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彼女で紡ぐ異世界人生  作者: tmgs
第一章異世界人生の始まり
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2/10

俺は何なんだ

前回の続き


要約

バイク来る→死ぬ

次に視界が開けた時――


耳を埋め尽くしていた絶叫は、嘘みたいに消えていた


代わりに飛び込んできたのは、眩しすぎるほどの光景


天を突き刺す白亜の城

空へ伸びる無数の塔

石畳を埋め尽くす色鮮やかな市場


そこを行き交うのは、人間だけではない


鋭い牙を持つ獣人

鱗に覆われた爬虫類の亜人

翼を持つ者までいる


まるでゲームや漫画の世界そのものだった。


「――ハッ!! はぁっ……はぁっ……!!」


陽葵は荒々しく呼吸を繰り返しながら、自分の身体を触る


頭。

首。

胸。

腕。


何度も、何度も確認する見た目は変わっていないようだ転生というよりリスポーン


さっきまで自分は確かに潰されていた


骨が軋み、肉が押し潰され、肺が圧迫されるあの感覚


死んだ。


そう確信したはずだった


「うぁ……俺は……」


震える声が漏れる


だが周囲を見渡した瞬間、現実感のない景色に思わず笑ってしまった


「へぇ……ほんとにあったんだな。異世界転生なんて」


(……案外落ち着いてるな俺)


そう思った直後


脳裏に蘇る


肉が潰れる音。

息ができなくなる恐怖。

視界が暗く閉じていった瞬間


「っ――!!」


胃がひっくり返る


「ぐお”ぇ”ぇ”ぇぇぇッ!!」


石畳に膝をつき、激しく嘔吐した


無理もない


たとえ異世界だろうと、“死の感覚”は消えない


「あ、あの……大丈夫ですか?」


不意に聞こえた声


陽葵が顔を上げた瞬間――思考が止まった


そこに立っていたのは、息を呑むほど美しい少女だった。


透き通る緑髪。

宝石のような瞳。

柔らかな微笑み。


まるでこの世界そのものが彼女を中心に回っているようだった


「え……」


女性経験ゼロの陽葵は完全に固まる


「私、クレシナ・ラベラっていうの。あなた、すごく苦しそうだったから……」


(うおおおおおおお!?)


(異世界きた!! 美少女イベントきたぁぁぁ!!)


内心で叫びながらも、陽葵は必死に平静を装う。


「お、俺はヒナタ! もう大丈夫! 心配してくれてありがとう!」


転生前では考えられないほど自然に会話できていた


異世界補正かもしれない


「その……俺、この辺のこと全然わからなくてさ。もしよかったら案内とか――」


「案内してあげたいのは山々なんだけど、この後大事な用事があるの。少しだけならいいわよ?」


「お願いします!!」


即答だった


ラベラは少し笑う


「この国のこと、どれくらい知ってるの?」


「さっぱり」


「……面白い人ね。記憶喪失かしら?」


呆れたように肩をすくめながら、ラベラは歩き出す


「ここは“ジァルナ王国”。この世界の中心国家よ」


ラベラはそう言いながら歩き出した。


ヒナタも慌てて後を追う。


改めて周囲を見渡す。


人、人、人。


いや、人だけじゃない。


狼の耳を持つ獣人。


巨大な角を生やした男。


蜥蜴のような顔をした亜人。


ゲームや漫画でしか見たことのない存在が、当たり前のように街を歩いている。


「すげぇ……」


思わず声が漏れる。


「そんなに珍しい?」


ラベラが不思議そうに首を傾げた。


「いや、俺の故郷にはいなかったから」


「ずいぶん辺境出身なのね」


「まあそんな感じ」


転生者です、なんて説明しても信じてもらえないだろう。


ヒナタは適当に誤魔化した。


その時。


「おい兄ちゃん!」


屋台の店主らしき獣人が声をかけてくる。


「見ねぇ顔だな!」


「え?」


「ほら試食だ!」


そう言って串焼きを押し付けられた。


「おおっ!?」


一口食べる。


肉汁が溢れた。


「うまっ!!」


「だろう!」


獣人は豪快に笑った。


ラベラも小さく笑う。


「ふふっ」


「何だよ」


「いえ、随分楽しそうだなって」


「だって異世界だぞ!?」


「いせかい?」


「いやなんでもない!」


危ない。


危うく口を滑らせるところだった。


しばらく歩く。


広場へ出ると巨大な噴水が見えた。


子供たちが走り回り、


吟遊詩人が楽器を奏で、


商人たちが客を呼び込んでいる。


平和な光景。


だが。


ヒナタは気付いた。


広場のあちこちに武装した騎士が立っている。


「なんか警備厳しくないか?」


ラベラの表情が少しだけ曇った。


「……最近は色々あるのよ」


「色々?」


「王位継承問題とかね」


「王様いないのか?」


「ええ」


ラベラは広場中央を指差した。


そこには巨大な像が立っていた。


「――あれが元国王よ」


ヒナタは像を見上げる。


威厳はある。


だが何故か不気味だった。


不自然な笑み。


こちらを見透かすような瞳。


見ているだけで妙な圧迫感がある。


「元ってことは……」


ラベラの声が少し低くなる。


「亡くなったわ」


「病気とか?」


「いいえ」


一拍。


そして。


「激しい拷問の末、上半身と下半身を真っ二つにされた」


ヒナタは思わず固まった。


「……は?」


さっきまでの平和な空気が嘘みたいだった。


「だ、誰に?」


ラベラが答えようとした、その時――


ドゴッ!!


ドゴゴゴゴゴゴッ!!!


地面が揺れる


「ラベラ様ァァァァー!! どこへ行っておられたんですのォー!!」


遠方から、銀髪の女がとんでもない速度で突っ込んできた


風を裂き、石畳を砕きながら一直線に迫ってくる


長い銀髪をなびかせたその女は、執事服を身に纏っていた。


だがその姿は、美しいというより“危険”だった


鋭い目つき

吊り上がった口元


細い身体から溢れる異常な威圧感


ドゴォン!!


着地と同時に石畳が陥没する


「この方の案内をしていたの」


ラベラが平然と答えると、銀髪の女――ソリュアは、ゆっくり陽葵を見る。


「……誰ですの。このガキは?」


ゾクリ


視線だけで背筋が凍る


「私のラベラ様に近づくなんて、不愉快ですわ~」


「初対面でその態度ひどくないか!? 俺はヒナタだ!」


「体調悪かったところを助けてもらったんだよ!」


「何かお礼をさせてくれ!」


するとソリュアは顔を近づける


「ラベラ様はお忙しいんですの。ヒョロガキに構っている暇なんてありませんわ~」


(うぜぇ……)


(でも顔良すぎるし色々でかい……)


ラベラはそんな空気など気にせず言った。


「じゃあヒナタ、私の護衛をしてくれない?」


「は?」


「わ?」


陽葵とソリュアの声が重なる


「ラベラ様!? このヒョロガキに何ができますのまあ権化は…」


「いやまあヒョロいのは認めるけど……」


「俺、普通に弱いぞ?」


「知ってるわ。一目見ればわかるもの」


ヒナタに容赦はなかった


「でも護衛は何人いてもいいでしょう?」


ソリュアは露骨に顔をしかめる


「この者、別勢力の間者かもしれませんわよ?」


「ですがラベラ様が望むなら従いますわ~……」


その瞬間


ソリュアの瞳が細まった


「ですが――」


空気が変わる


背筋を氷で撫でられたような感覚。


圧だけで呼吸が止まりそうになる。


「このガキのせいでラベラ様に何かあれば――」


にっこりと笑ったが日差しからの影も相まって威圧感が半端じゃなかったネタではない本気の顔だ


「は、はい」


ヒナタもこの顔には言い返す言葉は「はい」しか思いつかなかった


「おっとそうでしたわ自己紹介が遅れましたわね」


さっきの威圧感が嘘のように明るい顔で自己紹介を始めた


「時期女王候補クレシナ・ラベラに仕える執事兼護衛のソリュア・プレォロラですわ」


ラベラが近くの時計台を見ると


「そろそろ屋敷へ帰って大事なことをしないとソリュア」


すると執事兼護衛のソリュアが方にラベラを乗せヒナタの背中の服を鷲掴みすると


「それじゃあ行きますわ!」


「――《ファートレム》」


その瞬間


グォォォォォォォッ!!!


暴風が炸裂した


「うおおおおおッ!?」


景色が一気に遠ざかる。


街。

人々。

建物。


全てが足元へ沈んでいく。


「すげぇぇぇ!! これが魔法か!!」


ヒナタは目を輝かせた。


夕日に染まる王国。

店先で働く獣人。

喧嘩する亜人たち。

黄金色に輝く巨大な王城。


幻想の世界が、そこにはあった。


(綺麗だ……)


(本当に俺、異世界に来たんだな……)


「うぉおおおおおおおッ!!! 最高だぁぁぁぁぁッ!!」


「暴れないでくださいますわ!?」


気が付けば、ヒナタはラベラたちに連れられ、一つの屋敷の前へ立っていた


――いや


屋敷なんてもんじゃない


「これ……城だろ」


思わず口から漏れた


目の前にそびえ立つ建物は、もはや人が住むための家とは思えない


空へ突き刺さるような尖塔


何重にも重なる白い外壁


巨大な正門は、そこらに転がる岩石が小石に見えるほどの大きさだった


圧倒的


その一言に尽きる


「すげぇ……」


ヒナタは呆然と見上げた


ラベラはそんな反応に慣れているのか、小さく肩をすくめる


「まあ、初めて来た人はみんなそう言うわね」


重々しい扉が開かれる


中へ入った瞬間、ヒナタはさらに言葉を失った


天井まで届く巨大なステンドグラス


赤や青の光が床へ降り注ぎ、まるで神殿のような荘厳な空間を作り出している


左右には数え切れないほどの扉


奥へ続く廊下は果てが見えない


しかしラベラは疲れたように近くの椅子へ腰を下ろした


「大きいのはいいんだけどね、掃除が大変なのよ」


「え?」


「執事もソリュアを含めて三人しかいないし」


ヒナタは思わず振り返った


「三人!? こんな場所をか!?」


「もっと雇えばいいじゃないか」


するとソリュアが鼻を鳴らした


「そんな簡単な話じゃありませんわ」


「この屋敷には強力な式神が封じられておりますの」


「式神?」


「執事の中に一定以上の実力者がいなければ暴走してしまいますわ」


ヒナタは嫌な予感がした


「じゃあ俺みたいな一般人が来ても平気なのか?」


ソリュアは不思議そうに首を傾げた


「ヒナタは権化を持っておりますでしょう?」


「……は?」


聞いたこともない言葉だった


「権化?」


「ご存じありませんの?」


「知らないぞ」


「自覚もないのですわ?」


「ない」


ソリュアとラベラが顔を見合わせる


二人とも驚いているようだった


「おかしいですわね」


「私たちにははっきり見えるんだけど」


ラベラも真剣な顔をしていた


「だから何なんだよその権化って」


ヒナタが尋ねると、ソリュアは少しだけ声を低くした


さっきまでの軽い調子が消える


「この世界には三大欲求という教団がありますの」


空気が変わった


ヒナタも自然と表情を引き締める


「その教団の頂点には三人の怪物がおりますわ」


「怪物?」


「ええ」


「欲求と呼ばれる三人ですの」


ソリュアは続ける


「そしてその配下に五人の権化が存在しますわ」


ヒナタの背中に冷たいものが走る


嫌な予感しかしない


「まさか……」


「そのまさかですわ」


ソリュアはあっさりと言った


「ヒナタから感じる力は権化そのものですの」


心臓が跳ねた


さっきまで少しだけ期待していた


もしかしたらチート能力かもしれない


そんな考えは一瞬で吹き飛んだ


「権化を授かった者は三大欲求へ従うと言われていますわ」


「今まで確認された権化は五人」


「そのうち二人は討伐されましたの」


「残る三人は行方不明ですわ」


ヒナタはごくりと唾を飲み込む


「じゃあ俺も討伐対象なのか?」


「普通ならそうですわね」


即答だった


顔から血の気が引いていく


「お、おい……」


「安心してくださいまし」


ソリュアはにやりと笑った


「今のヒナタなら私が一瞬で倒せますわ」


「全然安心できねぇよ!」


思わず叫ぶ


だがソリュアの表情はすぐ真面目なものへ戻った


「ですが本来なら危険ですわ」


「三大欲求は世界を一つにまとめることを掲げていますの」


「ですが実際は違いますわ」


「信者以外を皆殺しにしておりますの」


ヒナタは絶句した


そんな連中と自分が関係しているかもしれない


冗談ではない


「じゃあもし執事たちに知られたら……」


「殺される可能性はありますわね」


その言葉が胸へ突き刺さる


鼓動が速くなる


首筋を冷たい汗が流れた


「なんでそんな危険な俺を護衛にしたんだよ……」


ソリュアは少しだけ優しい表情になった


「ラベラ様だからですわ」


「え?」


「ラベラ様は困っている人を見捨てられないのですわ」


ヒナタはラベラを見る


ラベラは気まずそうに目を逸らした


「ですがそれだけではありませんの」


ソリュアの声に再び緊張が混じる


「ラベラ様は次期国王候補のお一人ですわ」


「王候補?」


「ええ」


「候補は五人男2人女3人ですわ」


「そしてラベラ様はその中で最も立場が弱い方なのですわ」


ヒナタは息を飲んだ


権化


三大欲求


そして国王候補争い


異世界へ来てから初めて理解した


自分はとんでもない渦の中心へ足を踏み入れてしまったのだと


その時だった


ガタン


どこか遠くで扉が閉まる音が響く


ヒナタは反射的に振り返る


長い廊下の先


誰もいないはずの暗闇の中で


何かがこちらを見ていた気がした


夜も更け、夕食と風呂を済ませたヒナタは自室のベッドへ倒れ込んだ


広すぎる部屋


ふかふかのベッド


普通なら最高の環境のはずだった


だがヒナタの気分は晴れない


「あー……」


天井を見上げながら大きなため息をつく


「結局ソリュア以外の執事、一人も見なかったな」


昼間の話が頭をよぎる


権化


三大欲求


討伐対象


物騒な単語ばかりだ


「俺ってそんなに信用されてないのかなぁ」


ごろんと寝返りを打つ


「まあいいや」


謎の足音ともにヒナタは眠りについた

いろいろ書きたい

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