第48話 神官の攻撃
「ダイヤモンド一家、がんばって足止めしてくれたな。助かった」
「あっ、トライザーさんだ!」
トライザーさんたちが、ツノのある馬の魔物、アルタホースにまたがってやって来た。ギルドの騎士団メンバー以外にも騎士がいて総勢三十人くらいなので、おそらく領主様のところの騎士も出撃してくれたんだろう。
神殿の聖騎士たちも、今日は二十人くらいいて、それぞれの馬に神官らしい人たちを乗せている。
サーザワン聖下だけはひとりでアルタホースを乗りこなしているね。さすがは筋肉寄りの神官だ。
ミケランジェロくんが「トライザーさん、ちーっす!」と片手をあげた。
おお、なんかワイルドでかっこいいじゃん!
僕も「トライザーさん、ちーっす!」と片手を上げると、きょんたが「きょん、きょーん!」と前脚を上げて、ロボは片手を上げながら深々とお辞儀をした。礼儀正しいね。
トライザーさんは「ふっ」と笑ってから「あとは俺たちに任せて街に戻るんだ」と言った。
サーザワン聖下のアルタホースが近づいて来た。
「ご苦労。もう後ろに下がっていろ」
「おう」
ミケランジェロくんがサーザワン聖下に対して横柄に返事をしたので、また聖騎士ににらまれるかなと思ったけれど、そんなことはなかった。
「ひとりで悪魔を止められる神官はなかなかいません。聖下、彼にも特別攻撃部隊との共闘をしてもらいませんか?」
神官のひとりが提案した。
なるほど、ミケランジェロくんの神聖魔法の力を認めたから、みんなはなにも言わないんだ。心の中では『不敬な』って思ってるだろうけど。
サーザワン聖下は「いや、ミケランジェロは神殿を離れて冒険者の身分となった在野の者だ。今回の事案は神殿の不始末である、ゆえに神殿に所属する我々が責任を取らねばならないのだ」と提案を却下した。
どうやらあとはお任せして大丈夫そうなので、僕はほっとした。
ミケランジェロくんがかなり無理をしているって感じていたからだ。聖なる魔法という大きな力を扱うには、人間は脆すぎるみたいだよ。
「にしても、あんたが出張ってるっつーのに出撃した神官はこれだけか? なめてんの? 足スケルトンを倒さなきゃ王都どころかこの国が終わるぜ?」
ミケランジェロくんにそう言われて、サーザワン聖下は苦笑し、神官たちは下を向いた。
「現在のところ、まともに浄化の魔法を使える者は、これしかいないのだ。実力者はアグラダーの邪魔の気に障ったようで、かなりの人数が僻地に送られたり神殿を追い出されたりしていた。集まった神官たちに俺がまとめて浄化をかけたら、崩れ落ちて懺悔を始めた者もいてなあ……」
心にヤバいものを持っていた人たちだったんだね。大変なことになってようで、聖下、お疲れさま!
「王都の神殿もだいぶ風通しが良くなったから、今度遊びに来い。孤児院の子供たちもおまえに会いたがっているぞ」
「……へん! まあ、行ってやらねえこともねえな。あの馬鹿デカ悪魔を倒したら考えてやるぜ」
ミケランジェロくん、それはフラグって言うんだよ!
立てちゃダメ!
神官を馬からおろした騎士たちが、魔物を倒しに馬を走らせたので、彼らに任せてテオドールさんとアグネスさんが戻ってきた。サーザワン聖下は神官たちを引き連れて足スケの方に向かっている。
「テオドールさん、ダイヤモンド一家はこれで撤退するの?」
僕が尋ねると、騎士たちの動きを観察していたテオドールさんは「うーん……」と悩み出した。
「聖下はなんて言ってた?」
「後ろに下がってろって言ってたよ。トライザーさんには街に帰っていいって言われた」
「そうか。では、下がって戦いの様子を確認したら、俺たちは帰ろう」
僕たちは「了解!」と応えた。
「ミケランジェロくん、念のために転がり回復を使っておくからおぶさってよ」
「おう、助かるぜ。その前に、バフをかけておくわ」
ミケランジェロくんは手際良くテオドールさんとアグネスさんに防御魔法と回復魔法、念の為の浄化魔法をかけた。
「これでよし」
僕はミケランジェロくんをおんぶして、「蹴ってあげるね」と親切に申し出てくれた(親切心だよね?)アグネスさんのキックを受けると、コロコロ転がった。
しばらくすると「おっし、魔力も体力も回復したぞ、おろしてくれ。向こうは集団魔法の準備を始めたようだな」と言われたので、ミケランジェロくんをおろしてから特別攻撃部隊の方を見る。
ミケランジェロくんが最後にかけた『神聖閃光』から立ち直った悪魔がヒョロロロロオオオオオオと鳴いたけれど、さすがは神官だけあってしっかりと結界を張っているようだ。呪われた様子はない。
こっちもミケランジェロくんがひと通りの防御をしてくれているので大丈夫だ。
「神殿の奴らが全力で神聖浄化を使うんだ、かなり悪魔に効くんじゃねえかな」
そう言うけれど、ミケランジェロくんはなにか心配なことがあるみたいだ。
「神よ、ご加護をありがとうございます。あなたの敬虔なしもべたちに襲いかかる災いを、神の名のもとに祓い清めます」という浄化魔法の詠唱が始まった。声を合わせているのは、集団魔法として発動するためだろう。
「健であれ、愛情深くあれ、清廉であれ、我らは神の愛し子であり神を愛し慕う清き魂。『神聖浄化』!」
神官たちはミケランジェロくんみたいな杖は持っていなくて、両手をバンザイの形に掲げて浄化魔法を発動した。
すると、淡い水色の光が足スケルトンの頭上から降り注いだ。
悪魔の顔は大きな口を開けて『ギュオオオオオオオオオオ』という叫び声をあげた。顔も身体も、一部がサラサラと崩れて光に巻かれて消え去っていく。
「すごい効き目だね」
「ああ、さすがは神官だ。よし、彼らに任せて街に戻るぞ」
どころが、ミケランジェロくんが難しい顔で「いや、待ってくれ」と言った。
「アレはまずいぞ。浄化魔法の威力があんなもんだと、足スケルトンは倒せねえ。練度が低すぎるんだ」
「ええっ、そうなの?」
テオドールさんも「ミケは冒険者として日常的に神聖魔法を使ってきたから、威力も大きい。そうか、神殿の神官はあの程度だったのか」と、不安の表情になっている。
「一度か、せいぜい二度の発動で消し去るくらいじゃないと、あっという間に復活するんじゃねえか? ほら、周りの魔物を喰らい出したぜ」
もがき苦しみながら、悪魔の腕が伸びて付近の魔物をつかみ、次々と口に放り込んでいく。
「なにやってんだよ、あいつら。早く逃げねえと攻撃を受けちまうじゃねえか! くそっ、戦いの現場に出ていない神官だから、魔物についてわかってねえんだ、動きが悪すぎる!」
特別攻撃部隊がやられたら、この世界も終わっちゃうよ!
僕はロボに頼んで、トゲなしアルマジローンに変形合体してもらった。
「テオドールさん、ちょっと転がってくる。アグネスさん、蹴って!」
「了解」
美少女の鋭い蹴りを受けた僕は、足スケルトンに向かって猛スピードで転がった。




