第17話 僕と神様に迫る危機
人の悪の部分が具現化して形になるのが怪異。
そして、理由はまだわかっていないが、その怪異の力が一時的に増すことがある。
もう日付が変わっているので、昨夜になるが力をあげた怪異が現れた。
しかも新種らしく――
美優たち優れた調伏師に緊急連絡があったことを僕は電話を受けて知った。
☆★★★☆
薄暗い廊下を走っていき、明るくなっている個室の前で立ち止まる。
僕の後ろをぴったりとほたるが付いて来てくれた。
窓の外には炎のように回転灯が動いていて――
病院の匂い。
不安と怖さから体が震えてくる。
両親の時に一度この場には来たことがあり、その時のことが頭の中から離れない。
「美優!」
勢いよくドアをスライドさせる。
「うるさいなぁ。何時だと思ってるのよ。病院なんだから静かにしなさい!」
ウサギの可愛いパジャマを着た美優がこちらを睨む。
(んっ?)
あれ、なんかすごい元気そうなんだけど――
「なんでそんな慌ててるのよ? こんな朝方に誰が連絡したの?」
不思議そうな顔を向けられる。
「いや、だって……」
肩を背後から指で叩かれた。
「りえ先輩」
包帯を右手に巻いた先輩は申し訳なさそうに下を向いて――
いやなんか笑いを堪えていた。
「お早い到着」
「颯太に何を言ったんですか?」
「肝心なこと言う前に切っちゃったんだよ。ごめんね。一緒にいながら美優ちゃんに無理させちゃった」
「先輩のせいじゃないです。僕が弱いから、美優の隣に居られないから守ることも出来なかった」
「あーあ。何、勘違いしてるのよ。やられたわけじゃないのよ。ただその……ペース配分考えてなくて、神降ろしに必要なシンクロエナジーが尽きて、倒れちゃっただけなんだから」
少しバツの悪そうな顔でこっちを見る。
「あれは強かったからね。結局、姿を消しちゃったし。討伐部隊が組まれると思う」
「だから安心してくれていいわ。1日で回復するから、心配しなくて大丈夫なの」
心配はするよ。
凄く元気そうで、それをみたら安心して倒れてしまいそうだけど。
「美優、どんな相手だったの?」
「颯太、あれは1人で調伏するのは無理。2チームの討伐編成部隊が組まれるはず。だから、あんたは担当地域の見回りだけにしておきなさい、無茶したら許さないから。もし、遭遇したらいつも通り逃げるのよ、いいわね?」
心配させたくないからな。無茶はしないようにしないと。
「はーい」
僕の素直な返事を聞いて、美優はむっとした顔になる。
「ほたる、颯太のことお願いね。一緒にいてあげて」
「……」
ほたるはプイっと視線をそらした。
☆★★★☆
ほたると2人で調伏師協会へと顔を出す。
これまで話したことない人が気軽に会話をしてくれて、少しビックリした。
昨日のことが影響していると思うのが普通かな。
そうなら、殴られ損でもなかったな。
訓練を終え、日和さんの研究室に招かれた僕たち。
研究員の女性が恐る恐るほたるに近づいて来た。
ほたるはそれを横目でチラ見している。
「あのう、今日はケーキが余っています。その名もオペラ」
チョコで周りをコーティングしてあり、中はシフォンと生クリームが入っている巷で評判のケーキだ。
ピクリとほたるの耳と尾が反応したが、ぷいっと視線をケーキからそらす。
ほたるはスマホを出して何やら調べ出した。
「いらないですか? ほんとに美味しいですよ、これ」
くぅと遠慮がちになるほたるのお腹。
理不尽にも僕がなぜか睨まれ、スマホの画面を見せられる。
そこには記事があり、まさにこのケーキが紹介されていた。
フルにスマホを活用しているな。
「えっと、どうしましょう?」
「僕が二つ食べると夕飯が食べられないから、ほたる食べてくれないか? 余らせておくのはもったいないだろ」
「……」
なら仕方ない。食べてやるか……そんな心境だと思う。
「颯太君とほたるちゃんにくぎを刺しておく」
「なんですか?」
ほたるは我関せず、僕が食べ始めたのを確認し、チョコレートケーキにフォークを入れた。
「美優ちゃん今日はいないでしょ。2人で見回りでしょ」
「うん……」
「心配してるの、私は。あれには手を出しちゃダメ。いいね?」
「はい……」
美優も日和さんも僕は危ないことはしないのに……
まるで扱いが小学生じゃないか……




