↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/31

25 やっと伝わる二人の気持ち ~レオンハルトside



父上に勇気をもって婚約の解消を願い出た。


それなのに、あと一度頑張ってみろという言葉をもらった。


その言葉を受けて、私は考えた。


確かに、本当に後悔しないのか?


あと一度、私の思いをぶつけてみてもいいのではないか?


機会をいただけた。


なら、やれるだけやってみよう!


そう前向きにとらえることができるようになった。



~~ ◇ ~~



そうして迎えた最後のお茶会。


私はいつものように御者になって、マリーベル嬢を迎えに行った。


そこで、不思議なことが起こる。


いつもは侍女に手を引かれ、静かに乗るマリーベル嬢が私に挨拶をしてくれたのだ。

しかも、「いつも安全に乗せてくれてありがとう」という感謝の言葉までかけてくれた。

あまりの驚きに、声を出さないように頭を下げることだけで精一杯だった。


気合を入れなおし、御者の変装を解き、会場に向かった。


そこには、深い青色のドレスに身を包み、私の贈った髪留めを付けたマリーベル嬢がいた。


しかも、私に向けて慈しみを持ったような優しい笑顔でだ。


「待つのも…」

(待たせたね。今日のマリーベル嬢も美しいよ。言葉ではうまく伝えられないけれど、今日は態度で君に私の想いを伝えたい。だから、私も笑顔でマリーベル嬢に返したい。)


「レオンハルト様を待つ時間も愛しく思います。あなたのことを考えていられましたから……本日もこうしてお茶会にお招きいただき、ありがとうございます。レオンハルト様にお会いできること、楽しみにいたしておりました。」


「残念だ!」

(なんという嬉しい言葉ばかりだろう!これは、夢ではないだろうか。マリーベル嬢が私のことを考えていてくれた?本当に?それなのに、私はこんな言葉しか言えない。こんな言葉しか言えない私では、いつしか君を本当に傷つけてしまう。やはり私では……)


「私やっと気づけたのです。言葉だけじゃないんです。表情や仕草をよく見ればよかったのかもしれません。今までの私の態度、申し訳ありませんでした。レオンハルト様が私のことをどれほど気遣ってくださっていたのか。ちゃんと分かりました。」


「何を…」

(どうして気づいてくれたんだ?私の想いを。私がマリーベル嬢を気遣っていることを…)


「レオンハルト様が言葉で何を言ってもかまいません。今日は、私の気持ちをお伝えします。その上で、この婚約を続けるかどうか、レオンハルト様の判断にお任せします。


――――でも、私はこの婚約を続けたいです。


だって、私は――――――


レオンハルト様をお慕い申し上げておりますから……」


恥ずかしそうに、顔を真っ赤に染めたマリーベル嬢の言葉を聞いた途端。


「はっ!」


あまりの衝撃に、私の呼吸が一瞬止まる。


その時―――


パリン!


私の胸の奥で何かが割れたような衝撃を感じた。


どのくらい時間が経ったのだろうか?


十秒だっただろうか?それとも一分だったろうか?


私の目からは…涙が…次々と流れ落ちてくる。驚きすぎて、嬉しいのか、悲しいのか、自分でも分からないほど感情が揺れ動いている。


気が付くと、なんとマリーベル嬢も私を見て涙を流している。


私は、あわててハンカチをマリーベル嬢に渡そうとした。


しかし、ふと思いとどまる。


「――――私が拭いてもかまわないかい?」


心配になって、そう聞くと、


「……は、い。……ありが、とう、ござい、ます…」


目を真っ赤に染めて、涙を流しているマリーベル嬢に向き合った。


そして、私は、瞳を閉じたマリーベル嬢の頬をなるべく優しくハンカチで拭いた。


拭き終わった後、私はマリーベル嬢を見つめたまま、優しくその手を取った。私の想いを伝えたい。そう思ったからだ。


「私に気持ちを伝えてくれて、ありがとう。本当にうれしかった。私は、こんな言葉しか……」

(あれ!私の想いがきちんと言葉として出ている。どうして……呪いは?)


私は驚きのあまり、言葉を続けることができなかった。そんな私に気づかずにマリーベル嬢は更に想いを伝えてくれる。


「どんな言葉でもレオンハルト様はレオンハルト様です。私が大好きなレオンハルト様です!」


マリーベル嬢の心のこもった言葉を聞いて、私の涙がまた流れてくる。なんて、嬉しい言葉なんだ。私の言葉を気にせずに、私のことを大好きだと伝えてくれるマリーベル嬢。


ここまで伝えてもらったならば、私も、私の想いを伝えなければならない。いや、伝えたい!


そこで、私はマリーベル嬢の手を優しく離した。


「……マリーベル嬢。今まで、厳しい言葉ばかり、浴びせてしまい、申し訳なかった。」


私は、今までの私の非礼を心の底から申し訳なく思って頭を下げた。


「今は、もう、気にしていません。これから……


あら!レオンハルト様、お言葉が、きちんと私に伝わっております。


どうして……」


マリーベル嬢は、驚いたような表情に変わった。そこで、再びマリーベル嬢の手を優しく握った。


「なぜかわからないけれど、今日こそ、きちんと私の想いも伝えられるよ。


――――私は、君を……


マリーベル嬢を――誰よりも愛している。


愛しているんだ!


……やっと。


やっと伝えられた!」


私たちは、お互いの手を握り合ったまま、しばらく涙を流し続けた。


今なら分かる。


これは、うれし涙だ。


お互いの気持ちが通じ合ったから。



今までの苦しみが嘘のように消えていく。


愛する人から、真実の愛を返してもらったことで―――


呪いが、解けたのだった。




お読みいただき、ありがとうございます!

やっとです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。