呼ばれるとても大きな谷、縦にまっすぐとても高い岸壁が囲んでいる世界でも二、三位を争う広く高く深い谷である。ついさっき、森龍サーヴァルとの会話で、傷を負うのは避けた方がいいことが判明したため、この龍の古巣の中にある村、ラトルに向かっていた。
「ラトルは確か武器防具を作ることで生計を立ててる鍛冶師の村だからいい防具があるはず!」
ラトルは鍛冶師の村と呼ばれるほど、武具の生産が盛んな村である、その理由は、龍の古巣で採れる鉱石が理由である、磁石のように磁場をもっており、電気を溜め込む性質のある特殊な鉱石、無論、武具としての性能も折り紙付き、魔術を主に使うベルにはかなりほしい品である、雷属性の魔術で防具に電気を溜める、そんな使い方が出来るからである
「それにしても…髪の毛がずっと浮き上がってるな…それだけ磁場とか静電気が強いのかな」
そんな事を考えて、大岩を通り過ぎると、その岩が、がたんと揺れ、起き上がる
「うげ!!ロックゴーレム!!!」
ベルが出くわしたのは薄茶色の石で体が形成された魔獣、ロックゴーレム。とても大きな体格と岩でできた硬い皮膚、倒す方法は人間でいう心臓部分にある核を破壊することなのだが…
「うーーーん、岩だから雷属性も風属性もたぶん効かないだろうし…爆発系…あ、ラントの『爆炎刀』…ふふ、ラント、少し使わせてもらうね『妖刀村正』!」
村正に手をかざし、イメージする、刀身に炎を纏わせ圧縮、触れた瞬間に爆発するイメージ…
「『爆炎刀』うん、ラントのやつ改良しちゃったけど許してね、それじゃあ、やろうか!ロックゴーレム!!」
ロックゴーレムが腕を振りかぶり、ベルに向かって真っすぐ殴りかかってくる、それを飛んで交わし、ロックゴーレムの首目掛け刀を振る、すると触れた瞬間に爆発が起こり、ベルの体が谷の壁に吹き飛ばされる
「おっとと、思いのほか威力が出たな…でも、その分ダメージは出たでしょ」
ベルはくるりと回転し、壁への衝突を間一髪で回避した
ロックゴーレムの首は爆発により吹き飛びごとりと落ちていた、だがロックゴーレムは吹き飛んだ部分から粘性の液体を出し、接合を試みていた。だがそんな隙を見逃さず、ベルは再び飛びかかる、今度は爆発で露出していた核目掛けて刀を振るい、一度爆発したせいで爆発は起こらなかったが核に衝撃を与えたことにより、ロックゴーレムの体はボロボロと崩れていった
「ふう、なるほどね~、一回爆発すると二回目はもう一回かけなおさないとだめなのか、っと、回収忘れてた、ロックゴーレムの核!確かロックゴーレムはBランクだから、これもそこそこの値段で売れるはず!防具の足しにしよっと♪」
そうして、ベルはロックゴーレムの赤く輝くコアを魔術袋に入れ、再び歩き出す、しばらく歩くと、空を鳥型魔獣が円を描くように飛んでいた、つまり、何かが死にかけている、人間だった場合まずいので、ベルはそこに急いで向かった、鳥型魔獣の真下に着くと複数人が火を囲んで死にかけていた、その手には怪しげな色のキノコが入ったスープがあった
「えっと、確かこのきのこって食べると魔力が吸い取られて魔力切れになっちゃう奴だっけ…」
野垂れ死にかけているこのパーティーが食べたキノコは確か別名「魔力食い」食べると逆に魔力を食べられてしまうキノコだ、対処法は確か…
「魔力を渡せば治るんだっけ…えっと…やだな~」
魔力を渡す方法、それは接吻である、手つなぎなどでも渡せるが、微量すぎて今にも死にかけているこのパーティーにはそれでは間に合わないだろう
「うぅぅぅぅぅ…せ、せめて女の人がいい…男は…タイプじゃないし…」
ベルはパーティーを見渡す、この野垂れ死にかけているパーティーは五人編成らしく、男が二人、女が二人、男の娘が一人、ずいぶんと特殊なパーティーである、男の娘はなぜわかったのかというと、喉仏があったからである。そして、ベルは如何にも魔法使いという見た目の紫髪で魔女帽子にローブのお姉さん系に決めた
「こ、この人なら…うぅ…ファーストキスが…ん?あ!」
ベルはあるキノコを見つけた、それはガーデンマッシュルーム、それを食べると魔力回復を手伝う効果がある、つまり、手つなぎでも十分魔力が回復し、目覚める…はず!!ベルはガーデンマッシュルームを地面からもぎ取り、潰して、紫髪の女の口に無理やり流し込む
「お願い起きて!!!まだキスは残しておきたいの!!!」
「ん…んん?あ、れ…私…何を」
「あ!起きた!じゃあ残り全部飲んで!!!!」
目覚めた紫髪の女の口に、ベルは無理やり潰したガーデンマッシュルームをぶち込む、女がじたばたするのも気にせずとにかく女の胃に流し込む
「もぐぐぐぐぐぐ!!!!ぶは!何するのよ!!!!」
「はぁ~私のファーストキスが守られた~」
「ふぁ、ファーストキス!?いったいなんなの?!」
「あなた達このきのこ食べて魔力切れで死にかけてたの」
「え、あ、確かに魔力が残り少ない…」
なんて馬鹿なパーティーだろうか、知らないキノコを口にするなんて、それほど食糧難で死にかけていたのだろうか
「なんでこのきのこ食べたの?」
「えっと~、あ、味変?」
「と、とにかく!残りの人達起こしてあげて!」
「え、お、起こすって、き、キスで?い、いやよ!!あなたがやってよ!」
「いやだよ!なんで知らない人にキスしないといけないの!」
そんな言い合いを数分したが、そろそろヤバいとなり、紫髪の女がいやそうな顔をしながらキスをし、なんとか全員助かった




