最終話 悪魔を倒すぞ
「それじゃあロボ、トゲつきでお願いね」
トゲなしバージョンになっていたロボは、かしょんかしょんいいながらトゲを出した。
「すごいトゲだな。転がりでパワーをつけてこれをぶちかませば、さすがの悪魔もひとたまりもないだろうよ」
「ミケランジェロくんも、とびきりの浄化を頼むね」
「おう、任せろよ!」
ここはミケランジェロくんの魔法と転がりパワーを信じるしかないよね。
「でも、上手く転がれるかな? なんか最近、アグネスさんの蹴りがないとスタートダッシュが決まらないんだよね」
「おまえ……妙な癖をつけてんじゃねえよ……」
ミケランジェロくんに呆れられてしまったよ。
「まあ、霊峰から転がり出すから、それなりに行けるんじゃ……なんか、殺気を感じねえか?」
「こんな高い山のてっぺんには、魔物も来ないと思うけど」
きょんたがきょんきょん鳴いて上を見ているので、僕たちも見上げた、
「なんだあのバカでっけー鳥は!?」
来た時にも飛んできた、軽トラくらいの大きさがある鳥が「キェーッ!」と怒りの声をあげながら突っ込んできたので、僕はミケランジェロくんを抱っこし頭にきょんたを乗せて転がり避けた。
「あー、思い出した。ふかふかの草の山は、この鳥の巣なんだっけ」
「なんだと? ヤベーじゃんか」
巣を背中にして守りながら、また「キェーッ!」と威嚇する鳥は、今回は人数が多いせいか、突撃してきた。
そして、思いきり僕を蹴飛ばした。
「うわあっ、やられたーっ、けどラッキー」
鳥の蹴りは、アグネスさんに負けないくらいに鋭く力のこもったものだったので、僕たちはちょっといい感じに山肌を転がり落ちた。
どんどんスピードをあげながら、この前みたいに謎の空間を出たり入ったりしながら霊峰を下っていく。
転がって、転がって、もう草原の真ん中くらいまで攻め込んできていた足スケルトンのところまで転がった。
「オラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアアアアアーッ!」
爆走する僕たちに驚いて距離を取った、ダイヤモンド一家、ギルド騎士団、特別攻撃部隊のみんなが、ミケランジェロくんのとてもガラの悪い雄叫びを聞いて「今の声は、まさか?」「ミケなのか?」と動揺している。
「うおおおおおおおおおおおーっ」
「きょおおおおおおおおおおーん」
僕ときょんたも雄叫びをあげたけれど、ミケランジェロくんに比べられちゃうと全然迫力がたりないよね。もっと修業しなくっちゃ。
「いくぜ、コロン!」
「おう!」
足スケルトンの正面から転がっていくと、ブヨブヨの顔はヒョロロロロオオオオオオーッと僕たちに向かって呪いの叫び声を出す。
でも、霊峰の高さから一気に転がってきた僕たちにはまったく効かない。
「神よ、ご加護をありがとうございます。あなたの敬虔なしもべたちに襲いかかる災いを、神の名のもとに祓い清めます」
ミケランジェロくんの詠唱が始まった。
僕も「神様、転がりパワーを使ってナラクの脅威となる悪魔を倒します。ご加護をお願いします!」と天に祈った。
そして、弾みをつけて、悪魔の顔面に飛び込んだ。
「健やかであれ、愛情深くあれ、清廉であれ、我らは神の愛し子であり神を愛し慕う清き魂。『神聖浄化』!!!!!」
「超ウルトラスペシャル転がり清浄!!!!!」
僕たちは淡い水色に発光する。背中のトゲがひときわ鋭くなって浄化の光を纏った。
「悪魔よ神の力の前に消え去るがいい!」
悪魔の顔面に、僕たちはめり込んだ。
そのまま、背中のトゲでえぐりながら、向こう側にまで突き抜ける。
光り続けている僕たちは、方向転換するとさっきよりも高く飛び上がり、回転しながら悪魔の脳天から足元まで一気に貫いた。
『!!!!!!!!!!!!』
声のない叫びが響き、邪悪な波動が弱まっていく。
振り向くと、足スケルトンの頭だったものは落下して、水色の光に包まれて小さくなっていく。胴体のスケルトンもサラサラと崩れて白い粉になり、やがて消え去った。
二本の巨大な脚は縮んで小さくなり、丸い球になって、空に消えていった。
「あれは人の魂かな?」
僕はミケランジェロくんを下ろして、球の行方を見た。
「ああ、アグラダーの魂だろうよ。天に昇り、しっかりと罪を浄化してもらうがいい。神はすべての人をお許しになる」
ミケランジェロくんにとって、ものすごく憎い人のはずのアグラダーにそんな風に言えるなんて、このヤンキー神官は本当に立派な聖職者なんだな。
「ミケ! よかった!」
全力のアグネスさんが、ミケランジェロくんに飛びかかった……じゃなくて、飛びついて抱きしめた。
「もう、ほんと馬鹿よ! あんまり無茶をしないでよ、こっちの心臓が持たないから!」
「うひひっ、ごめんって」
あのさあ、泣いてる女の子を前にして、その笑い方はやめなよ。
ほら、怒ったアグネスさんにデコピンされちゃったじゃん。
「コロン、ありがとう。おまえのおかげでミケが戻ってきた」
「テオドールさん」
「コロン、よくやったな」
「ありがとう、コロン。神殿の不始末をよくぞ片付けてくれた。ミケランジェロのことも助かった。さすがは『神の落とし子』だと、深い感謝をさせていただきたい」
「トライザーさん、サーザワン聖下」
なんか、いっぱい褒められちゃった。
「きょん、きょん」
「もちろん、きょんたとロボも大活躍だった。さすがはダイヤモンド一家のメンバーだ」
テオドールさんに褒められて、きょんたもロボも嬉しそうだよ。
こうして、足スケルトンは討伐されて、みんなの努力のおかげでルアンの街は被害を被ることもなく、死者もなく(あっ、約一名、逝っちゃってから蘇ってきたけどね)無事に日常を取り戻すことができた。
今日も僕たちダイヤモンド一家は、力を合わせて魔物を狩る。
「ミケランジェロくん、生き返ったから聖人になったんだって?」
たくさんの獲物をミケランジェロくんのポーチと僕の胸ポケットに詰め込んで、ルアンの街に向かって歩く。
「あー、サーザワンがなんかそれらしいことを言ってきたけどよォ、めんどくせーから断った。一度破門したんだから手のひらを返すなっつーの」
「いいの?」
「金以外はいらねえよ。祈るのに、立派な建物も肩書きなんてのもいらねえからな」
「ま、そうだよね」
お金はいるけどね。
サーザワン聖下が、僕たちにたくさんの報奨金をくれたんだけどさ、相談して各地の孤児院に寄付しちゃったんだよね。
ミケランジェロくんは「俺はガキどものために戦ったんだから、ガキどもに美味いもんを食わしてやれればいいんだ」って言うし、テオドールさんとアグネスさんも「おまえたちふたりのがんばりだから、好きに使え」「不祥事を闇に葬った口止め料なんて、あぶく銭よ。パーっと子どもにやっちゃえばいいわ」と賛成してくれた。
みんな、本当にいい人たちだよね。
僕の最大の幸運は、ダイヤモンド一家に入れてもらえたことだと思う。
こんな毎日ならば、恐ろしいと言われるナラクの生活も、最高にクールでワイルドだよ!
さあ、今日もオーロラウサギが出るかな?
「さっさと街に行って、美味いもんを食おうぜ! 全員、ダッシュだーっ!」
ノリノリのミケランジェロくんが走り出し、みんなも走り、僕は転がった。
俺たちはワイルドでイカしたダイヤモンド一家だぜ!
FIN.
これでこのお話は終わりです。
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました!




