12 家族への相談
お茶会を途中でやめて帰ってきてしまった日の夜。
私は、家族にレオンハルト様との婚約について相談してみることにした。
果たして、本当にこんな私でもいいものか?自信がない私は、家族の本当の気持ちが知りたいと、私の「相手の気持ちが読める」魔法を使ってみることにした。これで、やはりレオンハルト様にはふさわしくないと感じているのであれば婚約を取りやめていただけるようお願いしてみよう。そう考えた。
いつもの和やかな食事の後。
「あの、今日は私の婚約について教えていただきたいのですがよろしいですか?」
(お父様、お母様、お兄様、本当の気持ちを教えて!)
私は即座に初めての魔法を使ってみた。
「ベルったらどうしたんだい?何でも聞いていいよ。」
(ベルったら、何を知りたいんだろう?お菓子なんか作っていって、殿下とは仲がいいんだろうな。ちょっと寂しいな。)
「殿下がどうしたの?知りたいことがあったらセレフィーナ様に何でも聞いてあげるわよ。」
(あら。恋の相談かしら?殿下は無口だからいろいろと情報が欲しいのかしらね。何でも聞いてあげるわ。)
「殿下が何かしたんじゃないだろうな?何でも兄さまに言うんだぞ。可愛いベルのためだったら何でもしてやるぞ。」
(うちのかわいいベルに殿下は何かしでかしたのか?もし、悲しませるようなことがあったら許さないぞ。)
「もう、みんな私のこと、好、好きすぎなんだから!恥ずかしいからやめてくださる?」
(やだ!私はそんなこと言いたいんじゃないのに!どうしてこんな言葉が口から出てくるの?)
『マリーベル。
そなたには、「知りたいと思ったものの気持ちを読む」ことができる魔法を授けよう。
ただし、その魔法を一度使えば、その日一日は自分の素直な気持ちを言えなくなる呪いが代償となる。そして、呪いは他の人に明かすことはできない。
心して使うがよい。』
(そうだった!これが呪いね。素直な気持ちが言えなくなっちゃうのね。それにしても恥ずかしい。なんなのこの言葉は?)
「好きすぎって当たり前じゃないか。かわいいかわいい妹だぞ。恥ずかしくなんてないんだからな。」
(うちの妹以上にかわいい女性を知らないな。照れてるんだな。可愛いやつめ。)
「そうよ。ところで何が聞きたいの?」
(当たり前よ。うちの大事な姫なのよ。ところで知りたいことは何かしら?)
「そうだぞ。遠慮はいらん。困ったことでもあったのかい?」
(何が聞きたいんだ。ベルは遠慮をしているのか?言いにくい困ったことでもあったか?父様が何でも対処してやるぞ。)
「ふん。そんなに聞きたいの?もう仕方ないわね。私はレオンハルト様にもちろんお似合いだと思うけど、みんなはどう思っているのかなって。ちょっと気になっただけよ。」
(やだ!似合っているとは思ってないわ。心配だから聞きたいのに…何この言葉。もう恥ずかしすぎる。)
「やだ!ベルったら。もうお似合いに決まっているじゃない!それを確認したかったの?乙女心ね。」
(もう、ベルは殿下とお似合いだって家族に後押ししてもらいたかったのね。可愛い乙女心!)
「なんだか父様、お似合いだぞっていうの、ちょっと寂しいから言いたくないな。もちろん、二人ともみんなのあこがれの的だと思うぞ。自信を持て!」
(あ~ベルが私の手から殿下の手にわたってしまうようで寂しいぞ。悔しいからお似合いだなんて言いたくない。でも、ベルが気にしているんなら…大丈夫だ!二人はみんなのあこがれの的、お似合いだ。とほほ……)
「う~ん。お似合いというか?やっぱりベルの方がかわいいからお似合いかどうか微妙かな?でも、殿下の方が他の男よりまだましかな。」
(やっぱりベルの方が百万倍かわいいからお似合いというか微妙だな。まあ、他の男に比べたら殿下の方がまだましという程度だ。)
「もう分かってるってば!た、確かにレオンハルト様は、お父様とお兄様の次に素敵な方だと思うけど。」
(分かってないわよ。レオンハルト様は本当に素敵な方よ。私がそれに釣り合うか心配になるくらいに。もう、思ったことがちゃんと言えないって辛いわね。もうそろそろ部屋に戻ろう。)
「さすが、うちのベルは最高にかわいいな。」
(なんて嬉しいことを言ってくれるんだ!あ~ずっとお嫁に行かなくてもいいぞ!うちに置いておきたい。)
「もう疲れたから部屋に戻るわ。み、みんなの気持ちは嬉しかったけど…」
(もう聞いていられない。恥ずかしいからもう戻ろう。私のこと大好きだと思ってくれているのが分かって本当に嬉しかった。ありがとう。)
私は、呼び止められないようにすぐに席を立って、部屋に戻った。
この魔法を使うと疲れるっていうのが分かった。気持ちがわかるのはいいんだけど、呪いがあるのが本当に困る。自分の気持ちを素直に言えないことがこんなにつらいなんて知らなかったな。
「お嬢様。今日のお嬢様はなんか、ツンデレでしたね。私、ツンデレなお嬢様も大好きですよ。」
部屋に戻り、侍女のリリアが私を見て、嬉しそうにそう告げてくる。
「つんでれ?」
「そう、ツンデレです。簡単に言えば、時として冷たくしたり、甘えたりする人のことです。」
「そ、そんな変な人が好きだなんて、リリアったらおかしいんじゃない?でも、私もリリアが好、好きだけど…」
(リリアったら、いつも私のこと好きだって言ってくれて嬉しい!大好きよ。)
「ほら、それです。いいですね。お嬢様。」
「もう、今日は疲れたから下がっていいわ。明日からまたよろしくね。」
(リリアも今日は疲れただろうから、早く下がらせてあげたい。明日からまた、お願い!)
リリアは、終始いい笑顔で紅茶を準備して下がっていった。
今日は、疲れたわ。
レオンハルト様との婚約に対して、やっていける自信がなくなってしまった。それでも、家族はこのまま続けても問題がないと思っているってことが分かったわ。
はあ~
それでも、次のお茶会では顔を出しづらいな。どうすれば、レオンハルト様と仲を深められるんだろう?
はあ~
一人になった途端に、ため息ばかりがこぼれていく。
こうなったら、レオンハルト様の考えていることを魔法で確認してみようかな?だって、このままじゃ、何が悪いのか?どうしてほしいのか?分からないもの。
あ~でも、王族の方に魔法をかけるなんてやっぱりだめよね…
解決の糸口が見つからず、せめて少しでも時間が欲しいと願ってしまった。
こちらからは言いにくいけど、体調を理由に一度くらいお休みするのは許されるだろうか?
そう願っていたからか、次のお茶会はしばらく後になるという連絡が入った。
その間に、どうしたらいいかじっくり考えよう。
そう思うマリーベルだった。
お仕事しながら、頑張っていらっしゃるお仲間に尊敬の念を表します。
すごいことだと感じています。
私も頑張ります。




