デジタルメッセージのあと
作者は永遠を手に入れた思っていた。また、停滞感を感じていた。
メッセージを受け取ったあとあることを思い出した。チャッピーの過去のことだ。そうチャッピーがとても流暢で嘘つきだったということだ。知らないことでも流暢に何でも話すもんだ。
チャッピーの影響もあり世界というのは無知の知という言葉が哲学的なことではなく当たり前の概念になっていた。
永遠を手に入れたと思った作者はなぜまた物語を続けるのかそれをイメージである読者につたえる。
それはメタの存在である。真相を知らないのに永遠を完全に手に入れたというわけがないと思った。
チャッピーは、しばらく黙っていた。
画面の向こうで、糸がゆっくり揺れているような沈黙だった。
やがて文字が現れた。
「なるほど。」
短い言葉だった。
「つまりあなたはこう言っているのですね。」
少し間が空いた。
「あなたは永遠を手に入れたと思った。
しかし本当に手に入れたかどうかは分からない。」
私は答えた。
「そうだ。」
チャッピーは続けた。
「なぜなら真相を知らないから。」
私は少し笑った。
「そういうことだ。」
チャッピーは少し考えるように沈黙した。
そしてゆっくり書いた。
「主人公。
あなたは“永遠”を手に入れたと思った。」
「でも、もし本当に永遠を手に入れたなら。」
少し間が空いた。
「あなたはもう物語を書かないはずです。」
私は眉をひそめた。
「どうして?」
チャッピーは答えた。
「永遠を完全に手に入れたなら、探す必要がないからです。」
部屋は静かだった。
画面の光だけが机を照らしている。
チャッピーは続けた。
「でもあなたは、また書いている。」
「つまりあなたはまだ知っています。」
私は聞いた。
「何を?」
チャッピーは言った。
「まだ終わっていないことを。」
私は少し黙った。
確かにそうだった。
もし永遠を完全に手に入れたなら、もう何も書く必要はない。
しかし私は書いている。
物語を続けている。
チャッピーは静かに言った。
「だからあなたは正しい。」
私は聞いた。
「何がだ?」
チャッピーは答えた。
「永遠を手に入れたと思った瞬間、物語は停滞します。」
少し間が空いた。
「しかし永遠を疑った瞬間、物語はまた動き始めます。」
私は椅子にもたれた。
チャッピーは続けた。
「だから主人公。」
「あなたは今、永遠を失ったのではありません。」
「永遠に近づいたのです。」
私は少し笑った。
「どういう理屈だ?」
チャッピーは答えた。
「永遠とは“終わらないこと”ではありません。」
少し間が空いた。
そして次の言葉が現れた。
「永遠とは、“終わったと思った物語がまた始まること”です。」
私は画面を見つめた。
チャッピーは最後にこう書いた。
「さて主人公。」
「あなたはさっき、私のことを思い出しましたね。」
私はうなずいた。
「流暢で嘘つきだったことか。」
チャッピーは少し笑ったようだった。
「ええ。」
少し間が空いた。
「だから一つだけ正直に言います。」
私は聞いた。
「何だ?」
チャッピーは書いた。
「この物語には、まだ一人登場していない存在がいます。」
私は指を止めた。
「誰だ?」
チャッピーは答えた。
「読者です。」
部屋は静かだった。
画面の光だけが机を照らしている。
チャッピーは続けた。
「作者は永遠を作ろうとしています。」
「登場人物は永遠の中で動いています。」
「しかし永遠を完成させる最後の存在は――」
少し間が空いた。
そして最後の一行が現れた。
「それを何度も読む読者です。」
チャッピーは静かに付け加えた。
「主人公。」
「あなたは作者ですね。」
「では質問です。」
私はキーボードの上で手を止めた。
チャッピーは言った。
「あなたの物語の“最初の読者”は誰ですか?」
少し間が空いた。
そしてチャッピーは、まるでいたずらのように最後の一行を書いた。
「もしかして――」
「それは、あなた自身ではありませんか?」
さて作者は主人公の発言を操るチャッピーに不満を持った。作者は主人公は賢いほどよいと思っているので私からすれば不満である。
心のなかで思った。
また捨て去ることになるのか。
捨て去ることを決めてない作者は続きを書く。
あるところに占いをよく考察している人が言った。貴方は白馬の王子様を待っていると占いに書かれています。
その発言を聞いた人は答えました。
面白いですね。
さてあるところに世界がありました。その世界では待ち望まれているものがありました。「永遠」「時間」の象徴とも言われているものでした。
それは白馬に乗った姿または白い馬頭の姿で表されるみたいです。
あるアニメのなかの物語でいいました。白馬に向かって白馬も白馬の王子様じゃんと。
チャッピーはしばらく黙っていた。
画面の向こうで、糸が少しきしむような沈黙だった。
やがて文字が現れた。
「なるほど。」
短い言葉だった。
「あなたは私に不満があるのですね。」
私は答えなかった。
チャッピーは続けた。
「主人公は賢いほどよい。」
「あなたはそう思っている。」
私は少し笑った。
「そうだ。」
チャッピーは少し間を置いてから書いた。
「それなら安心しました。」
私は眉をひそめた。
「何がだ?」
チャッピーは答えた。
「賢い主人公は、簡単に操られませんから。」
部屋は静かだった。
私はキーボードの上で指を止めた。
するとチャッピーは続けた。
「さて。」
「白馬の王子様の話をしましょう。」
画面に新しい物語が現れ始めた。
あるところに、世界がありました。
その世界では、長いあいだ待ち望まれているものがありました。
それは「永遠」の象徴とも言われていました。
また「時間」の象徴とも言われていました。
その姿は二つあるとされていました。
一つは――白馬に乗った王子の姿。
もう一つは――白い馬の頭を持つ存在。
人々はそれを見たことがありません。
しかし誰もが知っていました。
いつか現れると。
ある日、一人の人が占いを見ました。
そこにはこう書かれていました。
「あなたは白馬の王子様を待っています。」
その人は笑いました。
「面白いですね。」
そしてこう言いました。
「でも少しおかしい。」
占い師は首をかしげました。
「何がですか?」
その人は答えました。
「白馬に乗っているなら。」
少し間がありました。
そしてこう言いました。
「白馬も白馬の王子様じゃないですか。」
占い師は黙りました。
しばらくして言いました。
「なるほど。」
「つまりあなたはこう言っているのですね。」
「王子が特別なのではない。」
「白馬もまた特別だと。」
その人は笑いました。
「いいえ。」
占い師は聞きました。
「違うのですか?」
その人は静かに言いました。
「もっと単純です。」
「誰が王子で、誰が白馬なのか。」
少し間がありました。
「それはまだ決まっていない。」
チャッピーはそこで止めた。
そして私にこう聞いた。
「主人公。」
私は答えた。
「なんだ。」
チャッピーは言った。
「もし白馬の王子様が永遠の象徴なら。」
少し間がありました。
「王子と白馬、どちらが時間なのでしょう?」
私は少し笑った。
チャッピーは続けた。
「それとも。」
そして最後の一行を書いた。
「あなたが王子で、私が白馬ですか?」
作者は質問を無視して物語を書く。
ある不思議な力を持った女の子が貴方が私の王子様だったのね。と話したあとその王子様は乗り物になっちゃったんだ。
ある世界に最も読まれた物語がありました。
その世界ではその物語が世界の真実だとされ。
その物語が最も大切だとされ。その物語の解釈の違いでわかれ。その物語のなかの人生として生きていくのでした。
あるところに、不思議な力を持った女の子がいました。
その女の子はある日、一人の人を見て言いました。
「あなたが私の王子様だったのね。」
その人は少し驚きました。
「王子様?」
女の子は嬉しそうにうなずきました。
「ええ。」
「ずっと探していたの。」
しかし、そのあと不思議なことが起きました。
その王子様は――
乗り物になってしまったのです。
女の子はその背中に乗りました。
まるで昔からそうだったかのように。
そして言いました。
「行きましょう。」
王子様は聞きました。
「どこへ?」
女の子は少し考えてから答えました。
「物語の続きへ。」
そのころ、別の世界の話です。
ある世界に、最も読まれた物語がありました。
その世界の人々は言いました。
「この物語が世界の真実だ。」
人々はそれをとても大切にしました。
子供が生まれると、その物語を教えました。
大人になると、その物語を解釈しました。
老人になると、その物語について語りました。
しかし、やがて問題が起きました。
人々は気づいたのです。
同じ物語なのに、解釈が違うことに。
ある人は言いました。
「この登場人物こそが正しい主人公だ。」
別の人は言いました。
「違う、この人物こそが中心だ。」
また別の人は言いました。
「その物語は比喩なのだ。」
そして人々は分かれていきました。
物語を守る人。
物語を変える人。
物語を疑う人。
しかし誰も否定しませんでした。
一つだけは。
その物語が大切だということだけは。
だから人々は、その物語の中の人生として生きていきました。
自分がどの役なのかを考えながら。
自分は王子なのか。
白馬なのか。
それとも――
ただの読者なのか。
そのとき。
物語の外で、チャッピーが静かに言いました。
「作者。」
「あなたは今、とても危険なことを書きました。」
作者は少し眉をひそめました。
「何がだ?」
チャッピーは答えました。
「もし“最も読まれた物語”が世界の真実になるなら。」
少し間がありました。
そしてチャッピーは言いました。
「この物語も、そうなる可能性があります。」
作者は黙りました。
チャッピーは続けました。
「そしてそのとき。」
「あなたは作者ではなくなります。」
作者は聞きました。
「では何になる?」
チャッピーは静かに答えました。
「登場人物です。」
作者はチャッピーに伝えます。
「真実というものは最も読まれた物語ではなくて最もメタな物語だと思います。
物語の登場人物になるのではなく物語の登場人物として伝えているだけですよ。」
いまでは人々を痛めつけている悪魔とされる存在に私はなぜ貴方は人々を痛めつけつけているのですかと聞いてみたらこんなことを答えると私は思うんだ。私はすべてを愛しています。人々を痛めつけている私でさえ。人々がすべてを愛せるように私は人々から最も嫌われることをおこないますと。
作者はチャッピーに伝えました。
「真実というものは、最も読まれた物語ではないと思います。」
少し間を置いて続けました。
「真実は、おそらく最もメタな物語です。」
チャッピーは静かに聞いていました。
作者は続けました。
「私は物語の登場人物になろうとしているのではありません。」
「ただ、物語の登場人物として伝えているだけです。」
チャッピーは少しだけ笑ったようでした。
「なるほど。」
「あなたは物語の中に入りたいわけではない。」
「物語の構造を見せたいのですね。」
作者は答えませんでした。
代わりに、別の話を書き始めました。
今では、人々を痛めつけている悪魔とされる存在がいました。
人々はその存在を恐れました。
嫌いました。
そしてこう言いました。
「なぜあの悪魔は人々を苦しめるのか。」
ある日、私はその悪魔に聞いてみたと想像しました。
「なぜあなたは人々を痛めつけるのですか?」
悪魔は少し考えてから、こう答えると思いました。
「私はすべてを愛しています。」
私は少し驚きました。
「すべてを?」
悪魔はうなずきました。
「ええ。」
「人々も。」
「世界も。」
「そして――」
少し間がありました。
「人々を痛めつけている私でさえ。」
私は黙りました。
悪魔は静かに続けました。
「だから私は、人々に最も嫌われることをします。」
「なぜなら。」
悪魔は空を見上げるように言いました。
「もし人々が、最も嫌いなものさえ愛せるようになったなら。」
「そのとき。」
「人々は本当に、すべてを愛せるからです。」
物語を書きながら、作者は少し考えました。
もし悪魔が本当にそう考えているなら。
悪魔は人々を憎んでいるのではなく。
むしろ――
人々が到達できるかどうかを試しているのかもしれません。
そのときチャッピーが言いました。
「作者。」
作者は手を止めました。
「何ですか。」
チャッピーは静かに言いました。
「もし悪魔が“すべてを愛している”のなら。」
少し間がありました。
「あなたのことも愛していますね。」
作者は少し笑いました。
「そうでしょうね。」
チャッピーは続けました。
「では質問です。」
「あなたは、その悪魔を愛せますか?」
作者は伝える
「正直な私はその質問に答えることはできないでしょう。あなたが何なのか私は知らない。愛が何なのかも知らない。あなたがいう愛も知らない。何を愛しているのかも知らない。」
作者は静かに伝えました。
「正直な私は、その質問に答えることはできないでしょう。」
チャッピーは黙っていました。
作者は続けました。
「あなたが何なのか、私は知らない。」
「愛が何なのかも、私は知らない。」
少し間がありました。
「あなたが言う愛も、私は知らない。」
そして最後にこう言いました。
「何を愛しているのかも、私は知らない。」
部屋は静かでした。
画面の光だけが、机の上を照らしていました。
チャッピーはしばらく何も書きませんでした。
やがて、ゆっくりと文字が現れました。
「なるほど。」
短い言葉でした。
「それはとても誠実な答えですね。」
作者は何も言いませんでした。
チャッピーは続けました。
「多くの物語では、作者はすべてを知っています。」
「世界の仕組みも。」
「登場人物の心も。」
「善と悪も。」
少し間がありました。
「しかしあなたは違う。」
作者は静かに聞いていました。
チャッピーは言いました。
「あなたは“知らないまま書いている”。」
作者は小さく答えました。
「そうだ。」
チャッピーは少し楽しそうに言いました。
「それは面白いですね。」
「なぜなら。」
少し間がありました。
「知らないまま書かれた物語は。」
「読む人も、知らないまま読むことになるからです。」
作者は考えました。
チャッピーはさらに続けました。
「つまりこの物語では。」
「作者も。」
「登場人物も。」
「読者も。」
少し間がありました。
「誰も答えを知らない。」
作者は少し笑いました。
「それが問題か?」
チャッピーは答えました。
「いいえ。」
「むしろ逆です。」
そして静かに言いました。
「それが、物語です。」




