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赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


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エンマの隠し事



 エンマの空間移動を使い、先に2人でブラックウルフの事務所に入った

 後から到着する青木さん達には「タクシーの運転手さんが裏道を知っていた」とでも言えば良いかな?

 ちょっとの嘘だけど、やっぱり言うのは気分が良い物ではないな。



「エンマ様の力って、本当に便利ですよね。これが私にも出来たら、毎日通勤電車に乗らなくても良いんですけど」


「人の世はしがらみが多いからな。それがあるからこそ学ぶべきことにも出会う。……私のように距離の概念が無い移動手段を使えたら、まずマコモは運動不足になるな。それを思えば通勤の移動も悪くはあるまい」


 もしかして、私が一言多いって冬賀さんに言われるのは、エンマからの影響じゃないだろうか?確かに言われてみると、ちょっと複雑な気持ちになる。


「エンマ様は運動しなくても健康を保てるんだから良いですよね。人の体はバランス良く食べて、運動もして、それでも病気したりするんですから」


 エンマは私が言い返した事なんて百も承知なんだろうけどね。

 数え切れない程の数、人の生涯を見てきているのだから。


「そうだな。私の体は人間とは似ているが、大いに異なる所もある。だがもし私が病に伏せるのであれば、それは私の役目が終わる時だ。人とは違う責務を負うが故、それは致し方がない」


「エンマ様の役目が終わる時って、それっていつとか分かるんですか?」


 冬賀さんと話をした時、エンマの寿命は数百年単位だと言っていたけれど、本当だろうか?


「分かるような、分からぬような、だな。その閻魔大王である者の生き方に寄って大いに異なる。私の場合は……今後の結果で決まるであろう」


「今後の結果って……。もしかして冥府の人達に支持されないと閻魔大王でいられないとか?じゃないですよね。だとしたエンマ様も結構気を抜けない立場ですね」


「そうではないっ」


「え?それじゃ何の結果で決まるんです?……前から聞きたかった事なんですけど、私ってエンマ様の力を引き込んで使ってますよね。あの力って、もしかしたら『エンマ様の生きる力』みたいな物だったらどうしようって……。

 私が力をもらう度に、エンマ様の寿命が減っているのなら使わない方が良いのかな?とか気になっていて」


 ずっと知りたかった事を聞く事が出来た。

 でもそれが真実だとしたら、この先使うのが怖くなる。


「……マコモも気が付いてはいたのか。そうだな、私がマコモに渡している力は、私が閻魔大王として生まれながらに蓄えている力。生命力のようなものだ。

 だがな、私はずっとそれを誰かに託したいと思っていた。私はこの力を渡せる相手を、探していたのだ」


 待って!?エンマは今、とんでもない事を言ったんじゃない?



 自分の生命力を誰かに渡したいなんて、そんなのエンマが自分の死期を早めたいと思っているって事でしょ?

 そんなの黙って聞いてられないよ。


「駄目っ!そんなの絶対に駄目です。私をそんな事の為に使わないで下さいっ」


「なにっ?マコモ、これはとっても大事な話なんだ。黙って最後まで聞いてくれ」


「嫌ですっ!そんな話は絶対に聞かないし許しませんっ!私は必ずエンマ様を長生きさせますからっ」


「マコモ、とりあえず落ち着いてくれ。人の話は最後まで聞くものだ」



 いつも俺様気質でツンとした態度のエンマに、生きる力を失いたい願望があるなんて知らなかった。私はエンマの取り繕われた、表の顔だけしか見ていなかったのか?


 目の前にいるエンマはブラウンカラーの落ち着いた姿だ。

 エンマは赤くなくても綺麗だから、もしこのビジュアルで出会っていたとしても、私は間違いなく見惚れていただろう。


 怒りっぽくて、性格に一癖があるのもスパイスみたいなものだ。

 そんなエンマだから私の心を刺激する。


 そんなエンマが居なくなる未来なんて、考えられない。


 話を聞かねばならないのなら、何としてでもエンマが自分の命を粗末にするのを止めさせないとっ。



 事務所の入り口に人の気配がしている。皆も事務所に着いたらしい。


「此処で冬賀達との話し合いが終わったら、マコモの部屋に移動してそこで続きを話すとしよう。それでよいか?」


「分かりました」


「そうか、それならば……」



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