第50話 天を駆ける転がり
「うわああああああああああああーっ!」
「きょおおおおおおおおおおおおーっ!」
すごいよ、僕たちは空中を転がってるよ!
このパワーならきっとミケランジェロくんの怪我も治るはずだよね。
きょんたと一緒に悲鳴のような叫び声をあげながら、どんどん離れていく草原を見る。神官たちが集団で浄化魔法をかけて、騎士たちが攻撃をしているけれど、足スケルトンはじわじわとルアンの街の方へと進んで行く。
とどめを刺すには攻撃力が足りていないんだ。
ミケランジェロくんを起こしたら、急いで倒しに行かなくちゃ街が大変なことになるよ。
僕たちは天高くまで転がって、そのまま高い山の頂上に着地した。
見覚えのあるこの山は……。
「あっ、僕ときょんたが最初にいた山だね。霊峰って呼ばれているんだっけ?」
「きょんきょん」
山の上にある、居心地のいい草のベッド(やたらに大きな鳥の巣だ)にミケランジェロくんを下ろして、身体を揺する。
「ミケランジェロくん、起きてよ。もう身体はすっかり治っているし、清浄もかけたからベタベタしなくて快適だよ。早く起きて、足スケルトンを倒しに行こうよ」
揺すっても揺すっても、起きてくれない。
そんなに疲れちゃったの?
もう、二度と、目を覚ましてくれないほど、疲れちゃったの?
僕がもっと上手に転がれていたら、ミケランジェロくんは……死なずに済んだの?
「ごめんね。下手くそな僕が悪かったんだよね。謝るから、目を覚ましてよう……」
もう動かないミケランジェロくんの手を握りながら、僕は、泣いた。
「ミケランジェロくん、ミケランジェロくん」
「きょん」
「ミケランジェロくん、うううううう」
「きょんきょん」
「ミケランジェっぷ」
きょんたが肉球で僕の顔面を連打した。
ちょっと酷いよ。
「なにするの、きょんた」
「きょーんきょーん」
きょんたが空中でくるっと一回転して、僕の顎を蹴り上げたものだから、僕はそのまま仰向けに倒れてしまった。
「酷いよう……え?」
空の高いところに光る球が見えた。
青と金色と緑色と、紫色も少し入っている、とても綺麗な光の球が上から落ちてくる。
「きょんきょん」
「うん、すごく見覚えがあるよ! あれは」
猛スピードで球が落ちてきて、ミケランジェロくんの胸に吸い込まれた。
「うおおおおおおーっ、ビクったぜ!」
「わあっ!」
動かないはずのミケランジェロくんが、腹筋を使って起きた!
こっちがビクッたよ!
「ミケランジェロくん!」
「おう、コロンじゃねえか。足スケのやつはどうなった?」
「おう、じゃないよ! ミケランジェロくん、ミケランジェロくん、よかった、生き返った、よかったあああああああああーっ!」
「なんだよ、おまえすげえ顔になってんぞ」
「だって、ミケランジェロくんが死んじゃうから! 死んじゃうから!」
「そうなんだよ、俺は死んだんだよ。ったく参ったぜ!」
「生き返ったんだよね? お化けじゃないよね?」
「こんなにピチピチなお化けがいるかよ」
ミケランジェロくんは、死んでからのことを教えてくれた。
死ぬと魂になって、天界で執着とかその他いろんな、生まれ変わる時に不要になるものを綺麗に洗い流してピカピカになるんだけど。
ミケランジェロくんは大暴れして抵抗したという。
「だってよう、この世界を、そういやナラクって言うんだってな、このまんま放って生まれ変わるわけにはいかないじゃんか。それはいくらなんでも無責任ってもんだぜ。俺は神様に清廉な人生を誓う敬虔な聖職者なんだからよう、チビどもを守るっつったら、死んでも守り切らなきゃいけねえわけさ!」
ミケランジェロくんってば、すごく崇高なことを話しているのに、チンピラっぽ過ぎるよ。
「だから俺は今すぐ戻せって天界のなんちゃらに言ったわけよ。そうしたら、決まりがどうのこうのうるせえから、その場で浄化かけて消しちまおうかと思ったんだけどさ」
天界の親切な人たちを汚れ扱いしちゃ駄目だよ……。
「そこでよう、なんか、おまえのことを知ってる兄ちゃんが来たんだぜ。んで、ナラクがどうのこうの言ってるから、悪魔に滅ぼされる寸前だっつったらすげえ慌てやがるのよ。なんでも、コロンが事故で天界からナラクに落っこちて、きょんたを助けてくれた恩を返さなきゃなんねえから幸せにしたいんだって? 生まれ変わってちっとばかりで、また死んじまう羽目になったら困るとかでわいわい騒いでさ。そこで! この神の使徒たるミケランジェロ様が! 天命を受けて! 立ち上がることになったわけだ!」
「おお、ミケランジェロくん、かっこいい!」
「そうか?」
ミケランジェロくんは嬉しそうにうひひと笑った。笑い方が……まあいいや。
「ってことで、生まれ変わった俺様がおまえと一緒に悪魔を倒すことになったわけよ。倒せなかったら、みんなで仲良く天界行きだからな。そうなったらさすがにどうにもならねえらしいから、がんばろうぜ!」
「おう、がんばろうぜ!」
「で、作戦だけどな」
僕たちは、世界を救う作戦を立てた。
1、僕はトゲつきアルマジローンになったロボを装着する。
2、ミケランジェロくんを抱っこして、きょんたを頭に乗せて、霊峰からすごい勢いで転がる。そして、悪魔のところに行く。
3、ミケランジェロくんがすごい神聖浄化を放ちながら、僕がすごい転がり清浄を使いつつ、トゲを悪魔にぶっ刺す。
以上!
どこから見ても完璧なすげえ作戦だ!




