6 巻き戻り お茶会の二日前 ~レオンハルトside
昨日、マリーベル嬢の事故を回避するために考えた、お茶会当日に王家の馬車で送迎するという案。
なんと、公爵家当主より正式に断られてしまった。申し訳ないという理由で。
では、どうしたらいいんだ?
お茶会当日まであと二日しかないんだぞ!
焦ってばかりで、解決策が見つからない。駄目だ。落ち着いて考えるんだ。何か方法があるはず。諦めるわけにはいかない。
あれは馬車の事故だったのだから、やはりどうしても馬車だけは代えたい。でも、王家の送迎では、申し訳ないと断られてしまった。
それならば…
王家の安全な馬車を贈ればよいのではないか?マリーベル嬢が確実に使う馬車として。
―――でも、また遠慮して断られてしまうこともある。どうしたらいい?
焦ってはいるが、無情にも時間ばかりがどんどん過ぎていく。
なんとしても、マリーベル嬢を救いたい。
最後の手段。
私は、また兄上に相談に行くことにした。優秀な兄上ならどうにかしてくれるのではないだろうか?
もうお気づきだろう?確かに第一王子アレクシスは次代の王となるべく大変優秀だった。ただ、とにかく弟が大好きすぎたのだ。弟のためなら、何でもしてくれるだろう。
―――果たして。
「お待ちしていました。」
レオンハルトは、もうノックすらしようとしない。なぜかいつだって侍従によって先にドアが開かれるからだ。
「はっ。はっ。もう、少し、待って、くれ。」
兄上は、今日はスクワットに取り組んでいる。体からは汗が流れ、足がぶるぶると悲鳴を上げているかのようだ。
(なぜ、兄上はいつも筋トレをしているんだろう?王子として、体を鍛えて頑丈な体と心を自分のものにしようとしているのだろうか?すごい心構えだ。私にはちょっと真似ができない。いやそれどころではない。ないのだが…)
兄上の荒い息遣いを聞きながら、私はいつものように紅茶を飲んで待つ。
しばらく待つと、兄上が筋トレを終えたが、疲れからか動けずにいる。
そのうちに、荒い息遣いが少しずつ治まってくる。
「なんだか、辛い筋トレがだんだん楽しくなってくるから不思議だ。―――あ、すまない。それより、今日も私を頼ってくれて嬉しいよ。レオン。今日の相談は何だい?兄さまが何でも望みをかなえてあげよう。遠慮はいらないよ。さあ言ってごらん。」
次から次へと吹き出てくる汗を拭きながら、輝くほどの笑顔で声をかけてくる兄上。
「どうでもいいんだけど、マリーベル嬢に馬車を施したい。断られても平気だが…」
(心配だから、王家の万全な状態の馬車を贈りたいんだよ。どうしたら断られずに贈れるだろうか?兄上、どうか教えてくれ!)
「そうか、そうか。マリーベル嬢の送迎は断られてしまったものな。ん~。それなら、王家の最高級の馬車を王命で贈ったらどうだろう?だって、マリーベル嬢は、可愛い第二王子の婚約者だろう。そのくらい、王家として準備するのは当たり前だろうという体でな。これなら、もう公爵も断ることはできまい。」
「その考えはあまり良くないな。ただ、王命の出し方は知ってるけど…」
(さすが、兄上。素晴らしい考えだ。ただし、王命にするなんて私にはどうしたらいいのか…)
「もちろん、兄さまに任せておけ!父上に進言して、今日中に準備してやるよ。可愛い弟に頼られたんだ。全力でいくよ。父上をうまく言いくるめ……いや。心配する必要はないよ。早速話に行くから、レオンは、お茶会の準備の方を頑張るんだ。」
兄上はそう言うと、父上に話に行く準備をされた。
私は兄さまに言われたとおりに、兄さまの部屋をすぐに退出した。
驚くことに、その日の夕方には、フェルディナ公爵家には豪華な馬車が御者付きで贈られることが決まった。馬車自体はお茶会当日に贈られることになる。
もちろん、王命である。
これで、お茶会当日には、事故を起こした馬車ではなく、王家の安全な馬車で行き来できるようになるだろう。
「はぁ~~~~っ」
どうにか間に合ったことに、緊張していた体の奥から息を吐き出す。
明日はとうとう…
あのお茶会まであと一日と迫る。
事故は回避できるだろうか?
マリーベル嬢は無事だろうか?
私は、床に就きながら考えを巡らす。
そして、私の準備にまだ穴があることに気づいてしまい、眠れぬ夜を過ごすことになってしまうのだ。
私の戦いはまだ続く。
二回目のお茶会まで…
―――あと一日!
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