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赤い瞳の冥府の王は白き乙女を手放せない  作者: なかな


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夢で会えたら


 私が「ブラックウルフ」で働くようになってから、エンマからの念話が無い。

 こんなに念話が来ないなんて、子どもの頃から今までの中で初めてでは無いだろうか?


 私の手首の「紋」はエンマに繋がっているので、そこに意識を集中すれば私からも話は出来るが、何しろ相手は「閻魔大王様」だ。

 今、どんな大事な職務の途中かも分からないのに、大した用も無く念話はしづらい。


「エンマ、何してるんだろ。妖魔、私が倒さなくても大丈夫なのかな?」


 しばらく妖魔を倒していないから、エンマから力をもらう事もなくて物足りなさが付きまとう。空っぽというか、どこへ行けば良いのか分からなくなったような心許なさが付きまとう。


「依存、か。私はエンマ依存だったのか……」


 自分の足で立とうと思ったばかりなのに、気がつくとエンマの低く響く声を聞きたいと思ってしまっている。


「だから相手は閻魔大王なんだって。私ばかりに構っていられる訳じゃ無いからっ」


 私は夢の中でならエンマに会えるかもしれないと、早めに眠りに付いた。





 ーーー 夢で会えたら(エンマ視点)ーーー



 何となくマコモに呼ばれた気がして「映しの鏡」を覗き見ると、呼んでいるどころか彼女は早くもベットで眠りについていた。


「随分と早く寝るんだな。子どもか?」


 新しく始めた冬賀の所の仕事で疲れているのだろう。

 その事も有り、多忙なのだろうと最近はマコモに念話さえも送っていなかった。

 話してしまえば顔を見たくなり、会いに行きたくなってしまうから。


 会いに行ったらまた、マコモに色々言われてしまうのだろうな。


 そう思うとまた、彼女へ念話を送るきっかけを見失う。


 彼女に全てを話してしまえば、理由などは色々と付けずに会いに行けるのだが、それを言ってしまうと逆に全てを失ってしまうのかも知れない。


「私に好かれて喜ぶなど、ある訳無いな」

 

 マコモが幼い頃はまだ良かった。キラキラした瞳を私に向けてくれていたから、私は好かれている自信さえ持っていた。

 私が彼女を抱き上げれば、喜んで彼女も小さな手を私に伸ばしてくれた。


 鏡に映し出される熟睡中の彼女は、幼い時に見たような真っさらな顔をしている。


「今行けば、彼女に知られずに会えるのではない、か?」


 私は罪の種類にも色々あると知っている。


 これは、私が私にギリギリ許せる程度の罪だ。


「マコモ、少しだけ、会いに行かせてくれ」


 私は彼女の寝室へと降りていった。





 ーーー 夢?が覚めたら ーーー



「寒っ……」


 2月の朝はまだ寒い。

 カーテンの隙間から漏れ出す朝の光が、今日は快晴だと教えてくれるけれど、布団から出るには後少しの覚悟と勇気が必要だ。


「むふっ、ふふふっ」


 私の願っていた通り、もの凄く良い夢を見られてしまった。


 エンマが私の耳元でささやいて「マコモは偉いな、よくやっている」って褒めてくれる夢だ。

 エンマの大きな手が私の頭をゆっくり撫でて、頬と耳に触れる。

 エンマの香りが近くから香って、私は目一杯に息を吸い込んだ。


「香り……。夢って匂いとかするんだっけ?」


 脳のバグなんだろうか?私の妄想が強すぎたせい??


「起きよ」


 今日はきっと、良い1日になるはず。



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