第114話
澄くんの見ている前で、星と海の闘いは続く。
雨が痛い。時折吹く風が冷たい。
海の体も、雪のように冷たい。
星の手や体は赤くなってひりひりと痛い。
……でも、それでも私は、海を守らなくちゃいけないんだ。私は海の友達なんだ。その強い思いだけが、星の体を動かし続ける原動力となっていた。
海は(星の腕の中で、体の下で)もがき続ける。
とても激しく抵抗し続ける。
海はまるで本当の子供のようだった。
そんな海を見て、……よかった。海は元気だ、と星は思う。(元気で、とても強い子だ)
星はちょっとだけ嬉しくなる。
でも、そのかすかな安心がいけなかったのだろうか? その直後に、星は軽いめまいのような感覚に襲われる。
……あれ? おかしいな? 私、どうしたのかな?
そう星が思ったときにはすべてが遅かった。
それからすぐに、星の体の中で、なにか緊張の糸のようなものがぷっつりと切れて、星は(強制的に)脱力した。
星の意識はそこで、まるで電源を引き抜かれたロボットのように、ぱたっと途切れた。(ロボットのように電源はないけど)人間には誰しも限界がある。星の、……一人の十八歳の少女の限界がきたのだ。
……海。ごめん。
最後の瞬間、星はそう海に向かって誤った。
真っ暗な闇の中で、誰にだって、(きっとヒーローにだって)休息は必要だよ、……と、どこかで魚がそんなことを言ったような気がした。
第四幕 終演




