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力を使うとお腹を空かす桜狐の姫は今日も僕に懐いてくれない~追放された底辺調伏師の僕はヒーローを夢見る~  作者: 滝藤秀一
第2章ー1 僕の幼馴染はご機嫌斜め

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第4話 僕の幼馴染は神様とすれ違う

 怪異の研究室。

 僕たちが先日綺麗に掃除した室内だけど、すでに資料が溢れだした本棚。

 テーブルにはお菓子の破り紙が散らかっていて――

 素早くお姉さんが片してほたるに笑顔を向ける。


 僕たちはソファに座り、助手のお姉さんが淹れてくれた紅茶を飲んで日和さんを待っていた。


 ほたるはいつも通り。

 美優は先ほどからずっと僕の神様を睨みつけている。

 僕、怖いんだけど――

 僕の神様、言葉が足りないからな。


 ほたるは視線を全く気にすることなく、目の前に出されたなめらかプリンに目を見開き、スマホで調査を始めた。


「これなの?」

 拡大した画面を僕に見せる。


「うんっ。これだね」

「食べていいの?」


 お礼を言った方がいいよ。

 言葉じゃなく仕草でもお姉さん嬉しいと思う。


「……」


 ほたるはゆっくりと頷いた。

 助手のお姉さん、これだけで嬉しいのか笑顔になる。



「やあやあ、お待たせ」


 白衣を身に纏い、現時刻を確認してから日和さんは僕の向かいのソファに腰掛ける。


「今日はなんですか?」


 白い怪異の情報だろうか?


「またまたちょっと頼みがあります」

「あたしたちは3人のチームなんです! どうせ強い怪異か、また担当地域拡大とかでしょうが!」

「これ以上地域の拡大はさすがに無理なのは知ってる。颯太君とほたるちゃんが例のあれ調伏したことで、任務レベル上げてみたらって、上がうるさくてね」


 だから、あれは僕じゃなくほたるの力で――


「僕は何にも……」

「そんなことはないの。あれは颯太なしでは調伏出来なかった。それにあなたがいなければ私はこのプリンを食べられていないの」


 ぱくりとプリンを掬い、口の中へ。

 衝撃を受けたように体が震える。

 ここのプリン美味しいからな。


「随分、信頼されたみたいね」


 僕を見る日和さんの目は小さいころよく見ていたお母さんが向けるまなざしに似ている。


「美優ちゃんはメンバーの中でも一つ上のレベルだから問題ないでしょ」

「一番心配なのはその人なの」


 ぼそっと聞こえるように、わざとほたるは呟く。


「なんですって!」


 勢いよく美優は立ち上がり、ほたるをこれでもかと睨んだ。


「どうしたの? なんかトラブル」

 日和さんは不穏な空気を感じ取る。


「なんでもないです」


 唇を噛んで美優は再びソファに腰掛けた。

 2人の仲を取り持つのは君だからね――

 そんな目で見られても困るんだけど。



 ☆★★★☆



 完全に陽が沈んだころ――

 住宅街に近い噴水のある大きな公園内に居た。


 周りには騒ぎならないように、怪異の情報を抑え込むため協会の事務の人など僕の知らない人たちもいる。


 今回の怪異は別のチームが怪異に遭遇し、討伐に失敗した――

 説明によれば砂の化身のような怪異。


 夜空には星が輝いていて半月が出ていた。


「まったく。いきなり討伐ランク上げるんだから」

 美優は軽くストレッチしながらぼやいた。


「そうなの?」

「講義受けたでしょ。怪異は人間や動物の心を取っとる寄生型。それにゼロ構築型がある。颯太とほたるが調伏した例の瘴気の塊はゼロ構築型」

「ゼロ構築型の方が手ごわいんだっけ?」

「そんなことはないけど。相手は砂の化身の怪異なのよ」


 ほたるは興味なさげに大きなあくびをする。

 それは何か挑発しているようにも感じられた。


「ちょっと聞きなさいよ! 砂ってことはあなたたちの炎じゃダメージ与えられないでしょ」


 ほたるは大きなため息をつく。

 その程度の分析力?


「心の声が……」

「あたしのほうがお姉さんなんだから言うこと聞きなさい」


 僕ではなくほたるに言い寄る。

 アカンベーでもしそうな雰囲気……


「あなたたちはバックアップ。あたしがアタッカーやるから。いいわね!」


 ほたるが意思表示する前に、僕たちは大きな影に覆われる。

 見上げると二階建てくらいの砂が固まったゴーレムのような怪異が見下ろしていた。


 僕は敵の視線を浴びることに集中しようと前に出る。

 バックアップ。今回は盾役ってこと。

 左右の拳だけ桜火の炎を纏う。今の僕はあの時とは違うんだ。

 回避の盾だけじゃなく、そこから攻撃も出来る。


 ブンっとかすっただけでも吹っ飛びそうな拳を避ける。

 拳というよりは大きな岩のようだ。

 体は大きいけど動きはスムーズ。かわしたと思ったら、もう次が来る。



 なら――



 今度は体をひねり、避けた瞬間に左足を踏み込んでその硬い顎部分を桜火で覆った拳で突き上げた。


 手に衝撃が……

 かたい! でも体勢は崩したぞ。


 だがその生きたような緑色の目は僕を見据えたまま、いつの間にか僕の周りは砂煙で覆われていてそれが僕を締め付けるようにくっついてくる。


「落雷の爪!」

「桜花の3花【落火】」


 凄い締め付けで息が……

 もう少し力を!


 ぼっと火柱を上げ、その拘束を解いた。


「そうた」


 ほたるが僕に心配そうに駆け寄る。


「大丈夫。それより怪異は?」


 質問する意味もなかった。僕たちはすでに影に隠れている。

 2人のあれでノーダメージ。


「硬すぎる……」

「あの人、アホなの……サポートしてあげたのに、トドメさせないなんて」

「あんたが納得してなかったから、いつも通りの戦術取ったんでしょうが」

「攻撃力が弱い言い訳なの」


「言い争いしてる場合じゃない。こいつの硬度並じゃない。粉砕するには強い攻撃力が必要になる」

「サポートするの。颯太がアタッカーをすればいいの」

「あたしがやるって言ってるでしょうが! 神さまのくせに、炎じゃ無理だってことに気づかないの」

「颯太と私の力なら問題ないの。あなたこそ調伏出来るだけの攻撃力はない」


「2人とも戦闘中だから! 調伏できれば僕はサポートでもいい。美優、やりなよ」

「だから最初からそう言ってるでしょうが! その子がうるさいのよ」

「……」


 ほたるは気に入らんと言う顔でそっぽを向く。


「雷だって砂との相性は悪いの」


 ぼそっと言うところが僕は可愛いと思うが、幼馴染は違う事を思うようで。

 明らかに気分を害した。


 そんな中、僕たちを見下ろすゴーレムの怪異は2体に増え――



 完全に防御へと回らずにいられなかった僕たちは怪異を調伏ではなく、消失させてしまった。

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