対面2
口元を押さえていた陽太さんの手が滑り下り、白い喉元を抑えた。
陽太さんの両手は重ねるように首に当てられ、目は尋常じゃない程に見開かれている。
「不味いぞこれは、首を締め上げている。陽太君の体を人質に、退魔の術をやめさせるつもりだろっ」
陽太さんの手はしっかりと首に当てられ、全く離れる様子は無い。苦しみから逃れるように、陽太さんの体はコンクリートの床に倒れた。
青木さんが陽太さんの背後から腕に手を掛け、どうにか手を首から外そうとしているけれど、妖魔に操られた力は強いらしく思うようにはいかないようだ。
「冬賀さんっ、陽太さんがっ!」
「分かってるっ!だが力技で手を首をから外しても、今度はまた別の手段を取られるだけだっ。もう一度、術をかけて徹底的に妖魔を弱らせるっ」
冬賀さんは霊符を手に、怒りの形相ながらも静かに口を動かし言葉を唱えている。
予想もしなかった事態に足が震える。
私が何もしない内に、陽太さんの身に取り返しの付かない事が起ころうとしているんだ……
ドクドクといつもより早く鳴る心臓の音が煩わしい。
そんな私の横を、1人の背の高い人が通り過ぎた。
「あともう少しだマコモ。準備をしておけ」
今の声って、まさか……。
その人は長い髪を後ろで1つに束ね、その色は赤ではなくダークブラウン。エンマの色では無い。
冬賀さんも驚いた顔をして、今通り過ぎた人を目で追っている。
冬賀さんも聞いたよね?あの人、私の事「マコモ」って呼んだよ?!
その人は、既に出来ていた人集りを押しのけ陽太さんの前に立つと、長い腕を横たわる体の上に伸ばした。
クビを締められる苦しさから、逃れるように動いていた陽太さんの体の動きが何故か止まる。
長い足は冷たい床に投げ出され、首を締め上げていたはずの両手も、顔の横に力無く置かれた。
全く動かなくなってしまった陽太さんの体は、人の集まる場では酷く異質に見えて、まるでそこだけ時が止まってしまったみたいだ。
「命、命を奪ったのか?何をしているんだっ、閻魔大王はっ」
冬賀さんの声は聞こえているけれど、私はその意味を分かりたくはなかった。
あれは本当にエンマなの?
エンマなら、あんなに簡単に人の命を奪ったりはしないはずでしょう?!
目の前で起こっている出来事が受け止められない。
でもエンマが命を奪ったのなら、それは陽太さんの魂を救済する為だったはず。
私達は、私は、陽太さんを救えなかったんだ……




