表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/51

それから




「エンマ様っ、冥府のお仕事は大丈夫なんですか?」


「あぁ、司命達に任せているからな。私が居なくても仕事は回る。何かあれば呼び出されるまでだ……」


 私がブラックウルフの正社員になると、エンマが度々事務所に顔を出すようになった。

 どうやら仕事中に、私と冬賀さんが二人っきりになるのがエンマは嫌らしい。

 冬賀さんも閻魔大王は「好きにしてくれ」って言っているし、問題は無いはずなんだけど……


「そうだ冬賀、この書簡は私が持ち帰り冥府庁に通しておこう。ここで即決しても構わないのだが、そうすると側近共に後から文句を言われる。暫し待てるな?」


「分かっている閻魔大王、いつもすまないな。返答の類は清野に渡してくれても良い。それが1番早くてお互いに楽だろう?」


「あぁそうだな。マコモに持たせるとしよう」


 ……えーーーっ?何その業務?


 冬賀さんはブラックウルフにエンマが来るようになってから、仕事を直接エンマに頼むようになってしまった。

 私はそれに巻き込まれているという訳で……



「お疲れ様ですっ!……あ、今日はエンジュさん来てたんですね」


 事務所のドアを開けて現れた青木さんは、エンマの姿を見て一瞬だけ驚いたように見えたけど、その後はいつものひょうひょうとした顔に戻った。


 今のエンマの姿はと言うと……あの冥府の黒衣な訳で、髪色も瞳も赤いから、まるでコスプレイヤーのような姿だ。


 この姿のエンマを見ても、何の突っ込み入れずに普通に接してくれる青木さんは、確かに肝の座った人と言うべきなのだろう。


「お久しぶりですっ、僕もお邪魔しまっ……とっ?!誰かと思ったら、エンジュさんじゃないですか?!」


 青木さんの後から事務所に入ってきた陽太さんが、分かりやすく動揺している。

 そうだよね、普通そうなるよね。


「あぁ陽太くん、久しぶりだな。……エンジュの姿は……仕事中はこういう感じなんだ。衣装というか……」


「そうなんですね。仕事での姿……あれ?仕事ってマジシャンでしたっけ?」


「プッ……」


 笑っちゃいけないって分かってるけど、これは耐えられなかった。


「清野……」


「あ、すいませんっ」


 必死でエンマの素性を誤魔化そうとしていた冬賀さんから、冷たい視線を投げられてしまった。

 あれ?青木さんは全てを知っているかのように、ウンウンってうなずいている。


 やっぱり青木さんにはエンマが何者なのか、バレてしまっているのだろう。でも青木さんになら、逆に知っておいてもらった方が良いのかもしれない。

 

 あの常磐君の妖魔事件で青木さんが撮ってくれた写真には、確かに深月さんの姿が写されていたのだから。淡い光に包まれながら、にっこりと満面の笑みを浮かべた深月さんは、とても幸せそうだった。


 冬賀さんはその写真を事務机の1番上の引き出しに入れ、時々それを眺めている。引き出しを開けると、閉めるまでの時間がちょっと長いから、私はそれを見て1人ほくそ笑むんでいる。


 あの写真が冬賀さんにとって、かけがえのない物になったと分かって嬉しいんだ。



 ◇



「清野、少し早いが今日はもう上がってくれ。青木さんにそのパソコンを使ってもらいたいんだ」


「はいっ、分かりました」


 青木さんは忙しい学業の合間を縫って、うちの会社からの仕事を受けている。妖魔を写す仕事だけではなく、ホームページに載せる写真の撮影までしてくれるそうだ。


「社長、それじゃ軽く片付けしたら帰りますね」


「あぁ、すまんな」


「マコモが片付けをする必要はないだろう。あそこに手が空いている男がいるぞ?」 


 エンマの視線の先には、何故か青木さんに付いてきた陽太さんがいる。


「あ……片付け?やりますよ僕」


 ヘラっと笑って陽太さんが言う。

 全く嫌そうになんて見えない、軽やかな笑みだ。


「陽太君、済まんな。別にやらなくても良いぞ?」


「先輩待ってる間、僕は暇なんで……ゴミとか捨ててきます?」


「あぁ、済まない。今度飯でも行くか?」


「いいっすね。僕、そういうお誘い嬉しいんで……楽しみにしてますっ」


 青木さんも陽太さんも、いつの間にかこの事務所に馴染み始めている。



 *



 人の悪意から生まれた妖魔が、人の縁を結ぶとはなんて皮肉なのだろう?

 

 妖魔がいなければ、私はエンマと出会わなかったし、冬賀さんや青木さん達とも知り合う事は無かった。


 妖魔は人の魂を喰らう忌むべき存在だけれど、その周りに集まる人がいれば、それは繋がりとなっていく。


 私たちは妖魔という嵐のような存在を前に集い、それを乗り越えた今、雨上がりの空を一緒に眺めているようなものだ。


 妖魔によって結ばれた縁があるとしても、それは妖魔が結んでくれた縁なんかじゃない。


 私たちはどんな時も、自分で縁を手繰って出会っていくのだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ