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彼女で紡ぐ異世界人生  作者: tmgs
第二章始まりの神殿
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4/10

神殿攻略前

「うっ……まだ痛いな」



腹と頬に鈍い痛みが残っていた。


それでもヒナタは立ち上がった。


ラベラの護衛がある。


それだけで十分な理由だった。



「ヒナタは休んでていいですわ。私のせいでもありますし」



ソリュアが珍しく気遣うような声を出した。


罪悪感が滲んでいるのはわかった。



「いいや、俺は行く。ラベラを守るために護衛についたんだ。しかも覚悟もしちゃったしな」



「……まあそのくらい元気があれば大丈夫ですわね。早く馬車に乗るのですわ」



屋敷の前には豪華とは言えないが、乗るには十分な馬車が止まっていた。



「コニュアとギンネスには屋敷にいてもらいましょう」



ラベラがそう言うとヒナタとソリュアが乗り込んだ。


馬車が動き出す。


遠くからコニュアが手を振って見送っているのが見えた。


ガラガラガラ、とタイヤの回転する音が静かな森に吸い込まれていく。



「ヒナタは何も知らないでしょうから、隣国のパルジアの説明をするね」



ラベラが窓の外を見ながら口を開いた。



「どんな国なんだ。俺がハーレムを築けるサキュバスの国か?」



ヒナタは意気揚々と答えた。



「そんなわけないですわ。ヒナタがハーレムを築けるのは魔物の群れの中だけですわ」



ソリュアが即座に切り捨てる。



「パルジアっていうのは武力がとても高い国でね。帝権剣士って呼ばれるとても強い剣士が治めているの。王の名前はクリオラ」


「性格は……民には優しく、よそには清く、敵には残酷に、って感じかな。私は二回くらい会ったけど、印象としては最悪ね」



ラベラの表情がわずかに硬くなった。



「なんか弱みでも握られてるのか?」



「まあ、そんな感じ。でもクリオラのおかげで今の立場に立てているのも事実だから……しょうがないとは思ってるの」



「私はラベラ様のおっしゃる通りにしますわ。殺せと言われたら私が死んでも殺しますわ」



ソリュアが静かに、しかし迷いなく言い切った。



「まあ、実際に戦ったら私は確実に殺されると思いますけど」



悔しそうに唇を噛む。



「そういえば前に言ってた英雄賢者とどっちが強いんだ?」



ソリュアとラベラが同時に口を開いた。



「英雄賢者ですわ」


「英雄賢者ね」



声が重なった。



「英雄賢者っていうのは、欲求に対抗できると言われている者の一人ですわ」



「ふーん。でも欲求の強さがわからない以上、測りようがないんじゃないか」



「英雄賢者は恐極龍という二つの大帝国を滅ぼした龍を、深手を負いながらも倒したのですわ」


「欲求は権化を扱っている以上、強さは未知数ですわ。でも二大帝国を滅ぼすような真似はできませんし、英雄賢者なら対抗できると思いますわ」



「俺も英雄ヒナタなんて呼ばれたいな。特にラベラに」



「じゃあ私をたくさん助けてね」



「もちろん!」



「残念ですけどヒナタの出番はありませんわよ」



馬車が城下の街に差し掛かると、ヒナタは窓から首を伸ばした。


「ちょっと待って、止めてくれ。降りて見たい」


「だめですわ」


「ちょっとだけ!」


ソリュアがため息をついたが、ラベラが御者に声をかけた。


「少しだけ」


「ラベラ様!?」


「せっかく来たんだし」


馬車が止まると、ヒナタは真っ先に飛び降りた。


鍛冶屋の火花。広場で剣を打ち合う騎士たち。路地の角から聞こえてくる弦の音。


「本物の国だ……」


思わずつぶやいた。


「ジャルナとどっちがすごい?」


隣にラベラが並んでいた。


「ここのほうが……なんか、生きてる感じがする」


「剣と炎の国だから」


「ラベラはここ好きか?」


少し間があった。


「嫌いじゃない。でも好きとも言えない、かな」


「なんで?」


「さっきのクリオラみたいな人がいるから」


ヒナタは広場の騎士たちを眺めながら言った。


「あいつはともかく、街はいいじゃないか」


「……そうだね」


ラベラが小さく笑った。


珍しい笑い方だと、ヒナタは思った。


「早く乗ってくださいますわ!?」


遠くからソリュアの声が飛んできた。


(なんだここ……本物の国だ)



城壁の門の前で馬車が止まると、すぐに召使らしき人物が駆け寄ってきた。



「東北に屋敷を持つ、ラベラ様ですね。どうぞ中へ」



巨大な門がゆっくりと開く。


ヒナタはそれをまじまじと見上げながら、王城の中へ足を踏み入れた。


長い廊下。


何に使うのかわからないほど並んだ個室。


天井は高く、足音だけが響く。



「すごいしか言葉が出てこねえよ。クリオラってどんだけすごい奴なんだ」



歩き続けると、やがて他の扉より一回り大きい扉の前に辿り着いた。



「ついたわ。ヒナタは外で待っていてね。私とソリュアが中で話し合いをするから」



「え、俺は入れないのか」



「当り前ですわ。不審な人が来たら知らせてくれるだけでいいんですわ。それしか使い道がないんですもの」



「コニュアとか連れてくればよかっただろ」



「うるさいですわね。お話の邪魔をしないようにしてくださいですわ」



ソリュアにそう言い切られ、二人が扉の中へ消えた。


ヒナタは廊下に一人取り残された。


(俺は置いてけぼりかよ……ちょっとくらいドアから聞いてもいいよな。ラベラを守るため!)


そっと扉に耳を押し当てる。



―――



部屋の中では、ラベラの前に一人の男が座っていた。


緋色の瞳。


緑と赤の混じった髪。


仕立てのいいスーツに、どこか倦んだような余裕を纏った男。


それがクリオラだった。


その隣には小さな甲冑を身に着けた二人の子供が並んでいる。


頭に角が生えていた。



「こんにちは、クリオラ王」


「やあ、ラベラ。久しぶりだね」


クリオラが軽く手を上げた。


「ほら、クリャとアリュ。挨拶しなさい」


甲冑の少年が胸を張った。



「こんにちは!」



大きな声だった。


隣の少女は少し遅れて、



「こ……にちは……」



と蚊の鳴くような声で続けた。


ソリュアも小さく「こんにちは」と返した。



「それじゃ本題を話すけど」



クリオラが足を組んだ。



「最近、探検隊が近くに神殿を見つけてね。騎士団を派遣したんだけど、魔物にやられてほとんど帰ってこなかったんだよね」



ソリュアが間髪入れずに返した。



「それはクリオラ王が直々に行って魔物を倒せばいいんじゃないですわ?」



「僕は忙しいから。あと僕が行くまでもないと思うんだよね。君たちの強さが適任と見た」



そう言った瞬間、クリオラの目に変化が起きた。


瞳の色と柄が切り替わる。


まるで別の何かが覗いているような目だった。



「うん。君たちの戦力が一番いい。僕の目がそう言ってるよ」



ラベラが表情を引き締めた。



「私たち三人ですか。それは見当違いですね、クリオラ王。あなたの騎士団には到底及びませんよ」



「さっきから聞いてれば、ちょっと僕に反発しすぎじゃないかな」



その言葉と同時に、部屋の温度が変わった。


温度が上がっているわけじゃない。


空気の質が変質する、そういう感覚だった。


ラベラの喉が締まった。


ソリュアの足が床に縫い付けられる。



(これが……王の格か)



甲冑の少年がそっと腰の剣に触れた。



「だめだよ、クリオラ王を怒らせちゃ」



「僕を攻撃したところで君たちの地位が下がって深手を負うだけで、何の利益もない」



クリオラは微笑んだまま続けた。



「話を受ければ今の地位も変わらず、友好な関係を続けられる。それだけのことだよ」



一瞬だった。


クリオラの剣から巨大な炎が見えた。



ドン。



扉が開いた。



「ラベラ、その話受けよう!」



ヒナタが部屋に踏み込んでいた。


ラベラがぽかんとした顔でヒナタを見た。



「……神殿って強い魔物がいやすいの。お遊びじゃなくて、本当に危ないよ」



「そうですわ。ヒナタが口答えできる立場でもありませんわ」



ソリュアもすぐに続く。



「どっちにしろクリオラ王に斬られるか神殿で危険な目に遭うかなら、少しでも生きられる確率があるほうに賭けたほうがいいだろ」



クリオラの口元がわずかに緩んだ。



「話が速い人は嫌いじゃない」



「俺はお前の味方をしてるわけじゃねえ。勘違いするなよ」



「あークリオラ王をお前呼びしかも無礼なこと言ったー!」



甲冑の少年が剣を抜いた。


迷いがなかった。


ヒナタの目を狙って、真っすぐに。



スシャン。



「やめろ」



紙一重で剣が止まった。

ヒナタは気づいたら息を止めていた。

冷汗が首筋を伝う。



(今のは……本気だった)



少年がヒナタをまっすぐ見る。


剣を収めながら、値踏みするように言った。



「……避けた。騎士でもないのに」



感心とも不満ともとれる声だった。


ラベラが静かに息をついた。



「受けましょう。どちらにせよ拒否権がないのはわかっていましたし、少しの抵抗を見せようとしただけです。無礼をお許しください」


クリオラがうなずいた。


「神殿が危ないのは僕も分かってるよ。だから一応、騎士を少し派遣しておく。まあ十分だと思うけどね」


「今日は僕の城に泊っていくといい部屋は好きにしろ」


「それでは失礼します、クリオラ王」


ラベラ、ヒナタ、ソリュアが部屋を出た。


扉が閉まる。


廊下に出た瞬間、ソリュアがヒナタの耳を引っ張った。


「いったー!」


「なんで入ってきたんですの。私たちが死んでたかもしれませんわ」


「でも死ななかっただろ」


ソリュアが言葉に詰まる。


その間、ラベラだけがヒナタをまっすぐ見ていた。


何も言わなかった。


でも少しだけ、表情がやわらいだ気がした。


(気のせいか)


ヒナタは頭の後ろを掻いた。


廊下の曲がり角から、甲冑の少年がこちらをじっと見ていた。



―――



すっきりとした部屋の中でクリオラは一人、窓の外を眺めていた。


(あの中で一番強いのは……あのヒナタという男だった)


(一人だけオーラが違った。ソリュアの倍はある)


(だが今はオーラだけだ。他は全然ダメといったところか)


口元に笑みが浮かんだ。


(面白い)


クリオラも静かに部屋を去った。






―――






城の客間はどれも天井が高く、廊下の長さからすれば当然のことだがヒナタの部屋も不釣り合いなほど広

かった。


ベッドに寝転んでみる。


柔らかかった。


「……やばい、眠れそうだ」



天井をぼんやり眺めながら、今日あったことを順番に思い返す。


クリオラの剣から見えた炎。

空気の質が変わった瞬間。

あのとき扉を開けなければ、ラベラとソリュアはどうなっていたか。


(考えても仕方ない)


寝返りを打った。

窓から月が見えた。


(俺はなんで扉を開けたんだろう)


ラベラを守るためだと思っていた。

でも正確には違う気がした。

ラベラがいなくなったとき何を目標にすればいい

普通の人ならいろいろあるのだろうが

目標もなく生きてきた自分には簡単ではなかった


(……我ながら単純だな)


廊下に出た。

眠れないなら水でも飲もうと思っただけだった。

城の廊下は夜になっても明かりが灯されていて、昼間とは別の静けさがあった。

足音を立てないように歩いていると、少し先に人影が見えた。

窓枠に背を預けて、外を見ている。


ラベラだった。


「……眠れないのか」


声をかけると、ラベラが振り返った。

驚いた様子はなかった。


「ヒナタこそ」


「俺は単純に眠れなかっただけ」


「私も似たようなもの」


ヒナタは隣に並んで、同じように窓の外を眺めた。

城下の街は静かだった。

昼間あれだけ騒がしかった広場も、今は誰もいない。


「神殿、怖いか?」


少し間があった。


「怖くないとは言えない」


「だよな」


「でも行かないという選択肢がないから、あまり考えても意味がないとは思ってる」


ヒナタは横顔を見た。

平静に見えた。

でも指先が窓枠をわずかに握っているのがわかった。


「俺が守る」


口から出た言葉が自分でも少し恥ずかしかった。


「さっきも言ってたね、それ」


「何度でも言うよこんな俺に最高の生活を与えてくれたしな」


「頼もしいんだか、どうなんだか」


ラベラが小さく笑った。

さっき城下で見たのと同じ笑い方だった。


「クリオラのこと、話せるか?」


「……今日は、いいや」


「そうか」


「でもいつかは話すね」


「わかった」


それだけで十分だった。

しばらく二人で窓の外を見ていた。

風が揺れる木々の音だけが聞こえた。


「早く寝ないと、ソリュアに怒られるよ」


ラベラが言った。


「お前もだろ」


「私はいい。少しだけここにいる」


「じゃあ俺もいる」


「……付き合わなくていいのに」


「眠れないんだから仕方ない」


ラベラは何も言わなかった。

でも窓枠を掴む指が、少しだけ緩んだ。





―――





朝になった。

城の廊下はもう人の気配があった。

給仕が忙しそうに動き回り、遠くで剣の打ち合う音がする。

ヒナタは昨日より早く目が覚めた。

よく眠れたとは言えなかったが、不思議と体は軽かった。


身支度を整えて廊下に出ると、すでにラベラとソリュアが立っていた。


「おはよう」


「おはようございますわ。顔を洗ってきてくださいますわ」


「洗ってきた」


「嘘ですわね」


ソリュアに即座に見抜かれた。


ヒナタは渋々引き返した。


戻ってくると、二人はもう城門の方へ歩き始めていた。


城の兵士に案内されて城門の前に出ると、神殿へ向かう騎士が数人、馬の準備をしていた。


クリオラの言った「少し」とはこのことらしかった。


「少なくないか」


「文句はクリオラ王に言ってくださいますわ」


空は晴れていた。


朝の光が城壁に反射して眩しかった。


馬車に乗り込もうとしたとき、後ろから声がかかった。


「待って」


振り返ると、甲冑の少年が立っていた。


クリャだった。


昨日ヒナタに剣を向けた少年だった。


「なんだ」


「一つだけ聞いていい」


少年はヒナタをまっすぐ見た。


「昨日、剣を避けたとき。怖かった?」


ヒナタは少し考えた。


「怖かったよ」


「……本当に?」


「本当に。心臓が止まるかと思った」


クリャが眉をひそめた。


「でも叫ばなかった」


「叫ぶ暇もなかっただけだ」


「騎士でもないのに避けられる人間が、怖いって言うのはおかしい」


「おかしくないだろ。怖くても体が動くことはある」


少年がしばらく黙った。


何かを咀嚼するような間だった。


「俺は怖いと動けなくなる」


ぼそりと言った。


小さな声だった。


さっきまでの真っすぐな目とは少し違う顔だった。


「それは弱いのか」


「弱くないと思う」


「なんで」


「怖いってわかってるのに向かっていけるほうが、俺はすごいと思う。怖くない奴は怖さを知らないだけ

だ」


クリャがヒナタを見た。


「……お前は神殿が怖いか」


「正直怖いよ」


「でも行くのか」


「そりゃ漢に二言はねえからな」


少年はまたしばらく黙った。


それから小さく鼻を鳴らした。


「弱いくせに格好つける」


「それが俺だよ!」


「気持ちだけじゃ変わらないこともあるっていうのは心に留めといてね」


最後だけ、声が少し変わった。


「お前とは仲良くできそうだ」


クリャは何も言わずに踵を返した。


小さな背中が城の中に消えていく。


「意外と素直な子ですわね」


ソリュアが呟いた。


「なんか、放っておけない感じがするな」


ヒナタがそう言うと、ラベラが静かに笑った。


「ヒナタってそういう人だよね」


「どういう意味だ」


「褒めてるよ」

登場人物


ヒナタ・・・異世界に来てしまった主人公引きこもっていたこともあって精神的には弱い

異世界では強気になっているがいざとなったら…

ラベラのことを好きで全力で助けたいと思っている

権化を持っている


ラベラ・・・ヒナタが異世界からきて何も知らないときに助けてくれた

今のところはヒナタよりソリュアのほうがちょい好きヒナタの過保護なところに

ちょいちょい疲れを感じている

ジャルナの王候補者


ソリュア・・・ラベラの執事で戦闘力は高いラベラに忠実でヒナタとは話すのは楽しいらしい

いろいろと裏がありそう


クリオラ・・・パルジア王国の王で戦闘力はソリュア以上剣技だけで成り上がった実力主義者

国民には優しく他人には清く敵には残酷にという感じラベラを敵だと思っている


クリャとアリュ・・・甲冑の少年少女で角が生えているクリオラの護衛クリャはわんぱくで戦闘自体はクリオラよりも弱いがクリオラが戦闘をめんどくさがっているため雇われた

アリュは内気で戦闘力はクリャより圧倒的に強いクリオラよりはちょい下だけど強いは強いあまりしゃべらないので心が読みにくく裏が多い


王国


ジャルナ王国・・・何個かある国の中の一つでその中心的な国経済力はあり兵力もあるしかし今は政治は不安定で幼稚な権化が迫っている


パルジア王国・・・ジャルナ王国よりは戦力はある政治は安定しており経済力はジャルナ王国よりも下

特に武器の生産に優れている謎の建物が多い

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