スウの想い
ジパングの首都パルミール
この時期のパルミールは雨が多かった。
しとしと降る雨がうっとうしい季節だった。
その日も朝から雨がしとしと降っていた。
「はあっ」
スウが大きくため息をついた。
別れ間際にローヤルの胸に飛び込んだ時の事を考えると頬が赤くなった。
その時は必ず生きて戻ってくるとローヤルは言ってくれたが、
今後の事を考えるといつ又会えるか判らなかった。
ローヤルのことだ。忙しさにかまけて、また、逃げ出す事も考えられた。
釣り合わないとか言って、また、逃げる事も十二分に考えられた。
片や傭兵連合の亡命政府ヘッド、片やジパングの謹慎王女、次に会える機会は又はるか先に思われた。
そう帰ってきたスウは、勝手な行動を取るなとマルサス王から叱られ、謹慎処分となっていた。
世論は多いにスウ王女に同情的だったが・・・
しばらく、屋敷にこもって反省するようにと。
ローヤルのためにはフレクス攻撃に参加しかねないと思われているのか、ピンクドルフィンの使用も停止されていた。
スウとしては帰ってくるまではローヤルのことを忘れるかのように仕事でスケジュールを埋めていたのが、その仕事をするなとなると、ふとわれに返るとローヤルのことを考えている自分に気づく日々だった。
「お疲れ様です。どうですか、姫は」
王女の居室の一角を訪ねた、コンドがミリアに聞いた。
「だめ、あんな感じ」
ミリアが窓際から外を眺めてため息をついているスウを見て言った。
「あれは恋煩いかや?」
コンドが声を潜めて聞いた。
「さあ、ローヤルのどこがいいんだか?」
「それは言える。蓼食う虫も好き好きと言いますからな」
二人は笑った。
そして、コンドは逃げようとした。
普通なら、ここで、きっとしたスウの怒り声が飛んでくるはずだった。
しかし、その日はスウの反応はいつもと違った。
窓を見つめたままなのだ。
「あちゃー、これは重症だね。」