30 再び観劇デートへ
私たちが、初日に見に行った劇『あなたを誰よりも愛している』は、今や大流行していて、かなり長い期間演じられる予定となっている。
思えばこの劇で私は、レオンハルト様の言葉よりも気持ちに寄り添えるようになったように思う。だから、もう一度見てみたい。そう思っていた。
不思議なことに、私が劇をもう一度見たいと思っていることを話したことはなかったのに、レオンハルト様の方から改めて観劇デートをしないかというお誘いがあった。レオンハルト様は、私の気持ちが読めるのだろうか?と思ってしまった。
もちろん気持ちが読める魔法を持っているのはマリーベルであって、レオンハルトではない。実は、家でマリーベルが何度も劇のことを話しているのを聞いたリリアが、ノアにマリーベルの希望を伝えたのだった。ノアから聞いたレオンハルトはもちろんマリーベル嬢のことを喜ばせたい。ということで実現に至ったのであった。
二度目の観劇でも、やはり涙が止まらなかった。理解してもらえなくてもジルを愛する気持ち。思いやる気持ち。そして、ラルトからの深い愛に気づいていくジル。やがて、ラルトとジルの想いが重なっていくラスト。
まるで、レオンハルト様と私のようだとこの劇と自分たちを重ねてみてしまう。だから、余計に涙が出てきてしまう。レオンハルト様の想いに気づかないうちは、自信がなくて、嫌われているんじゃないかと不安になってしまっていた。もう諦めてしまおうかと思うほどに……
少し泣きすぎてしまって、恥ずかしくてレオンハルト様を見ることができなかった。なのに、レオンハルト様は、黙って私が落ち着くのを待っていてくれた。
「ゆっくりで構わないよ。かえって人がいなくなって、わずらわしい視線が減って助かる。何より、マリーベル嬢とこうして二人きりでいる時間が少しでも増えて、得した気分だ。」
レオンハルト様は、本当に優しい。いつも、私のしたいことを優先して合わせてくださる。
「ありがとうございます。もう落ち着きました。この劇があまりにもなんというか……私たちと似ているようで…」
あまりに恥ずかしく、そこまでしか話すことができなかった。その時―――
「殿下。本日はまたおいでいただき、ありがとうございます。この劇は、本当に好評で更に期間を延長して行われることになりました。もし、よろしければ、他にも脚本を書いていただけないかと近いうちにご相談に伺います。お考えいただければ幸いでございます。」
劇場の団長さんがわざわざレオンハルト様にお礼を伝えに来たようだった。それにしても、他にも脚本を書いてほしいとか言っていたような?私は気になって、団長さんが離れてから、レオンハルト様に聞いてみた。
「先ほど、他にも脚本を書いてほしいというようなお話があったようですが、今までも脚本を書かれたことがあるのですか?」
「ああ。実はこの劇は、私がある程度のあらすじを書いて、それを兄上が脚本にしたものなんだよ。」
それを聞いた途端―――
驚きに、動けなくなってしまった。
「この劇のあらすじを書かれたのですか?レオンハルト様が……」
「ああ。恥ずかしいけど、これは私の気持ちがマリーベル嬢に届いてほしいという願望の詰まった劇だよ。だから主人公がラルトとジル。レオンハルトとマリーベル。名前にも想いを入れてみたんだ。今、私の願いが叶って、本当によかったと思っているよ。私の想いを受け入れてくれてありがとう。私は今、とても幸せだよ。」
その言葉を聞いて、私は喜びと恥ずかしさで胸がいっぱいになってしまった。
しかし、次の瞬間気づいてしまった。お茶会が六か月も開かれなかったのは、この劇の準備をしていたからではないかと……
本当にレオンハルト様は、何に対しても人任せにすることなく、ご自分で努力をされる方だ。私は、そんなレオンハルト様に想っていただけて本当に幸せだ。
「私も、今、本当に幸せです。」
私がお礼を伝えると、レオンハルト様が何かをこらえるようにご自分の両手をぎゅっと握りしめて下を向かれた。
「レオンハルト様?」
「レオと呼んでくれないか?私と親しい人にはレオンと呼ばれているが、マリーベル嬢にだけはそう呼んでほしい。嫌かな?」
「……いえ。……れ…お…さま?ーーーーーっ」
もう私は、恥ずかしくて小さな声でそれだけ言うのがやっとだった。顔が熱くて、胸の奥がドクンとなった。こっそりレオンハルト様を見てみると――――
真っ赤な顔をして、それでも嬉しそうに私を見つめている。
「もうレオ様だけ、ずるいわ!これじゃあ、私だけ恥ずかしいじゃない。あなたも恥ずかしい目に遭うといいわ。私のことはこれからはベルと呼びなさい。特別なんだからね。絶対よ!」
ああ~。恥ずかしすぎて、ツンデレの言葉が出てしまった。どうしてここで!?
「っつ!分かった!そう呼ばせてもらおう―――んんっ!………べ・る。…愛してる!」
ひゃあぁぁぁぁぁ~何この破壊力。私の心臓壊れちゃいますよ。死にそうです。
「わ、私だって、その、愛してるんだから…こんなこと言うの、レオだけなんだからね。しっかり覚えておくことね!」
「ああ。忘れない。絶対に。」
この二人のあまりに甘い雰囲気に、侍女も侍従も誰も二人の世界に入ることはできなかった。
というか、入りたくなかった。
たとえ、劇場をそろそろ閉めたいと圧力をかけられ始めていたとしても……
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
とうとう次で完結です。
本日午前10時に出します。
前にあとがきで書きました、シャルロットを主人公にした短編も本日午前中に投稿します。
そちらも覗いていただけると嬉しいです!




