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10 ちぐはぐなお茶会  



怒らせてしまったかと思って心配していたけれど、あれからも定期的なお茶会の案内は届いてくる。


二回目のお茶会の時から王家から贈られた馬車を使っているが、本当に乗り心地がいい。しかも、馬車がいいのか御者の腕がいいのか本当に揺れずに快適に過ごすことができる。私も二回目のお茶会での反省を生かして、時間に余裕をもって移動することにしている。王宮への往復はとてもよくなったけど、問題はお茶会自体にあった。


あれから毎回王宮に着くと、侍従の方に案内されてレオンハルト様がいらっしゃるまで待つようになった。お茶会の時間は決められているはずなのに、必ずだ。お忙しいのかいつも少し焦ったように到着される。その上、いらっしゃってもかけてくださる言葉があまり良いものではない。


「遅れたが、悪いとは思っていない。んんっ。」


「お忙しいのですね。私は気にしておりません。」


「今日のドレスは、似合わない…んんっ。」


「お気に障ったでしょうか。申し訳ありません。」


「仕方がないから今度贈ってやる。」


「そんな。申し訳ありません。」


「贈るのも私の義務だ。何色が好きなんだ?」


「私は、水色や青が好きでございます。」


「それは似合わな…んんっ。分かった。参考にする。」


こんな感じで一回目のお茶会が嘘のように、言葉が少々きつく、私の考えが否定されているようで悲しくなってしまう。

それなのに、私の好みにピッタリな贈り物がされてくる。言葉と行動がどうもちぐはぐな印象を受ける。


それでも、ずっと否定の言葉ばかり言われていては、お茶会自体も憂鬱なものに変わっていく。どうにか雰囲気を変えて、婚約者として仲を深めていきたい。




「リリア。お願い。今日はレオンハルト様が贈ってくださったワンピースを準備して。それから、それに合った素敵な髪形をお願いできるかしら。今までの私の服装や髪形はどうも似合っていないとおっしゃられて…」


「まあ~!殿下はそんなことをおっしゃるんですか~。ダメンズですね。紳士として失格です。お嬢様は妖精のようにかわいらしいので照れているだけかもしれませんよ。思春期男子かって!」


「だめんず?ししゅんき?」


私の侍女のリリアは、いつも私を最高に褒めてくれるんだけど、時々私にも分からない言葉を使う。それでも、私が落ち込まないように一生懸命言葉を尽くしてくれていることが分かるから私の気持ちも少し救われる。


「いつもありがとう。それでも婚約者として少しでもよくできるところは直していきたいの。リリア、協力してくれる?」


「はい!喜んで!お嬢様にそんなにかわいい顔でお願いされたら、全力でいくしかないじゃないですか。お任せください。ついでに思春期男子の言葉と裏腹な心の声を読み取って差し上げましょう。」


「心強いわ。リリア、大好きよ。」


「お嬢様。キュンです。どこまでもついてまいります。」


「きゅん?ってなんかかわいい言葉ね!」




そうして、次のお茶会にはリリアも一緒についてきてくれて、会場の少し離れたところで見守っていてくれた。


レオンハルト様は、いつも通りちょっと急いだ様子で庭園まで来たが、私を見て足を止めてしまわれた。

ご挨拶をしようかと立ち上がったけれど、レオンハルト様は、驚いたように目を見開いてそして顔を赤らめた。


「本日もお茶会にお招きいただき、ありがたく存じます。」


「あ、ああ。その、すごく、似合ってな…ん、んっ、ごほっ、ごほっ…」


レオンハルト様は、真っ赤な顔で激しくせき込み始めた。


「大丈夫でございますか。本当に素敵な贈り物をありがとうございます。更に、レオンハルト様に釣り合いますように精進いたします。」


「ああ。仕方ないからまた贈る。それより、お菓子を…」


「本日のお菓子もどれもおいしそうです。今日はメロンをいただきます。」


「ああ。」


レオンハルト様は、ご自分は何も食べずに紅茶を飲んでいらっしゃる。


「レオンハルト様は、何がお好きでいらっしゃいますか?」


「マリ…マンゴーだ。」


そう言って、視線をうろつかせたレオンハルト様。なんだか、耳が赤い気がする。甘いものが好きだなんて話すのが、恥ずかしいのかもしれないわね。


「そうなのですね。甘くておいしいですよね。私も好きですよ。」


「そうか。」


「そうですわ。贈り物をいただいたお礼に、今度お菓子でも持参させていただいてもよろしいでしょうか?」


「いらない!う~……いや。」


「よろしいんですか?」


「ああ。期待しない…んんっ」



こうして、またお茶会が終わり、馬車の準備ができるまで少し待ってから帰ることになった。


馬車の中では、リリアが最初からものすごく怒っていた。


「もう何ですか。あの思春期野郎!もう、気持ちが駄々洩れだって。なんで素直に返せない!お嬢様がかわいそうすぎる。」


―――ぶはっ!


「何の音かしら?それより、そんなに大きな声を出さないで!よく分からないけど、私を思って言ってくれているんでしょう?だけど、不敬よ。誰かに聞かれたらと思うと心配だわ。」


「だって、お嬢様。こんなにかわいいお嬢様を前にして、似合ってないとか仕方ないとか言うなんて。好きな子にはつらく当たっちゃうとか。全くおこちゃまね。小学生男子か?」


―――ぐわっ!


「?もう少し、私も努力しなくちゃいけないってことよ。でもやっぱり私も少しは褒められたかったかな…似合っているって言ってほしかった…」


「お嬢様は存在するだけで神です!私がその分たくさん褒めて差し上げます。あんな態度ばかり取っていると、お嬢様の心が離れて行ってしまいますよ。離れてから後悔しても遅いっての。好きなものはマリって、お嬢様のことじゃない!ばれてるっての。」


―――んぐっ!


「えっ、レオンハルト様はマンゴーがお好きって言ったのよ。今度どんなデザートをもっていこうかしら…リリア、協力してね。少しでも私に興味を持っていただけるように。」



こうして、馬車の中でレオンハルトのバッシングは続くのだった。



そして、リリアの言葉は案外レオンハルトの気持ちを当ててしまっているのであった。




ゆっくり楽しみながら書いております。

お読みいただき、ありがとうございます!

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