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4 二回目のお茶会 ~レオンハルトside



二回目のお茶会に向け、私は兄上に相談することにした。


兄上の部屋をノックしようとすると、兄上の側近がドアを開けてくれた。


「すぐ終わるから、少し待っていてくれないか?」


兄上は、なぜか部屋の中で腕立て伏せをすごい勢いで行っていた。


「また後で…」


都合が悪いならまた後で来ようと、後ろを振り向こうとすると、兄上が焦ったように声をかけてきた。


「はっ…はっ…あと…三十回!…すぐだ。…待て。」


腕立てをしながらも、必死に止めてくるので、仕方なく待つことにした。


部屋の中には、侍従が優雅に紅茶を準備する音と、兄上の苦し気な腕立ての呼吸音。


しばらくすると、兄上がかなりの汗を滴らせながらも満面の笑顔で私の前に腰を下ろした。


「レオン!来てくれて嬉しいよ。困ったことがあったらいつでも、どんなことでも相談に来るんだよ。それが兄としての役目だからね。あ~楽しみだな~。今日の相談は、何かな?」


汗を拭きながらも、にこにこと饒舌に話し始める兄上。私は何から話していいものか悩みながらも、相談を始めることにした。


「―――お茶会の場所…」


「ああ。それならお茶会の頃、色とりどりの花が咲き乱れる庭園の中の東屋がいいのではないか?」

(確かに、マリーベル嬢は、花を見るのが好きそうだからそれはいいな。)


「―――お菓子…」


「ああ。それは、もちろんマリーベル嬢が好きそうなお菓子をそろえるんだ。なるべくいろいろな種類があった方がいい。」

(マリーベル嬢は、タルトが好きって言っていたな。いろいろなフルーツをのせたタルトを準備したいところだけど。料理長に相談に行けばいいかな?)


「―――それと…」


「そうそう。お前には私が選びに選んだ優秀な側近を付けよう。タクティス侯爵家のノアだ。手配は全て執り行ってくれるはずだ。ノア!頼んだよ。」


「もちろんです。私がノア・タクティスです。以後、お見知りおきを。」


そうして、二回目のお茶会に向けての準備を整えていくことができた。




お茶会当日。


マリーベル嬢に会えるのがうれしくて、王宮の入り口まで迎えに行こうかと思ったら、ノアに止められてしまった。マリーベル嬢が到着してから、東屋で待っている方がよいのだという。


私は、東屋で待っていることにした。それにしても緊張する。あまりの緊張に、早めに席についてしまった。しかも、話してもいないのに、のども乾いてきた。

待っている間、紅茶を出してもらい、お茶会の準備は万端なのか、確認していくことにした。


(庭園の花、よし!花瓶のバラ、よし!タルト、よし!)


そうしているうちに、待ちに待った妖精、マリーベル嬢が到着した。


「遅れてしまいましたか?大変申し訳ございません。」


その声に、マリーベル嬢を見ると、深い青色のワンピースに目が留まる。

(なんて、素敵なんだ。落ち着いた深い青が似合う。それに、かわいすぎる。あ~心臓の鼓動が高まって、周りにも聞こえてしまいそうなほどだ。)


「あの~。本当にお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。」


「あ! だ、大丈夫だ。――座って。」

(全然待ってなんていない。マリーベル嬢のためなら何時間でも待てる。待つ時間さえ、きっと幸せを感じるだろう。いけない。立たせたままだった。)


私はなんとか、マリーベル嬢を座らせることに成功した。

(マリーベル嬢が席に着いただけで、優しい花の香りが漂ってきた気がする。これは、幸せという名の花の香りか?)


「わあ~っ!前回、見せていただいた珍しいオレンジ色のバラの花がたくさん。素敵ですね。本当にいい香りがします。」


マリーベル嬢が目を見張った後、うれしそうな表情をする。

(気づいてくれたんだ!うれしいな。マリーベル嬢がきれいだと言ったオレンジのバラだよ。君のためなら、いくらでも準備するよ。君の笑顔が見られるなら喜んで。)


「――紅茶、でいいか?」

(自分ばかり、先に紅茶を飲んでいてしまった。しかも、緊張のあまり、もう二杯目だ。マリーベル嬢は紅茶は好きかな?もっと早く声をかければよかったかな?私はなんて気が利かないんだ。)


「はい。ありがたくいただきます。」


マリーベル嬢のあまりにかわいらしい声に、先ほどまでの心配も吹き飛んでいく。

そして、マリーベル嬢は、目の前に並んだフルーツのタルトを見て、目を輝かせていく。

(喜んでくれたかな?それにしてもマリーベル嬢の表情が変わる瞬間、かわいくてずっと見ていられる。あ~また忘れるところだった。早くフルーツタルトを食べてもらいたい。声をかけなければ…)


「食べると、いい。」


「嬉しいです。それでは、大好きな桃のタルトをいただきます。」


そう言って、マリーベル嬢は桃のタルトを食べ始めた。私は、紅茶をいただきながら、気づかれないように視線を向ける。

(やはり、一番好きなのは桃のタルトか?小さな口でもぐもぐと食べる姿。小さな動物のようでなんてかわいいんだ。は~幸せだ。)


「とてもおいしいです。でも、レオンハルト様はよろしいんですか?」


そんな時、マリーベル嬢からかけられた言葉。

(――今……「れおんはるとさま」って。

あの、妖精のようなかわいいマリーベル嬢が…

私の名を―――)


なんだか、心臓がどきどきと大きく脈を打って、苦しいようなはじけ飛ぶような…

そんな気持ちになり、私は胸を押さえてしまった。


「…ああ。」


「もしかして、お加減がよろしくないのでしょうか?」


私がときめきと戦っているうちに、心配したマリーベル嬢が私の様子をうかがってきてくれた。美しい水色の瞳が私を心配そうに見つめてくる。


「…げん…。ん、んんっ。だ、大丈夫だ。」

(限界だ!私の心臓が――いやいや!そんなことを言っている場合ではない。こんな気持ちでいることを知られるわけにはいかない。何とかごまかさなければ…)


私は、一つ深呼吸をして心を落ち着かせると、姿勢を正した。


「無理はなさらないでくださいませ。また、次のお茶会も楽しみにしておりますので…」


そんな動揺を悟られたのか、無情にもお茶会の終わりの声がかけられたのである。

(こんなに、無口で気の利いたことも話せない私なんて、つまらないものな。無理に伸ばして、嫌われたくはないし、仕方ないか?次があるって、社交辞令じゃないよな?嫌いにだけはならないでほしい。)


「――ああ。」



そうして、二回目のお茶会が終わった。


名残惜しくも、せめてもう少しだけとマリーベル嬢を馬車のところまでエスコートした。

今日のお茶会の自分の言動を一つ一つ反省しながら…

それでも、今こうしてマリーベル嬢をエスコートできる時間だけは幸せだった。

私の腕に、マリーベル嬢の小さな手が優しく触れている。


マリーベル嬢の馬車が出るまで、ずっと目が離せなかった。

次こそ、お茶会がうまくいくことを願って―――



しかし、不幸はいきなり訪れた…



マリーベル嬢の乗った馬車が故障により横転し



―――マリーベル嬢が亡くなってしまったと…




それを聞いた途端――



私の世界から、全ての音が消えた。




だけど、おもむろに思い出す。



私のギフト――”時を戻す魔法”



何も、考えられず私のすべての力で魔法を発動した。



「お願いだ!事故の前に巻き戻ってくれ!!」



そのまま、私の意識は遠のいてしまった。


お読みいただき、ありがとうございます!

これから週に3回程度の投稿を続けていきます。

よろしくお願いいたします。


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