3 二回目のお茶会
今日は、とうとう二回目のお茶会の日だ。
私は、今日のためにとびきりのおしゃれをした。あんなに素敵なレオンハルト様にお会いするんだから、少しでもかわいいと思っていただきたいもの。
今日は散々迷った挙句、レオンハルト様の瞳の色に似た青色のワンピースを着ることに決めた。髪型はどうしましょうか?これに似合うリボンは何色にしようかしら?
そんなことを考えて準備していたら…
なんと、出かける予定の時刻を過ぎてしまっていた。
私は、慌てて玄関を出た。
すると、いつも乗っているものではない、馬車が準備されていた。執事に尋ねると、なんでも、急にお兄様がお出かけする用事ができてしまい、先に準備されていた馬車を使ったということだった。
私も、レオンハルト様のお茶会に遅れるわけにはいかないと、すぐさま出発することにした。
私はどうにか、予定の時刻までに王宮にたどり着くことができた。
「マリーベル様、お待ちしておりました。お茶会のお席へご案内いたします。」
そう言って、侍従が案内してくれたのは、色とりどりの花の咲く美しい庭園の中にある東屋だった。
そこに着くと―――
すでにレオンハルト様が紅茶を飲みながら待っていてくださった。
「遅れてしまいましたか?大変申し訳ございません。」
私が、焦ってそう謝ると、レオンハルト様は驚いたように目を見張り、動かなくなってしまった。
「あの~。本当にお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「あ! だ、大丈夫だ。――座って。」
レオンハルト様はそれだけ言うと、顔を赤くされてしまった。
(かなり待っていてくださったのかしら?本当に申し訳ないわ。)
私は、席についてやっと気が付いた。テーブルには、珍しいと言われるオレンジ色のバラの花がたくさん飾ってあった。
「わあ~っ!前回、見せていただいた珍しいオレンジ色のバラの花がたくさん。素敵ですね。本当にいい香りがします。」
私は、嬉しくなって、レオンハルト様にお伝えした。すると、レオンハルト様は、一瞬目を細めて、優しそうな表情をなさった。その表情を見た瞬間、私の胸の奥がドキンと音を立てた気がした。
「――紅茶、でいいか?」
レオンハルト様は、心配そうな表情をしながら、飲み物の希望を聞いてくださった。
(言葉は少ないけれど、私の希望を聞いてくださる。なんてお優しいんだろう。)
「はい。ありがたくいただきます。」
そう返事をすると、メイドが私のところに紅茶を準備してくれた。更に、出されたお菓子を見て驚いた。そこには、様々な種類のフルーツのタルトが並んだからだ。
(もしかして、前回のお茶会の時に私が話した言葉を覚えていてくださったのかしら?)
そう思った途端。私の心がふわっと温かくなったような気がした。
「食べると、いい。」
「嬉しいです。それでは、大好きな桃のタルトをいただきます。」
私が食べている間、レオンハルト様は紅茶を飲みながら穏やかな顔をされていた。
「とてもおいしいです。でも、レオンハルト様はよろしいんですか?」
「…ああ。」
レオンハルト様はそう言うと、ご自分の胸を押さえて何かを我慢されているような表情をされた。
「もしかして、お加減がよろしくないのでしょうか?」
「…げん…。ん、んんっ。だ、大丈夫だ。」
私が心配して声をかけると、レオンハルト様はなぜか焦ったように返事をして、姿勢を正された。
「無理はなさらないでくださいませ。また、次のお茶会も楽しみにしておりますので…」
私がそう伝えると、レオンハルト様は一瞬悲しそうな表情をされたが、向き直って声をかけてくださった。
「――ああ。」
そうして、二回目のお茶会が終わった。
レオンハルト様は、お忙しいはずなのに、私を馬車のところまでエスコートしてくださった。やはり、体調があまりよろしくないのだろうか?終始うつむき加減で、お顔も心なしか赤くなされていた。
私の乗った馬車が出るまで、お見送りをしていただいた。
帰りの馬車の中で、今回のお茶会でのレオンハルト様を思い出していた。
お兄様には、氷のように心を閉ざした方だとは聞いたけれど、全くそんなことはないと分かった。口数は少ないけれど、とてもお優しい方だと分かった。しかも、深い青の瞳がとても素敵な王子様。そんなレオンハルト様のことを考えるたびに、私の胸はドキドキしてきてしまう。
そんな素敵な方だから、より心配になる。私の今日の行動はどうだっただろうか?今日は、少し遅くなってしまい、レオンハルト様をお待たせしてしまった。レオンハルト様は、お優しい方だから何も言わなかったけれど本当に大丈夫だろうか?時間を守らない娘だ、なんて幻滅されていないといいけど。
それに私だけが、大好きなタルトを食べてしまった。レオンハルト様にはどう思われたかしら…
今日の私の行動を思い起こすたびに、一つ一つがとても心配になってきた。
そんな時――――
ガタン!
急に、馬車が大きな音を立てた。
な、なに?
次の瞬間、馬車が勢いよく倒れ…
―――私は馬車の中で、体を強く打ち付けてしまった。
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