17 レオンハルト様の本音が……
お茶会当日。
私は、今日こそレオンハルト様の考えていることを魔法でしっかりと確かめようと決意して、お茶会に臨むことにした。そこで、前回レオンハルト様にいただいた髪留めをリリーにつけてもらった。似合わないとは言われたが、本当にそう思っているのか。今日はしっかり確かめたいから…髪型は、リリーに任せたら、ツインテールという初めての髪型になってしまったうえに、直す時間がないということで泣く泣くそのままお茶会に向かったのである。かなり恥ずかしいけれど、仕方がない。リリーには、
「お嬢様、最高です。これならあの中学生男子も鼻血もんだと思いますよ。」
とよく分からない、賛辞をもらってしまった。
いつも通り、先に席についてレオンハルト様を待っていると、今日も少し急ぎ気味にいらっしゃった。
私は、挨拶と同時に魔法を使った。
「本日もお招きいただき、ありがとうございます。(レオンハルト様の考えていることを教えて!)」
レオンハルト様は、私を見て、目を丸くしている。
「ああ。あまり…ん、んっ。」
(来てくれてありがとう。マリーベル嬢。それにしても、なんて可愛いんだ!私の贈った髪留めを付けてきてくれたなんて。最高に似合っている。天使だ。自分の贈ったものを身に着けてもらえることがこんなにうれしいなんて。時間をかけて手作りして本当によかった。しかも、なんだこのかわいい髪形は?見たこともないマリーベル嬢の姿にくらくらしてしまいそうだ。……だめだ。気を取り直そう。しっかりしろ!)
なんだか、発した言葉の何倍の情報が、すごく早口で入ってきて混乱している。それよりも、手作り?今そうおっしゃった?何を?もしかして、髪留め?レオンハルト様ご自身がこの髪留めを手作りされたの?
「もしかして、この髪留め手作りだったりする?ち、ちょっと恥ずかしいからやめてほしいわ。あ、愛が重すぎるって。まあ、百歩譲ってこれからもつけてあげないこともないけれども……」
(やだ。そうだったわ。魔法を使うとつんでれ?の呪いがあるんだった。言っていることが恥ずかしすぎるわ。)
「私は悪くない。たまたまだ。別に…」
(ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。少しでもマリーベル嬢に喜んでもらいたくて、自分にできることを頑張っただけなんだ。手作りじゃなくて、今度はちゃんとしたものを贈るよ。本当にごめん。)
レオンハルト様は、焦ったように私の顔を見て、眉を下げてすまなそうな表情をした。
「ま、まあ、私にかかれば何でも似合うから、ど、どんなものでも構わないけど…それより、のどが渇いたわ。気が利かないわね。」
(やめて。そんなこと思っていませんからね。手作りの髪留め、嬉しいですから。それから、気が利かないだなんて思っていませんよ。不敬な態度で本当に申し訳ございません。)
「ああ……」
(本当だな。気が利かなくて申し訳なかった。紅茶もお菓子もすぐに準備するから。)
レオンハルト様は、侍従に合図を送り、新しい紅茶とお菓子がすぐに準備された。
「君が嫌い……ん、んっ」
(君の好きなものをいろいろ準備したんだよ。好きなだけ食べてほしい。君がおいしそうに食べる姿を見るだけで、私は幸せなんだから。今日は、大好きな桃のタルトかな?それともメロンかな?食べられなかった分はお土産にしてもいい。そうだ!今までの償いにこれからはずっとそうしよう。)
レオンハルト様は、自分の言葉にはっとした表情を浮かべたけれど、すぐに私と視線を交わし、慈しむように微笑んでくださった。言葉と心の中の言葉との違いに、私の頭の中が混乱してしまっている。
えっ!言葉では君が嫌いと言いながら、私の好きなものをたくさん準備してくださっている?レオンハルト様は、私の好きなデザートを覚えていらっしゃるの?
「わ、私が可愛いからって、ちょっと見つめすぎよ。恥ずかしいじゃない......」
(私が可愛いなんて思っていないですからね。私の方がよほど恥ずかしいわ。もう何なの、やめて~)
私は、あまりの恥ずかしさに下を向いてしまって、レオンハルト様の様子に気が付かなかった。
レオンハルト様は、私に注目しすぎだと言われて、顔面が蒼白になってしまった。そして、お茶会の最中だというのに、レオンハルト様の脳内では一人反省会が開催されようとしていた。
「も、もう、疲れたから今日は終わらない?」
(頭が混乱しすぎて疲れてしまったわ。ツンデレの呪いでこんな言い方になってしまって申し訳ございません。でも、今日はもう限界かもしれません。お暇させていただきとうございます。)
「―――ん!この次はない……」
(はっ!このままではいけない。一人で反省している場合ではなかった。貴重なマリーベル嬢とのお茶会だったのに……まだ、次もありますように。お願いだ。嫌いにならないでくれ。君の願いは何でもかなえるから……お願いだ。)
えっ……?
レオンハルト様は、私に嫌われたくないの?
それに、「この次」って……
また、お茶会をしたいと思ってくださっているの?
だめだ。もう私はこれ以上考えることができないほど、混乱している。
あ!挨拶はしっかりしなくては―――
「ま、また、会ってあげてもよろしくてよ!」
(うわ~。高飛車な態度で終わってしまった。)
もう、これ以上余計なことを言わないように、あいさつの後はそっとその場を後にした。
レオンハルト様が、また会えると分かって内心喜んでいることにも気づかずに―――
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