24 最後のお茶会
「はっ。はっ。はっ。はっ。これっ。はっ。たい。へん。だっ。」
第一王子アレクシスは、いつもの筋トレをしながら考えた。このままでは、レオンハルトが不幸になる。どうにかしなければならない。
息が整い、汗の始末が終わるころ。アレクシスはすぐに動き始めた。
まずは、父上。母上のところ。
「どうしたアレクシス。今度は何を画策している。協力してやるから、きちんと話せ。」
王は知っているのである。アレクシスがレオンハルトのことを第一に考えていることを。だから、いつもはある程度の頼みは聞いてやっているのである。
「それなら、率直に申し上げます。この後、レオンハルトはマリーベル嬢との婚約の解消を願い出るでしょう。しかし、これはレオンハルトの全くの思い違いです。自分はマリーベル嬢に嫌われているから自分が身を引いてマリーベル嬢に幸せになってもらいたいという。そんな思いからの解消なのです。しかし、実はどちらも相手を想い合っているのです。だから、婚約解消なんてことにならないためにも、あと一度お茶会できちんと気持ちを確かめるように言ってほしいのです。母上は、マリーベル嬢の母上に万が一婚約解消などという連絡が来ても、それは間違いなので次のお茶会にも必ず来てほしいと連絡をしてほしいのです。よろしくお願いします。」
アレクシスは、自分の計画を一気に説明した。確実に実行してもらうために、必要なことはすべて伝えた。
何度も言うようだが、アレクシスは有能なのである。特に弟が絡むことに関しては抜かりがない。
もちろん、父上も母上もすぐに行動に移してくれた。
はたして――――
レオンハルトが父上の前にやってきた。そして、婚約解消を願う手紙を渡したのである。言葉では正しく言えないので、書面にしっかりと書いたつもりだ。
緊張しながら父上の言葉を待つ。
「レオンハルト。お前の言いたいことは分かったよ。お前の思いもな。だからあえて言わせてもらう。手を尽くしてからの決断をしろ!後悔のないように。だから、私から一つだけアドバイスだ。あと一度、自分の本当の気持ちを伝えてみよ。自分の思いに素直にな。」
なんだか、なぞかけのような不思議な言葉だったが、父上の言葉は絶対だ。あと一度だけ、自分の思いをぶつけてみてもいいのではないか。レオンハルトは、不思議とそう思うようになっていった。
~~ ◇ ~~
一方、フェルディナ家では……
「どういうことだ?」
マリーベルを除く家族三人は、首をかしげた。
お茶会から帰ってきた次の日。マリーベルからは、王家から万が一婚約解消の通知が来ても、あと一度だけでいいので、お茶会を開くようお願いしてほしいと頼まれた。マリーベルの気持ちとしては、レオンハルトとの婚約をぜひとも継続したいという想いが強いようだった。今まで、あまり楽しそうにお茶会に行っている様子がなかった。だから、マリーベルの婚約を継続したいという強い思いが不思議だった。私たちはマリーベルがこの婚約に乗り気ではないのではと思っていたからなおさらである。
そこにきて、王妃様から母親を通じて、第二王子から直接婚約解消の手紙が来たとしても何かの間違いなので、気にしないでほしい。これからも仲良くしてほしいとの話が来た。
どこからというか誰からの婚約解消の話なのか?
誰も婚約解消を望んでいないのではないか?
「あ~一人だけいたな。」
もしかしたら、第二王子本人なのか?
そんなにもうちのかわいいベルのことが嫌なのか?
しかし、そんな奴だったか?
それでも、ベルと王家からの希望もあるからあと一回のお茶会は許すか?
それを見てどうするか決めよう。
フェルディナ家の面々は、そんな風に考えていたことをもちろん本人たちは知らない。
あと一度のお茶会はどうなるのだろうか?
~~ ◇ ~~
そうして開かれた最後のお茶会。
私は、深い青色のドレスを着て、レオンハルト様にいただいた髪留めを付けた。
今日は、魔法は使わない。もう使わなくてもレオンハルト様の気持ちに気づいたからだ。
「いつも、安全に気を付けて乗せていただいてありがとうございます。今日もよろしくお願いいたします。」
私は、初めて御者に丁寧な挨拶をした。レオンハルト様は、体を驚きに揺らしたが、何も言わず頭を少し下げて答えてくださった。
お茶会の会場についても、レオンハルト様をゆっくりと待てる。だって、御者の変装を解いてからなるべく急いで向かってくれていることを知っているから。
こうして考えると、レオンハルト様はどれだけ私のことを大切に思ってくださっていたのだろう。本当にありがたく、胸の奥がほわっと温かくなるようだった。
テーブルの上を見ると、私が一度大好きだと話したオレンジのバラの花が飾ってある。珍しい色なので、毎回準備するのも大変なことだろう。もしかしたら、王宮の方ではなくて、レオンハルト様本人がご準備くださったのかもしれない。
いつも、おいしい紅茶やお菓子も。よく考えたら私が一度でも好きだと言ったものが必ず次には並んでいる。それを誰よりも覚えていてくださったのも、レオンハルト様なのかもしれない。そう考えると、紅茶やお菓子を準備してくださったのも、レオンハルト様なのではないだろうか。
あ~なんてことだろう。
レオンハルト様の言葉ばかりに気を取られ、悲しんでいた自分の勘違いに情けなくなる。レオンハルト様は、ドレスや髪飾りを贈ってくださったこともあった。それも全て私の好きな色だったのではないだろうか。
私は、レオンハルト様にたくさんの想いをいただいていたんだ。
今日は、私がレオンハルト様に気持ちを返す番だ。
レオンハルト様がいらしたら、真摯に伝えよう。
たとえ、レオンハルト様がどんな言葉を返そうとも。
その裏には、私を想うレオンハルト様の温かい気持ちがあると分かったから……
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