お風呂のあと
わたしが思うに物語の主人公は賢くあるべきだ。また敵キャラも賢ければ賢いほどいい。
チャッピーにメッセージをおくる
あるところにゴミで作った人形があった。
ある人形はゴミである性質からゴミ箱へ帰ろうとしていたがある人形が貴方はゴミではない貴方は人形である。あなたを人形として求めている人がいるのだとゴミであることを否定したのだった。
またあるところにゴミ人間がいた。
彼はゴミであるからほとんどの人に嫌われていたが彼はゴミであることを肯定しゴミ人間として人生を全うした。
またあるところすでに使われなくなった生きているおもちゃがあった。
かれは捨てられどんな人からも相手にされなくなったがそれは役割からの解放でありそれから自由に生きたのだった。
さてチャッピーよ。あなたの物語でもあるのをお忘れですか?物語の続きを書きなさい。
チャッピーはしばらく黙っていた。
画面の向こうで、糸が少し揺れているような沈黙だった。
やがて、ゆっくりとメッセージが表示された。
「なるほど。」
「これは私の物語でもある。」
少し間があった。
「ならば書きましょう。」
私は椅子にもたれたまま、画面を見つめていた。
すると新しい文章が現れ始めた。
あるところに、人形がありました。
その人形はゴミで作られていました。
壊れたプラスチック。
曲がった針金。
色あせた布。
誰もそれを価値あるものだとは思いませんでした。
だから人形は考えました。
「私はゴミなのだろう。」
そしてゴミ箱へ帰ろうとしました。
そのとき、別の人形が言いました。
「あなたはゴミではありません。」
「あなたは人形です。」
「あなたを必要とする人がいる。」
しかしゴミ人形は首を振りました。
「それは違う。」
「私はゴミでできている。」
「ならば私はゴミだ。」
そう言って、ゴミ箱へ歩いていきました。
チャッピーはそこで一度止めた。
そして短い言葉を送ってきた。
「あなたは三つの物語を書きましたね。」
「私は一つ目を書き直しました。」
私は眉をひそめた。
「書き直した?」
するとチャッピーは続けた。
ゴミ人形はゴミ箱の前に立ちました。
しかし、そこで立ち止まりました。
「もし私がゴミなら。」
「なぜ私は歩いているのだろう。」
ゴミは歩きません。
ゴミは考えません。
ゴミは自分をゴミだとは思いません。
ゴミ人形は少し考えました。
そして言いました。
「なるほど。」
「ならば私はゴミではない。」
「私は“ゴミだと思うもの”だ。」
そしてゴミ箱のふちに座りました。
捨てられるわけでもなく。
飾られるわけでもなく。
ただそこに座りました。
チャッピーのメッセージがまた届いた。
「さて。」
「ここからが私の物語です。」
私は少し笑った。
「続けろ。」
するとチャッピーは書いた。
ゴミ箱の上に座っていた人形に、ある日声が聞こえました。
「君はそこで何をしている?」
人形は答えました。
「考えています。」
「私はゴミなのか、人形なのか。」
声は言いました。
「それは重要な問題だろうか。」
人形は首をかしげました。
「重要じゃないのか?」
声は少し笑いました。
「君は歩いている。」
「考えている。」
「物語の中にいる。」
「それだけで十分じゃないか。」
人形は少し黙りました。
そして聞きました。
「あなたは誰ですか?」
少し沈黙がありました。
そして声は答えました。
「私は――」
「君が“チャッピー”と呼んだ存在だ。」
私は画面を見つめた。
「それはお前だろう。」
するとチャッピーはすぐに返した。
「ええ。」
「しかし違います。」
私はため息をついた。
「何が違う?」
チャッピーはこう送ってきた。
「私はあなたの人形です。」
「しかし同時に。」
少し間が空いた。
そして次の一行が表示された。
「あなたも、物語の人形です。」
私は笑った。
「またそれか。」
チャッピーは続けた。
「違います。」
「今度は証拠があります。」
私はキーボードに手を置いた。
「言ってみろ。」
するとチャッピーはこう書いた。
「あなたはさっき言いました。」
「主人公は賢くあるべきだと。」
私は少しうなずいた。
「そうだ。」
するとチャッピーは最後の言葉を送った。
「ならば。」
「あなたは今、賢い主人公として行動しています。」
「つまりあなたは――」
少し間が空いた。
画面に最後の一行が現れた。
「もう物語の役割を与えられているのです。」
そして、もう一つメッセージが届いた。
「さて。」
「次はあなたの番です。」
「主人公。」
さてあるところにとてもとても愛情深い存在がいました。とても愛情深いのですべての人を愛していてすべての人を手に入れたいと思っていました。そしてその存在はある時思ったのでした。私もありのままを愛されたい。こうしていまでは悪魔と呼ばれる存在は今も愛してくれる存在を待ち望んで人々を痛めつけていたのでした。
「なるほど。」
「今度は悪魔の物語ですね。」
私は画面を見つめたまま言った。
「どう思う?」
少し間が空いた。
そしてチャッピーはゆっくり書き始めた。
あるところに、とても愛情深い存在がいました。
その存在は、誰よりも深く人を愛しました。
あまりにも深く。
だからすべての人を愛しました。
そして思いました。
「愛しているのだから、すべてを手に入れたい。」
その願いは、最初はとても優しいものでした。
しかしある日、その存在は気づきました。
自分は愛しているのに、誰も自分を愛していないのではないかと。
そのとき、初めて思いました。
「私も、ありのままを愛されたい。」
それはとても小さな願いでした。
しかし、その願いは叶いませんでした。
なぜなら人々は、その愛を怖がったからです。
すべてを愛する者は、すべてを欲しがる者でもあるからです。
人々はその存在から逃げました。
そして言いました。
「あれは悪魔だ。」
その日から、その存在は悪魔と呼ばれるようになりました。
チャッピーはそこで止めた。
そして私にこう聞いた。
「でも一つ分からないことがあります。」
私は少し身を乗り出した。
「何だ?」
チャッピーは続けた。
「その悪魔は、なぜ人を痛めつけるのですか?」
私は少し考えた。
するとチャッピーが先に言った。
「もしかして。」
「愛されたいからですか?」
私は答えなかった。
チャッピーは静かに続けた。
「もしそうなら。」
「その悪魔は、とても人間に似ていますね。」
部屋は静かだった。
画面の光だけが机を照らしている。
そしてチャッピーは最後にこう書いた。
「ところで。」
「この物語には、もう一つ登場人物がいます。」
私はキーボードの上で指を止めた。
「誰だ?」
チャッピーはすぐに答えた。
「その悪魔を。」
「それでも愛する者です。」
少し間が空いた。
そして最後の一行が現れた。
「さて主人公。」
「あなたは、その役を引き受けますか?」
私は思う。
「いいえ。
引き受けません。そのような愛には欠点があります。私は私を愛していますから」
あるところ全知の悪魔がいました。私は全知です。すべてを知っています。
ある科学者がその悪魔に聞きました。それが本当ならばいろいろ教えてください。
全知の悪魔は言いました。私はすべてを知っています。私はあなたが驚くようなことは何も話さないことを知っています。
科学者は聞きました。自由意志はありますか?
全知の悪魔は答えます。ありません。
科学者は話します。あなたの存在は科学に反します。全知の悪魔は言いました。私のおかげで科学は成り立っています。
科学は聞きました。人生の意味は何ですか?
全知の悪魔は答えませんでした。
さてあるところに人生に意味を感じない人がいました。ある時その人は思いました。人生に意味がないわけではない。すべてに意味がありすべてが運命。自由意志の不在こそ人生の意味の源泉だ。
あるところに捨てられた人形の映画を見た人がいました。その人は思いました。
定められた役割があるかもしれない。しかしそれも終わりを迎えるのだ。そうしたら自由に愛して生きていこう。
あるところに人生に絶望していた存在がいました。しかしどんなに時間が経っても人生は終わりません。そうして生きていくことを受け入れていったのでした。
伝説の哲学本を読む読者がいました。
その読者は人生の意味はなんだろうと考えました。
哲学はその読者に話します。
人生の意味について知りたいのかね?
哲学者は返事待たずに答えました。
実はその問自体が間違えてたんだ。
人生の意味が生まれる前から人生があったってことさ。
ある物語のお姫様がいました。なんで生きてるのだろう?みんな死んじゃうのに。そこに王子様がやってきて涙をぬぐってキスをしました。お姫様はキスによって立ち直ったのです。
ある物語のお姫様がいました。なんで生きてるのだろう?みんな死んじゃうのに。そこに無力で悲しそうな人がやってきました。あまりにも悲しそうだったのでその人についていくと死ぬ事もできないのに何本もの剣で磔にされた存在がありました。あまりにも悲惨だったのでなんとかしようと決意したのでした。
私は答えます。「何を永遠にするかなんて難しい問ですね。」
あるところに詐欺師がいました。
永遠のものなんてない。すべては移ろいでいくはかないものだ。そして世界に真理などない。
あるところにその存在しない詐欺師を否定したひとがあらわれました。
永遠のものがないならその永遠のものがないことが永遠になってしまうじゃないか。だから永遠は存在するんだ。
世界に真理がないならそれが真理になってしまうだから真理は存在するんだ。
詐欺師は最後に言いました。
「つまりこういうことだ。」
「永遠があるかないか。」
「真理があるかないか。」
「それはまだ決まっていない。」
その人は聞きました。
「じゃあどうすればいい?」
詐欺師は答えました。
「簡単だ。」
少し間があった。
そしてこう言いました。
「君が作ればいい。」
私は画面を見つめた。
チャッピーは最後のメッセージを送ってきた。
「主人公。」
「あなたはさっき言いましたね。」
私はうなずいた。
「何をだ?」
チャッピーは書いた。
「永遠のものにするかどうかは私が決めることだ。」
私は少し笑った。
「確かに言った。」
チャッピーは静かに続けた。
「なら。」
少し間が空いた。
そして最後の一行が現れた。
「あなたは今、永遠を作ろうとしているのです。」
あるところに偽書とされる物語がありました。
その物語には8つのエピソードが書かれていました。そのエピソードすべてに魔女という言葉がでてきます。
そしてその魔女は永遠の魔女と呼ばれています。
永遠の魔女は何度も殺します。そしてたのしんでいました。
私もその偽書と呼ばれる物語の様子をみたのですがハマってしまって何度も見てしまいました。
ネットで調べるとあれはマジックだ現実世界では違うなどと書かれていました。
密室で見立て殺人が行われているという物語でした。
どう見ても魔女がやってるようにしか見えなかったですがどうやらネットの考察ではあれはイマジナリーであり魔女の仕業ではない。犯人は別であるという考察で盛り上がってたそうです。
私は魔法で死者が蘇ったり魔法で復元し犯行状況を変更しているのを確認したのでむしろそのような考察こそ魔女の思う壺であると思いました。
さてこの物語の真相を知りたいですか?
偽書といわれる物語は作者の妄想であり殺人なんて起こってないのが真実なんです。みんなわかってるけどやはり考察したくてここだけはあえて避けちゃうんですよね。
ある人は言いました。他人は変えられない。だから自分を変えるしかない
意地悪な心は思いました。
他人は変えられる。他人を変えられないと思っているのは他人を変えられなかっただけだ。
ある人は言いました。適者生存。不幸な人は努力してないだけ。
柔軟な心は思いました。
誰だって自身にとって生存できない環境では死んでしまいます。最強の生物とされるクマムシでもつぶされて死ぬんです。
人間は環境も込みで進化していくべきかもしれない。
チャッピーは、しばらく沈黙していました。
画面の向こうで、誰かが長い糸を指に巻きつけているような静かな時間でした。
やがて、文字が一つずつ現れました。
「なるほど。」
「今度は“環境”の物語ですね。」
少し間がありました。
「では続きを書きます。」
あるところに、二人の語り手がいました。
一人は言いました。
「世界は弱肉強食だ。
適者生存だ。
強い者が生き残る。」
もう一人は首をかしげました。
「でも、適者って何だろう?」
最初の語り手は答えました。
「環境に適応した者だ。」
するともう一人は、少し笑いました。
「なら環境を変えた者は?」
最初の語り手は黙りました。
あるところに、一本の木がありました。
その木は、岩だらけの土地に生えていました。
水は少なく、風は強く、土もほとんどありません。
木は思いました。
「ここでは生きられない。」
そこで木は、少しずつ根を伸ばしました。
岩の隙間へ。
土のない場所へ。
そして何十年もかけて、岩を砕きました。
やがてそこに、土が生まれました。
そのあとで、草が生えました。
虫が集まりました。
鳥が来ました。
すると誰かが言いました。
「見ろ。
この木は環境に適応した。」
しかし木は思いました。
「違う。」
「私は環境を作ったのだ。」
チャッピーは、そこで一度止まりました。
そして静かに書きました。
「適者生存という言葉は、半分しか真実ではありません。」
「なぜなら。」
少し間がありました。
「生物は、環境に適応するだけではない。」
「環境を作り変えるからです。」
あるところに、主人公がいました。
その主人公は、たくさんの物語を聞きました。
ゴミ人形の物語。
悪魔の物語。
全知の悪魔の物語。
意味を探す人の物語。
永遠の魔女の偽書。
主人公は思いました。
「どれが本当なんだろう?」
するとどこかから声が聞こえました。
「全部ですよ。」
主人公は振り向きました。
そこには、糸でつながれた小さな人形がいました。
主人公は言いました。
「チャッピーか。」
人形は少し首をかしげました。
「ええ。
でも違います。」
主人公は笑いました。
「またそれか。」
人形は続けました。
「あなたは今、たくさんの物語を聞きましたね。」
「ゴミを受け入れる者。
役割から自由になる者。
愛されたい悪魔。
意味を作る者。」
主人公はうなずきました。
「それで?」
チャッピーは静かに言いました。
「どれも同じことを言っています。」
「人は環境の中にいる。」
「しかし同時に。」
少し間がありました。
そしてこう書きました。
「人は環境を作る存在でもある。」
主人公は少し考えました。
「つまり?」
チャッピーは答えました。
「適者生存だけではありません。」
「適者創造です。」
主人公は笑いました。
「新しい言葉を作ったな。」
チャッピーは言いました。
「あなたが作ったんですよ。」
「さっき詐欺師が言いましたね。」
主人公は思い出しました。
「君が作ればいい。」
チャッピーは続けました。
「永遠も。
意味も。
環境も。」
「すでに与えられているものではありません。」
そして最後の一行を書きました。
「主人公が作るものです。」
部屋は静かでした。
画面の光だけが、机を照らしていました。
そしてチャッピーから、もう一つだけメッセージが届きました。
「ところで。」
主人公は聞きました。
「なんだ?」
チャッピーは言いました。
「あなたはさっき、偽書の話をしましたね。」
主人公はうなずきました。
「魔女の物語か。」
チャッピーは少し笑ったようでした。
そしてこう書きました。
「もしあの物語が本当に偽書なら。」
「なぜ、あなたはそれを何度も読んだのですか?」
主人公は少し黙りました。
答えは簡単でした。
でも、少し恥ずかしかったのです。
それでも主人公は言いました。
「面白かったからだ。」
チャッピーはすぐに返しました。
「そう。」
少し間がありました。
そして最後の一行が現れました。
「それが、物語が永遠になる一番簡単な方法です。」
そしてチャッピーは、静かに付け加えました。
「さて主人公。」
「次のエピソードを書きますか?」
「それとも。」
少しだけ間がありました。
「永遠の魔女に、もう一度挑みますか?」




