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赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


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新たなエンマと私の関係は?4



 教室内にいる20人程の生徒全員と、教師を1人づつエンマに見てもらった。だがどの生徒も妖魔に寄生されてはいなかったし、教師も全く問題は無かった。


「どうしよう……もしかして陽太さんの思い違いとかだったのかな?」


「その可能性も否定は出来ないが、まずは陽太と言う男に聞いてみたらどうだ?どの生徒が疑わしいと思ったのかを」


 エンマの言う事も最もで、もしかしたらその生徒は今日は休んでいただけなのかもしれないのだ。


「そうですよね。でも陽太さんは今仕事中だし、聞きになんて行けないですよ?」


「そうだな、それではこの鏡の趣向を変えよう。現在では無く過去を映す。時は……」


「あの水族館に行った前日のはずですっ。陽太さん、そう言ってたから」


「そこまで分かっているのなら話は早い。しばし待て」

 


 ◇



 エンマが鏡面を見つめると、映されていた教室の風景は一旦かき消え、新たな映像が再び姿を結んだ。


 同じ教室内の景色なので、映し出される風景はさほど変わりない。

 陽太さんの着ている服が、さっきとは違っている。


「この頃の陽太さんって、やっぱり妖魔に寄生されてるんですよね?」


「そうだな。こうして過去の姿を見ていても、ベッタリと魂に黒色がまとわり付いている。まだ寄生されたばかりで、中にまで入り込まれてはいないがな」


「魂の中にまで入り込んじゃうんですね……。陽太さん早めに助けられて良かったですよ……ところで、陽太さんの魂の色ってどんな感じなんですか?」


「黄よりも明るいな。白いに近い黄だ。だから妖魔に好まれるのだろう」


「やっぱり白に近い色だと、妖魔が寄って来やすいんだ……」


 私の様に純白ではないにしろ、白に近い色の人は妖魔に悩まれやすいんだな。



『何なんだよ…………出ていけっ!出ていけよ!』


 少し低めでハスキーボイスの男の子が、怒鳴る声が聞こえる。

 これは陽太さんが言っていた、あの生徒に違いないだろう。


『えっ?ちょちょっと待って……何かな?トキワ君」


 これは陽太さんの声だ。鏡を見ると、笑顔ではいるけれど明らかに焦っている陽太さんが映っている。


『トキワ君、何かあったのなら僕が話を聞こう。ちょっと向こうに座ってて』


 40代くらいの男の人が陽太さんと「トキワ君」の間に入り、フォローしている。おそらくこの人が塾長だろう。


『え?何なんだよ?うわっ……俺っ…………』


 トキワ君と呼ばれた少年は頭を両手で抱えがなら、パーテーションの影に消えて行った。


『浅野先生、すいません。彼ちょっと不安定な時があって。僕が彼から話を聞きますから』


『びっくりしました……けど大丈夫ですよ。必要があれば、僕も呼んでください。トキワ君、何か言いたい事があったのかもしれないから』


『分かりました、有難うございます。それじゃ、ちょっと行ってきますね』


 塾長らしき人はそう告げると、直ぐにパーテーションの奥へと消えていった。



 ◇



「エンマ様、何か見えました?」


「そうだな……あの男子生徒の魂に、はっきりと黒色が見えた。間違い無く妖魔が入り込んでいる」


「やっぱり!陽太さんが言っていた事は合っていましたねっ」


「だがなマコモ。この局面は非常に扱いが難しい」


「え?またエンマ様が魂を一旦、冥府に移すのは駄目ですか?」


 陽太さんに寄生した妖魔を滅した時みたいに、このトキワ君の魂を移動させたら妖魔を倒せるのでは?


「この男子生徒は、先程確認をした部屋では見かけなかったであろう?居なかったと言う事は、妖魔にとってここは、意味のある場所では無くなったのだ」


「来ていないのはご家庭の用事とか、病気かもしれないですよ?」


「まぁ可能性の話だ。今の状況で男子生徒が来ていないと言うのは、私が思うに妖魔のターゲット変更故だ。または最悪の可能性として……あの男子生徒は既に魂を喰われ、もはや動くことさえままならぬ、そんな状況にある」


「!!!……そんなっ、まだ中学生ですよ?!」


「妖魔に魂を喰われるのに、幼いも年寄りもない。マコモとて妖魔に喰われそうになったのは5歳の頃だろう?幼くとも妖魔に有益な魂であれば、喰われて取り込まれる」

 

「それじゃ、このトキワ君を助けるには間に合わないかもしれないって話じゃないですか?!」


「私は最悪の事態を想定して伝えたまでだ。まだ確定はしていない。だが、そう遠くはない未来だとは言い切れる」


 確か魂に寄生する妖魔は、新しい魂に乗り換える際には、元の魂を喰らってから移動すると言っていたはずだ。だとすると、やはり遅かれ早かれトキワ君の魂は喰われてしまうのだろう。


「陽太さんを助けようと思ったのに、このトキワ君をどうにかしないといけないなんて……。このまま見て見ぬ振りなんて出来ませんよ」


「だろうな。マコモならそう言うと思っていた……。どうだ?追うか?」


「もちろんです。このままじゃ帰っても気になって寝れませんから」


「そうか、まぁ帰らずとも良いがな」


「は?」


「まぁ、その内な」



 新しい景色が鏡面に浮かび上がった。

 机に向かって座っているトキワ君と、その横に母親らしき人がいる。


「トキワ君の部屋みたいですね。まだ元気そうではあるけれど……」


「表面的にはな。だが魂は深部まで黒色が入り込んでいる。あれでは思考や行動も妖魔の意志が入り込んでしまうだろう」


「操られているって事ですか?」


「そうだな。本人の意識が無くなる訳ではないが、思ってもいない事を言ってしまったり、体が動いてしまったりもするだろう」


 鏡の中のトキワ君は無表情なまま、机の上に開いたテキストを眺めている。



 *



『分からなかったら、ちゃんと質問に来るのよ?そのままにしておかないで』


『分かってる。そのつもりだよ』


『塾が嫌なら家で勉強すれば良いし、家庭教師の先生に来てもらう方法もあるから』


『…………必要ない』


『太一はもっと出来るはずだから、塾に戻りたくなったらまたいつでも……』


『……っさいな!どうして俺……』


『太一?』


『なんでだよ……なんで俺は…………』


『何かあったなら聞くって何度も言ってるでしょ?辛かったら心に溜めておかないで……』


『…………何も無いよ、お母さん』



 *



「彼を見ていると辛くなってきます、エンマ様」


「そうかも知れぬな。だがマコモはどうしたい?全く面識の無いこの少年も助けたいと思うのか?」


「もちろんじゃないですか?ここまで知っておいて、それじゃサヨナラって訳にはいかないですよ」


「だが私は閻魔大王として現世に関わるのであれば、それなりの理由が必要なのだ。皆が救済を求めたとて、私が全てに対して答えていては、現世の道理を捻じ曲げかねない。マコモの頼みだとしても、今回は叶える事が難しい」


 頭では分かっていたけど、こうしてはっきりとエンマに断られてしまうと流石に辛い。だからと言って、私1人の力で出来ることなんてたかが知れている。


 そう、私1人の力であれば……


 でも冬賀さん、青木さん、陽太さんが居れば……いけるんじゃないっ?!


 どうしよう?すっごくピッタリな計画を思いついてしまった。


「エンマ様、呆れないで聞いてくれます?これならトキワ君を助けられるかも…………」

 

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