14 次のお茶会への準備 ~レオンハルトside
それから、私は次のお茶会でどんな準備をしたらいいか。どんな風に接していったらいいか。兄上に助言をもらいながら考えていった。
「悪かったと思う気持があるのだったら、まずは態度だけでも誠意を表すんだ。」
そうだ。呪いは言葉だけだ。だから態度でマリーベル嬢をちゃんと思っていることを表そう。
マリーベル嬢は、前回私に手作りのお菓子を作ってきてくれた。
だから私もマリーベル嬢に何か手作りのものをお礼の気持ちも込めて渡したい。
何がいいだろうか?私の気持ちが伝わるように、身に着けるものはどうだろうか?ずっと残っていくのも嬉しい。
「身に着けるものなんてくだらない。」
私がそう言うと、兄上は私のことを観察するようにしっかりと見つめた。
「そうか。身に着けるものを贈りたいんだな?」
兄上はすごい。どうしてわかるんだろう?私はすぐにうなずいた。
「それならあまり肩ひじの張らない小物がいいだろう。髪留めなんかはどうだ?」
マリーベル嬢をイメージしてみる。明るいピンクの髪に私の贈った髪留めがつく。すごくうれしい気持ちになる。私は大きく頷いた。
「髪留めだけど、そこには価値のある宝石を一粒付けるんだ。宝石の色は何色がいい?」
それなら、マリーベル嬢の明るいピンクの髪に私の瞳の色の宝石を付けた髪留めなんかはどうだろうか?私が贈ったという証拠にもなる。私は、兄上に向かって自分の瞳を指さした。
「さすがはレオンだな。自分の髪や瞳の色の宝石を恋人に贈るというのはとてもロマンチックだものな。合格だ。それでは、早速宝石商を明日にでも呼ぼうか?」
「適当に呼んでほしい。」
いや駄目だ。それでは私の誠意が伝わらない。私が自分の足で、宝石商をまわって一番思いのこもった宝石を選びたい。兄上には、首を振った後、自分の胸を手のひらで軽くたたき、伝えてみた。
「それでこそ男だ。それなら細工師は私の方で声をかけておこう。」
「既製品から選びたい。」
兄上の言葉に、また私は首を振る。せっかくなら、細工師に作り方を教えてもらって、自分の手で作っていきたい。また、身振りで兄上に伝える。
「そうか、それでは宝石が見つかったら知らせてくれ。細工師に作り方を教えてもらえるように手配をしておこう。ここまで来たら気持ちのこもった最高のものを作り上げるんだ。言葉では伝えづらいだろうから、私から側近のノアにずっとついて指示してもらえるように声をかけるよ。困ったことがあったら必ず相談しに来るんだぞ。」
頼もしい兄上の言葉に嬉しくなり、兄上をしっかりと見つめて大きく頷いた。私は、後悔のないように自分の思いを込めた最高の物を作るべく決意した。
それから、私はまず宝石商を自分の足で回りながら、妖精のように美しいマリーベル嬢にふさわしい宝石を探し始めた。青といっても様々な色があり、私の瞳の色と同じものはなかなか見つからなかった。せっかくいい色だと思っても、マリーベル嬢の澄んだ美しさにかなう透明度のある宝石を選びたい。王都中の宝石商をまわっても見つからなくて、地方まで足を伸ばさなければならなくなった。更には、髪留めにつける宝石として大きさにもこだわりたい。大きすぎても小さすぎてもいけない。
こうして、探し回るうちにお茶会を休ませていただかなくてはならなかった。断腸の思いで中止の連絡を送った。マリーベルが好きだと言ったオレンジのバラの花束を添えて。嫌いにならないで、もう少し待っていてほしい。お願いだ。
「これで。」
やっと見つけたサファイアの宝石。出会った時には、感動に胸が打ち震えてくるほどだった。その宝石は、光に透かすと青く輝き、吸い込まれそうな深い色合いだった。その一粒を大事に王都まで戻り、すぐさま兄上の紹介してくれた細工師のところに向かう。
普通なら面倒な説明やら気難しい職人とのやり取りが全て終わっていて、すぐに取り掛かれるようになっていたのには、兄上の配慮に頭が下がる。ずっと私について説明を繰り返してくれているノアにもだ。みんなの協力を無駄にするわけにはいかない。ここでも、まずは髪留めの大まかな形、仕組み、デザイン、宝石の場所など詳しく計画を立てていった。その後は見習い同様、基本から練習していった。
私は今まで王宮に引きこもり、人との接触をあまり持たずに過ごしてきた。だから集中して取り組むことには慣れていた。もともと細かい作業が好きだったこともあり、順調に作り方を学んでいった。その速さは習った細工師も驚くほどだった。なぜかというと、とにかく私は必死だったからだ。マリーベル嬢とのお茶会が何度も流れていく。それも、理由は言えずにだ。こうしているうちにもマリーベル嬢に愛想を尽かされてしまうかもしれない。ただただ不安だった。
こうして、とうとう自分の思うような髪飾りが完成した時には、あのお茶会から六か月も経ってしまっていた。
果たして、マリーベル嬢に、愛想を尽かされていないだろうか……
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