23 それぞれの思いのお茶会
私は、決めた。
次のお茶会でレオンハルト様の気持ちをしっかりと受け止めたいと。
魔法を使って、きちんと気持ちを確認する。何らかの理由で、本当の気持ちを言えないのなら、私が正しく受け止めればいい。劇の中のジルのように……
そうして迎えた久しぶりのお茶会。
いつものごとく遅れて現れたレオンハルト様。いつもより緊張されて硬い表情のまま、席に着かれた。私にまで、緊張が伝わるようだ。
「お招きいただき、ありがとうございます。(レオンハルト様の本当の気持ちを聞かせて……)」
「ああ。」
(本当に待たせてすまなかったね。御者から変装を解くのも慣れたけれど、やはり待たせてしまうからね。それよりも、今日は最後のお茶会になってしまうかもしれない。はあ~。寂しいな。だめだ!今日は、マリーベル嬢との思い出をよいものとして残すんだ。)
(えっ!今、信じられない言葉が聞こえてきた……)
(――――――最後のお茶会!?どういうこと?)
「レオンハルト様ったら、おかしいんじゃないの?いくら私に会うからって、緊張のしすぎよ。そんなに私に会いたいのかしら…」
(不敬な口調で申し訳ありません。レオンハルト様が緊張されているから不思議に思って。それが、最後のお茶会だからなんて言いませんよね?)
「会いたく……」
(それは、会いたいよ。許されるのならいつも。それにしても、私の緊張が伝わってしまっているのか?こんな表情をしていたのでは、マリーベル嬢も楽しめないよな。最後なんだ。どうか楽しんでほしい。君の笑顔を見たい。)
「もしかして、こ、こんなにかわいい私ともう会いたくないの?会わなくても平気なの?」
(どうして、そんなに最後のお茶会にしようとするの?もしかして、私とはもう会いたくないとか?婚約が解消されちゃうの?レオンハルト様はそれでもかまわないとお考えなの?)
「ああ。ん、んっ!」
(違うよ!会いたくないなんて思ったこともない。平気なわけない!君と会えなくなるなんて考えただけで苦しくなる……でも、私の口から出てくる言葉は、会いたくないという言葉ばかり。それでは、私の言葉からだけでは私の本当の気持ちは分かってもらえない。)
レオンハルト様は、咳をすると、慌てた気持ちを落ち着かせるかのように、紅茶を飲み始められた。私も、どきどきと心配で高鳴る心臓を落ち着けたいと、同じように紅茶に口を付ける。
それでも、どうしても不安からレオンハルト様の気持ちを少しでも探りたくなる。
「わ、私にだけは、本当の気持ちを教えてくれてもいいんじゃなくて…?レオンハルト様は、その……わ、私のこと、どう思っていらっしゃるの?」
(もうこうなったら言葉でなく、心で思っていることを教えてください。魔法で読み取りますから…知るのは怖いけれど、このままでは絶対後悔する。だから教えて!私のことをどう思っているのか……)
「君が、一番きら……んっ!ごほっ!ごほっ!ごほっ!」
(もちろん、君のことが大好きだよ。誰よりも。言葉では言えないけれど。あ~正しく言葉が伝わればいいのに……×××のせいで言えないなんて……)
レオンハルト様は、何かが原因でやはり思ったことが正しく伝えられないのね。大丈夫です。正しく読み取ります。
えっ!今、なんて……
――――――君のことが大好き!?
つまり、私のことをレオンハルト様が大好きだってこと!
「も、もしかして、私のこと大好きなのではなくて。それなのに、レオンハルト様は、こういうお茶会をもう終わりにしたいのかしら……最後のお茶会にして、美しい思い出にしたいだなんて私、望んでいなくてよ。」
(ツンデレの呪いって恐ろしいわ。隠しておきたい気持ちも時々変な言葉で出てきてしまうもの。それより、最後のお茶会について聞いてしまったわ。どう思っていらっしゃるのかしら……)
「君には、分から……ん、んっ」
(君には何でも分かってしまうんだね。そうだよ。君のこと、大好きだよ。好きだからこそ、こんな私は身を引きたいと思ったんだ。君の幸せを考えたらね。だから、今日のお茶会を最高の思い出にして、婚約を解消しようかと思う。こんな男で、本当にすまない。)
えっ!
つまり、私のことが大好きだから、私のことを考えて、婚約を解消しようと考えているってこと。だから、今日が最後のお茶会…なの…?
「ゆ、許せないわ。そんなの。私の気持ちを考えてくれていないじゃないの。私だって、レオンハルト様のこと。その。ちゃんと……思っているんだからね!」
(そんな勝手に決めちゃうだなんて、悲しいわ。私の思っていることも知らないじゃないの!勝手に婚約解消だなんて。こちらは望んではいないのに……)
「いや。」
(そんなことを言ってくれてありがとう。本当に君は素敵な女性だ。そんな君と、ひと時でも婚約者でいられたことを幸せに思うよ。これからは、君をもっと幸せにできる人と一緒になってくれ。心から、君の幸せを願っているよ。)
私が、どう言おうともレオンハルト様は、今回を最後のお茶会として、婚約解消に動こうとしている。このままではいけない。一度帰って、お父様に正直にお願いしてみるしかないかしら。相手は、王族。もし、本当にこのまま婚約解消の連絡が来てしまったら……
私は、不安で不安でもうどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
私は、レオンハルト様の手に自分の手をそっと重ねた。この手を離してしまったら全てが終わってしまいそうで、つい力が入ってしまう。そして、レオンハルト様をじっと見つめた。
手を重ねた瞬間、体を震わせて驚いたレオンハルト様も、私の真意を探るように心配そうに私を見つめてくる。
「ま、また、次のお茶会で。別に、た、楽しみになんかしていないからね。絶対よ。約束だからね。」
私は、このまま何もできずに終わってしまうことのないように、次のお茶会を開催することをお願いした。ツンデレの呪いで正しく伝わったかは分からないけど、今できる精一杯の態度でお願いしたつもりだ。
「帰れ…ん、んっ」
(あ~終わってしまうのか。帰ってほしくはないけれど、馬車の準備もしなければな。マリーベル嬢を救うために魔法を使えてよかった。マリーベル嬢が生きているんだから…こんな×××があっても悔いはない。さあ、マリーベル嬢が屋敷に安全に帰れるように最後まで御者として務めよう。こんなことするのももう最後かもしれないな。さあ、急いで準備しよう。)
レオンハルト様は、そう言い残してこの場を後にされた。私は、準備ができるまで、馬車乗り場で待つことになる。
移動しながら、先ほどレオンハルト様の心を読み取った内容について考えてみた。
混乱している。
だって、私を救うためにレオンハルト様が魔法を使った?私が生きていてよかった?つまり、私はレオンハルト様が魔法を使わなければ……死んでいたってこと!?
レオンハルト様が思ったことを正しく言えないのは、もしかしたら……
――――――呪い!?
そう考えれば、全ての辻褄が合う!
しかも、レオンハルト様は、今馬車の準備をしている?御者として私を屋敷まで送る?
それって今までも?
私は、どれだけレオンハルト様に守っていただいていたのだろうか?
深い、深い愛情で。
それなら……私はどうするか?
――――――もう、覚悟を決める!
お読みいただき、ありがとうございます!
やっと、覚悟を決めました!




