第108話
「出て行って!! ……お願いだから、ここから出て行ってよ!!!」
海は体を揺さぶるようにして、泣き叫ぶ。その度に星の意識は吹き飛びそうになり、周囲の空気は海の感情に答えるようにびりびりと震えた。
星は海を見つめながら、森の中で出会った一人の少年のことを思い出していた。
森の中で星が出会った、この森で門番をしているという不思議な少年、澄くん。
澄くんと、海と私。
三人はきっと仲の良い友達になれると思った。(その思いはきっと間違いではない)
海と澄くんは(二人を知っている)星の目から見ると、とても相性がいいように思えた。
可憐なお嬢様である海には優しい澄くんはとてもお似合いだった。(……なのに、今の海の印象は普段の海とは正反対。同じ森の中で出会ったのに、あの温和な澄くんとはえらい違いだ)
ちょっとだけぼんやりとしているけど、とても頼り甲斐のある少年。どこか不思議と海に似ているところがある少年。とても美しいすごく澄んだ目をしている少年。
……星が初めてのキスをした少年。
まだ澄くんと出会って一日と時間はたっていないけど、その澄くんの目の輝きは(そして、森の中で澄くんと交わした言葉は)今も星の目に(心に)きちんと焼きついて残っている。
……澄くん。私、どうして澄くんのことを考えているんだろう?
星は自分の思考に疑問を思う。
星は意識を海に集中する。
海の姿が星の目の前で変化していく。
その体は真っ黒な(影のような)色に覆われていく。星の目の前で、だんだんと海が(星の知っている)海ではなくなっていく。
星はじっとその変化を見つめている。




