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転がりぼっちゃん〜もふもふと『転がり』ですべて解決する!〜  作者: 葉月クロル


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第49話 ピンチ!

 僕は全速力で足スケルトンの前に転がり出た。

 そして、煽る。

 足スケの注意を全部引きつけるために、煽る!


「HEY!HEY!HEY! ブヨブヨほねほねのみっともない魔物はこちらですかあああァ?」


「きょんきょんきょおおおん?」


 きょんたの合いの手もばっちりだ。

 あまり表情のなかった足スケルトンの顔が激しく波打って、ちょっと頭おかしくなっちゃったの? と尋ねたくなるような変な顔になった。


「ヘーイ、ヘーイ、変顔ヘーイ!」


「きょーん、きょーん!」


 念のために言っておくけれど、これはあくまでも作戦のためにやっているんだからね? 僕もきょんたもヤンキーではありません。


 調子良く煽って、僕たちが足スケの熱い気持ちをしっかりと受け止めては転がっているうちに、神官たちが体勢を立て直そうとがんばっていた。


「もう一度、浄化をかけるぞ!」


 サーザワン聖下が気合いを入れている。

 頼れるのは神官たちの集団魔法なんだから、ここはがんばって欲しいよ。


「心をひとつにして悪魔に立ち向かうんだ!」


 わあ、かっこいいな! 

 頼れるリーダーって感じだね。

 聖職者っぽくないように思えるけれど、危険で荒事が多いこの世界だと仕方がないことなのかな。

 ナラクって怖いもんね。


 僕は神官の皆さんが詠唱をしている間に、足スケを煽って煽ってすべての攻撃を受けようとしたんだけど。

 不意に、足スケの脚が、神官たちの方に向かって振り上げられた。


「まずい!」


 アレはアグラダーの魂が入った脚だから、悪魔とは違う思惑を持っていたんだ。

 バランスを崩した悪魔は、僕ではなく神官たちに攻撃の矛先ほこさきを変える。


 ヤバいヤバい、早く転がって僕が受けなくちゃ!

 でも、間に合わない!


「『神聖閃光セイントフラッシュ』!」


 ミケランジェロくん!

 猛ダッシュで神官たちの前に身体を滑り込ませて、ミケランジェロくんが閃光を放った!


 ヒョロロロロオオオオオオーッ! と叫びながら、両眼を潰された悪魔がミケランジェロくんに向かってブヨブヨの両腕を振り回した。


「危ない、よけてええええええええーっ!」


 強い光にあぶられて霞む視界の中で、ミケランジェロくんの身体が、殴られて、飛んだ。




「ミケランジェロくん! ミケランジェロくん! ミケランジェロくん!」


 気がつくと、僕は地面に横たわるミケランジェロくんの前で、ひたすら叫んでいた。

 綺麗な目は閉じられて、血の涙が流れている。鼻からも、耳からも、血が流れ出ている。

 僕がいくら名前を呼んでも、ぴくりとも動かない。


「ミケランジェロくん! ミケランジェロくん!」


「ミケランジェロ!」


 目を回復させてから駆け寄ってきたらしいサーザワン聖下が、ミケランジェロくんのために祈った。


「神よ、ご加護をありがとうございます。あなたの敬虔けいけんなしもべ、愛を持ち生きるいとし子に、聖なる力をお与えください。『神聖回復セイントヒール』!」


 ミケランジェロくんの身体が淡く光った。

 でも、目を覚まさない。


「……死んでいる」


「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ死ぬわけないじゃん! ミケランジェロくんが死ぬわけないじゃん! きっとそれじゃあ足りないんだよ、僕が回復するから!」


「コロン、落ち着きなさい」


「離してアグネスさん、こういうのは早く治さないと後遺症が出たりするから」


「今のは聖下の使う特別な回復魔法よ。コロン、ミケは……」


「違うって言ってるでしょ! アグネスさん、違うんだよ! ミケランジェロくんはね、死んだりしないんだ。だってすごい神官じゃん! 子どもたちを守るって言ってるじゃん! ちょっと怪我をしただけで、治せばまた」


「コロン、コロン、やめて、お願いだから」


「泣かないでよ、アグネスさん、ミケランジェロくんは僕と力を合わせて足スケを倒すって言ってたんだから! 約束を破ったりしないんだから!」


 テオドールさんが僕の身体を押さえようとしたけれど、僕は転がって避けた。


「大丈夫、転がり回復をかければ大丈夫だから。ミケランジェロくん、行くよ」


 僕は動かなくなったミケランジェロくんを抱き上げると、半分溶けて暴れている足スケルトンの方に向かって転がった。

 あいつの攻撃を転がりパワーに変換すれば、きっとすごい回復力になるはずなんだよ。そうしたら、ミケランジェロくんは目を覚ますんだ。


 そう信じて、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も転がったのに。


 ミケランジェロくんは目を覚まさない。


 血まみれの顔だとかわいそうだから、『転がり清浄クリーン』もかけて綺麗にしたし、普通に、眠っているだけなのに。


「ミケランジェロくん、起きてよ! 僕は攻撃ができないから、ミケランジェロくんと一緒じゃないと駄目なんだよ!」


 僕は泣きながら転がって。

 諦めないで何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も転がって。


 足スケルトンの渾身の一撃を受けて、空高く吹っ飛んだ。

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