19 お茶会に現れた美女
お茶会が終わった。
混乱したまま帰ってきた私だったが、後日ゆっくりと考えを整理していくことにした。
まず、レオンハルト様の言葉は―――
「あまり」「君が嫌い」「次はない」……
私に対して否定的なものがほとんどだった。だから、私は嫌われていると感じていた。
でも、今回魔法を使って思っていることを探ったら
「かわいい」「うれしい」「ごめん」……
言葉とはまるで違う感情が見られた。これは、レオンハルト様の本当の気持ちなのだろうか?私の魔法が正しく読み取れなかっただけではないの?だって、あまりに違いすぎる。
この結果が、私にはどうしても信じられなかった。だって、今まで散々嫌われていると思っていたのだから……
もし、嫌いではないとしたら、どうして否定的な言葉を並べるのか?
本当に理解できない。そこで、私はリリアにもお茶会での様子を尋ねてみることにした。
「リリアから見て、レオンハルト様は私のことを嫌っていると思う?いつも、そんな言葉をかけられているでしょう?正直に思っていることを言っていいのよ。」
「……お嬢様。前から私はお伝えしていますよね。あの中学生男子は、完全にお嬢様のことが大好きですって。はたから見てりゃ、分かりますよ。絶対です。なんなら、賭けてもいいです。」
「だって、君が嫌いって……」
自分で言っていて悲しくなってきてしまう。
「そこが、ポンコツだって言っているんですよ。好きな子には、反対のことを言って振り向かせたいっていう、おこちゃま男子の思考なんです。嫌いは好きの裏返しです。」
「そ、そんな……信じられないわ。」
「あ、あのお嬢様のたまに出るツンデレの言葉と似た種類かもしれませんよ。それなら、お嬢様にもお分かりでしょう?私は、お嬢様のツンデレな言葉も好きですけどね。また今度、ツインテールで私に向かってツンデレ発言してください。それが、私にとっての最高のご褒美になります。私の考えが、当たっていたらぜひお願いしますね。」
「当たるわけないからそんなことしません!もう、ツインテールは禁止です。」
「はいはい。分かりました。楽しみに待っていますので、お嬢様も覚えておいてくださいね。」
リリアと訳の分からない賭けをしてしまった。それにしても、分からない。レオンハルト様は、本当に私を嫌っていないの?
いつまでたっても、結論は出るわけがない。
そこで、もう少し魔法を使ってレオンハルト様の気持ちを確認していくしかないと結論付けた。
~~ ◇ ~~
次のお茶会当日。
私がいつものように、庭園でレオンハルト様を待っていると―――
そこに、オレンジ色の髪をした、とても美しい女性が現れた。体のラインが分かるドレスを身にまとい、女性的な魅力にあふれている。大人な感じのフレグランスの香りもする。
「あら!レオンハルト様はこちらにいらっしゃるとお聞きしたのだけど……あなたは?」
「私は、フェルディナ公爵家のマリーベルと申します。レオンハルト様は、もうすぐいらっしゃるかと思います。」
「そうなのね。私は、タイト国からレオンハルト様に会うために来た第一王女のミネルバよ。ここで待たせてもらうわ。あなたは、もう帰ってもらってよろしいのよ。」
「あ、申し訳ございませんが、本日はレオンハルト様にお茶会に招待されていますので、勝手に帰るわけにはまいりません。こちらで待たせていただいてます。」
なんだか、割り込んできたのはミネルバ様のはずなのに、私の方がお邪魔しているような言い方をされて思わず張り合ってそう答えてしまった。気まずい雰囲気のまま、二人で無言で紅茶を飲んでいると、いつも通りにちょっと急ぎ気味のレオンハルト様がいらっしゃる。
私が挨拶をしようと立ち上がると、それよりも早くミネルバ様がレオンハルト様に向かって笑顔で声をかける。
「お待ち申し上げていました。レオンハルト様。お会いできて光栄です!」
「いや。」
レオンハルト様が、足を止め、驚きに声も出せずにいる。
私はそこで、挨拶をして、すぐに魔法を発動する。
「本日もお呼びいただき、ありがとうございます。(レオンハルト様の気持ちを教えて!)」
「レオンハルト様、私本日レオンハルト様にお会いできるのを楽しみにしておりましたの。少しお茶をいただきましたら、王宮をご案内いただけるかしら?」
「喜んで。これから…」
(いやだ。なんでお前なんかがこの大事な日に来ているんだよ。すぐに、立ち去ってくれよ。今日は大事なマリーベル嬢とのお茶会の日なんだよ。)
「まあ!嬉しいわ。それなら、こちらの方にはすぐにお帰りいただいて、ご一緒いたしましょう。」
「ああ。そう……」
(絶対にいやだ。お前こそ帰れ!マリーベル嬢に少しでも誤解を与えたくないんだよ。頼む、誰かこいつをどこかにやってくれ!)
「さあ。お帰りいただいて結構ですのよ。私たち、これから二人きりで王宮をご案内いただきながら楽しく過ごすのですから。あなたは、お呼びでなくてよ。」
「ああ。んんっ。」
(違う。帰るのは王女の方だ。マリーベル嬢。誤解だ。帰らないでくれ。私は君ともっと二人で過ごしたいんだ!)
レオンハルト様は、思いつめたような表情をした次の瞬間――――――
私の手を優しく取って、まるで何かを願うかのように見つめてきた。
「ちょっと、どういうことですの?未婚の男女が手を取り合うだなんて。あなた、身の程をわきまえなさい!今日は、私がレオンハルト様に会いに来たんですのよ。」
ミネルバ様のその声を聞いた途端。
レオンハルト様はミネルバ様の視線から私をかばうかのように背を向けて、私に向かって首を振った。私は、レオンハルト様のその仕草から、どうにかレオンハルト様を助けたいと思ってしまって、ミネルバ様に向かって口を開いてしまった。
「あら!レオンハルト様は、もう私のものですのよ。だって、あ、愛する婚約者ですもの。お帰りいただくのはあなたではなくて!」
(うわ~。そうだった。魔法を使ってしまったから、ツンデレの呪いの最中だった。なんなの。この言葉のチョイス。王女殿下に不敬だったかしら。)
「まあ。私に喧嘩をお売りになるの?それがどういうことか、分かっていらっしゃるのかしら?」
ミネルバ様もかなりお怒りになられていらっしゃるようだ。どうしよう。
「まだいて……ん、んっ」
(これでは、マリーベル嬢が危険だ。ひとまず、今回は安全に帰ってもらおう。絶対この埋め合わせはするから。大好きなのは―――――君だけだから……)
レオンハルト様は、そうおっしゃって、すぐに立ち上がった。そうして、ミネルバ様にも目をくれず、私をエスコートして馬車のところまで送ってくださった。
私は、エスコートされながらも……
最後に聞いた、大好きなのは――――――
君だけだから……
という言葉に気を取られ、何も考えられず、
気がついたら自分の部屋に戻っていた。
どういうこと?
何も考えられず、ただひたすら顔が熱かった。
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