DDAY7日前 スウ王女出発
パルミール宇宙港はこの日も活気に溢れていた。
36番ドッグのピンク色の船体を輝かせている巡洋艦の中は出港準備に忙殺されていた。
「王女。ウエムラより通信です。」
ミリアが伝える。
「王女。今回は十分に自重下さい。」
のにっけの言葉にスウはこける。
「ウエムラ。あなた何、おっさんみたいな事を言っているのよ。そんな事はもう散々王族の皆様方から聞いているわよ」
「それでも少ないです。今回ノーザンとの国境にはノーザンの第三軍の動きも活発になっているとの情報もあります。2軍だけでなく、3軍までの投入になると、ジパング全軍で防いだとしても防げるかどうか、」
「そうなったら、ひたすら逃げるわよ。それで良いんでしょ」
「王族たる者、戦場で兵士を残して逃げるべきですか。」
「そんなのやれる分けないで・・・・・」
スウは途中で詰まった。
「王女。それでは困るんです。」
ウエムラが突っ込む。
「ノーザンも私を殺す事は無いわよ」
「何言っているんですか。ジパング内でも、姫が今回亡くなってくれたらもうけものと考えている者も多いんですよ。ノーザンが考えているわけ無いでしょ」
「ごめんウエムラ。時間よ。この続きは帰ってきたら聞くわ」
にこっと笑ってスウが言った。
「王女。まだ、話が・・・」
スウはウエムラの通信を切る。
「王女。発進準備整いました。」
オハラ艦長の声が響く。
「王女。」
ミリアが呼ぶ。
「何、また、愚痴口爺からの通信?」
「口の多い爺で悪かったな」
画面にはマルサス王が映っていた。
「げっ、国王陛下」
思わずスウは口を押さえる。
「オハラ、タイワ、このお転婆王女のお守りを頼む」
「は、了解しました。」
仏頂面でオハラは答える。
笑いをこらえてコンドは顔を伏せる。そして、飲みさしのコーヒーを飲む。
「コンド」
思わぬミサイルにコンドは口に入れたコーヒーを吹き出した。
「君はローヤルとも親しい。スウの暴走を止めてもらいたい。」
「り、了解しました。」
つっかえながら、直立不動で敬礼する。
「今回は申し訳ないが、先が今のところ見えない。この状況がどのくらい続くかも判らない。」
マルサスは艦橋のクルー全員を見渡した。
「ジパングの戦力はノーザンに比べると比較にならない。それは経済力もしかりだ。
昔の栄華は無い。」自嘲気味にマルサスは言った。
「本来、フレクスはジパングの保護国であり、全戦力を上げて、ノーザンをたたき出すべきだと思う。しかし、戦力の差から言って今回の件も一つ間違えるとジパング王国の滅亡に繋がる。」
「スウ、今回ジパングから君に与えられる戦力はピンクドルフィン1隻だけだ。それで、何とかしろと言うのは虫が良すぎるだろうな。」
「ええ、そう思います」スウはあっさり頷いた。
「でも、陛下、私の出来る限りのことはやります。それでお許しいただけますか。」
「頼む」
「ありがとうございます。好きにやって良いんですね。」
にこっと笑ってスウは言った。
「無茶はするなよ」
「この戦力で行く事自体無茶なような気がしますが・・・」
ボソリとコンドが言った。
「了解しています。」
「では、諸君の健闘を祈る」
マルサスは敬礼して通信を切った。
「よろしかったのですか。あんな事を言って。」
マルサスを見てレント内務大臣が聞いた。
「何か、問題発言をしたか。」
「スウ王女に好きにしたら良いとおっしゃいましたが・・・」
レントは不安そうな顔をして言った。スウ王女の自由にさせたら、全面戦争になりかねないと。
「仕方が無いだろう。貴様らが言うようにスウを謹慎させたら、このざまだ。世論調査を見たか」
世論調査では国民の90%がスウ王女の謹慎に反対だった。
マルサス王の支持率が10ポイントも下がっていた。
「世論の言うようにやっていたら、今頃ジパングはノーザンの属国と化しています。」
レントは呆れていった。
なにしろ世論の90%がノーザンに対して攻撃しろと言っているのだから。
「ま、オリオンがスウの好きなようにさせろといっているのだから、これで良いだろう」
投げやりにマルサスは言った。
「好きにした結果、ローヤルとスウが死ねば貴様らは万々歳なのだろうが・・」
ちらりと視線を向けてマルサスは言った。
「いえいえ滅相も無い」
慌ててレントは否定した。レスターの二の舞はご免だった。
「何故、オリオンと貴様らの意見が合うか判らんが、大半の意見がそうならばここはやらすしかあるまい・・・」
マルサスは国王なのに、ほとんど自分の意思が反映されていない事に、不満を感じながら、飛び立とうとするピンクドルフィンの画像を見た。
一方ピンクドルフィンではマルサスの話を受けてスウが張り切っていた。
「タイワ、作戦はあなたに任すわ。基本方針はノーザンの邪魔をするよ。そのためには何をしても良いわ」
「王女。何をしても良いというのは少し違うのでは」
ミリアが横から注意する。
「今の王の言葉を聞かなかったの。」
スウが聞く。
「無茶はするなと言われましたが」
「私に任せるっておっしゃったのよ」
スウが言う。
「気にしないで。押さえる所は押さえるから」
「本当ですか?」
不安げにミリアが聞く。
「当たり前でしょ」
「ノーザンの情報および傭兵部隊の情報も収集して。私にもちょうだい。」
「了解しました。ローヤルの居所も調べるようにします。」
「タイワ。何か言った。」
真っ赤になってスウがいった。
「いえ、何でもないです。」
慌てて首をすくめる。しかし、赤くなったスウは可愛かった。
どうやってあの朴念仁のローヤルがスウを射止めたのかタイワにはいまだに良く判らなかった。
「王女。管制から発進許可が下りました。」
「了解。航行はオハラに全て任せます。」
「了解しました。ドルフィン発進します。」
オハラの命令の元、ピンクドルフィンはゆっくりとパルミールの大地を飛び立った。




