18 マリーベル嬢が可愛すぎる ~レオンハルトside
マリーベル嬢に誠意を示すためにも、御者からなるべく早く第二王子に戻らなくてはならない。だいぶ慣れてきた私は、待機している侍従に手伝ってもらい、流れ作業のように偽装を解いて第二王子の姿に戻る。そして、足早にお茶会の会場に向かう。
マリーベル嬢は私に気が付いたのか、すぐに挨拶をしてくれる。
「本日もお招きいただき、ありがとうございます。」
まずは、この日を迎えられてよかった。そして、挨拶をしてくれたマリーベル嬢を見て驚いた。
「ああ。あまり…ん、んっ。」
(来てくれてありがとう。マリーベル嬢。それにしても、なんて可愛いんだ!私の贈った髪留めを付けてきてくれたなんて。最高に似合っている。天使だ。自分の贈ったものを身に着けてもらえることがこんなにうれしいなんて。時間をかけて手作りして本当によかった。しかも、なんだこのかわいい髪型は?見たこともないマリーベル嬢の姿にくらくらしてしまいそうだ。……だめだ。気を取り直そう。しっかりしろ!)
「もしかして、この髪留め手作りだったりする?ち、ちょっと恥ずかしいからやめてほしいわ。あ、愛が重すぎるって。まあ、百歩譲ってこれからもつけてあげないこともないけれども……」
マリーベル嬢は、そう話した途端、目を見開いて驚いた後、顔を赤くして下を向いてしまった。
「私は悪くない。たまたまだ。別に…」
(ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。少しでもマリーベル嬢に喜んでもらいたくて、自分にできることを頑張っただけなんだ。手作りじゃなくて、今度はちゃんとしたものを贈るよ。本当にごめん。)
「ま、まあ、私にかかれば何でも似合うから、ど、どんなものでも構わないけど…それより、のどが渇いたわ。気が利かないわね。」
マリーベル嬢は、言いにくそうに話した後、私から視線をそらしてしまった。
「ああ……」
(本当だな。気が利かなくて申し訳なかった。紅茶もお菓子もすぐに準備するから。)
私はすぐに侍従に合図を送り、新しい紅茶とお菓子を準備させた。
「君が嫌い……ん、んっ」
(君の好きなものをいろいろ準備したんだよ。好きなだけ食べてほしい。君がおいしそうに食べる姿を見るだけで、私は幸せなんだから。今日は、大好きな桃のタルトかな?それともメロンかな?食べられなかった分はお土産にしてもいい。そうだ!今までの償いにこれからはずっとそうしよう。)
「わ、私が可愛いからって、ちょっと見つめすぎよ。恥ずかしいじゃない......」
マリーベル嬢は、顔を赤くして下を向いてしまった。今日私は、マリーベル嬢の表情をよく見ようとは思っていたけれど、あまりのかわいさに目を離せなかった。しかし、それはマナー違反だと知っていたはずなのに……どうして私はそっと覗き見なかったんだろう?あ~また嫌われてしまったかな?どうして私は、うまくできないんだろう?
「も、もう、疲れたから今日は終わらない?」
「―――ん!この次はない……」
(はっ!このままではいけない。一人で反省している場合ではなかった。貴重なマリーベル嬢とのお茶会だったのに……まだ、次もありますように。お願いだ。嫌いにならないでくれ。君の願いは何でもかなえるから……お願いだ。)
私がそう心の中で強く、強く願っていると……
「ま、また、会ってあげてもよろしくてよ!」
マリーベル嬢の天使の声が聞こえてきた。また、会ってくれる!?今また会ってくれると言ったよな。空耳ではないよな?こんなに失言ばかりの私なのに、マリーベル嬢はなんて優しいんだ。うれしい!また、挽回の機会をくれるんだ。
(ありがとう。マリーベル嬢~)
心の中で叫んだ私は、すぐさま御者の装いになって、マリーベル嬢を安全に送り届けた。
今日、ダメだった自分をしっかり反省して、次につなげるんだ。
そんな決意をしながら……
~~ ◇ ~~
時を同じくして、第一王子アレクシスは……
今日は、珍しく筋トレをしていない。
当たり前である。筋トレは趣味ではない!弟が好きすぎて、魔法を使ってしまうからその代償として毎日のように筋トレをしてしまうのだ。大事なことなのでしっかり確認するが、好きなのは筋トレではなくて、弟である。
筋トレをしていないということは、今日は先読みの魔法も使っていない。
では何をしているのか―――
城の蔵書室の禁書の棚で重要な本を探していたのだった。
そして、目的のものをとうとう見つけた。
実はアレクシスは王としての優秀な頭脳を持っているのである。そのほとんどを弟のために使ってしまっているのであって、持っていることは持っているのである。
その目的のものとは――――――
………レオンハルトの呪いを解くカギだ!
アレクシスは、レオンハルトの呪いについてある程度の予測はつけてあった。多分、思ったことと反対の言葉を話してしまう呪いだろうと。
でも、その呪いがあまりにも長く続いている。
つまり、これからもずっと続いてしまうのではないか?
このままでは、あまりにレオンが不憫すぎる。大好きなマリーベル嬢に嫌われてしまうのではないかと日々悩んでいる。兄として、力になってやりたい。だから、呪いを解く方法がないか調べることにしたのだ。
これで―――
呪いを解く手段が分かった。
私は、これからもレオンに声をかけて誘導していく。
これだけは、自分の力で成し遂げないと意味がないから。
―――――レオンが愛するマリーベル嬢から、心からの愛を返してもらうことを。
お読みいただき、ありがとうございます!




