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転がりぼっちゃん〜もふもふと『転がり』ですべて解決する!〜  作者: 葉月クロル


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第5話 ルアンの街に着きました

「あそこがルアンの街なの? まるで要塞だね、すごいな」


 僕は、離れたところからでもわかる、やたらと防御力がありそうな壁を見て驚いた。

 近づくにつれて、壁に継ぎ目がないことがわかってきた。一枚の固そうな岩でできているんだけど、どうやって作ったんだろう?

 僕の知識だと、岩壁は四角く切り出した岩を積み重ねて造るものなんだけど……。

 壁の上は通路があるらしく、数人の人がそこから見張っているのが見える。巨大なバリスタも置かれている。コーヒーを淹れる人じゃなくて、武器のバリスタだ。据え置き型の大弓、と言った方がわかりやすいかな。

 四角い街が、頑丈な壁と人でがっちりと守られていることがわかる。

 

 もしかして、戦争があるのかな?


「すごい守りでしょ? あれは対人用というより対魔物用なの」


「魔物用だったんだ……」


 アグネスさんの説明を聞いて僕はちょっとほっとした。

 石でできた厚い壁がぐるっと街を囲んでいるのは、魔物から街を守るためだった。


 でも、あんな壁を作らなくちゃならないなんて、どんなすごい魔物が襲ってくるんだろうか。あの矢は槍投げの槍レベルに大きいよ。


「街を守る壁は、大勢の魔法使いが集まって三日で作ったと言われているわ」


「魔法で! すごいや!」


「テオ兄さんも土魔法が得意だから、戦いの時に一瞬で岩の壁を出せるのよ」


「あんなに厚いのは出せんぞ」


 ぼそっと突っ込んだ。

 突っ込み方もかっこいいな!


 それでも、戦闘中に魔法を使えるなんてすごい。

 僕も魔法が使えるようになりたいな。


「もちろんあの壁には不壊の魔法がかけられているし、結界魔法も使われているのよ」


「不壊? 結界魔法?」


「めちゃくちゃ強くなる魔法がたくさんかけられているってこと」


「なるほどね」


 テオドールさんが「コロン、壁の上の方を見てみろ。あの模様がわかるか?」と言って指さした。


「丸が何重にも重なっていて、文字のようなものが書かれてる? あと、石がたくさんはめこまれてる……光ってるみたいだ」


 一定の間隔で、壁に不思議な模様が描かれている。


「目がいいな。あれが結界の魔法陣だ。石は魔石といって、魔物の身体の中から出てくる魔力を持った石だ。ここからだと小さく見えるが、かなり大きな魔石が大量に使われている。光っているのは、結界の魔法が発動している証だ」


「へえ、魔石かあ……高いの?」


「高いわよ」


 アグネスさんが言った。


「ダンジョンってわかるわよね? 魔物の巣窟となる不思議な場所よ。ルアンはダンジョンが見つかったから作られた街なの。恐ろしい魔物の近くで暮らすのだから、なにかあっても安全なようにと、街の防衛にはかなり力が入れられているわ」 


 アグネスは「ちなみに、ダンジョンを壁で囲おうとしてもすべて飲み込まれてしまうから無駄なのよ」と付け加えた。

 なるほどダンジョンに壁を作れないから、街を囲ったわけだ。


「しっかりと管理して、たくさんの冒険者たちがダンジョン内の魔物を倒しているけれど、ルアンのダンジョンから魔物が溢れ出てくるようなことがないとは言えないわ。そんなことになってもこの街にいれば安全なのよ。というか、安全だと信じているからこの街に住めるの」


「ええっ、魔物が溢れるの!? そうしたら出てきた魔物はどうなるの?」


「世界中に散るわ。その辺にいる魔物は、みんなどこかのダンジョンから出てきたものよ」


「うわあ……」


 僕は少し離れたところでミケランジェロくんに殴られているウサギを見、圧迫感がある壁を見上げる。

 頼もしいといえば頼もしいけれど、そこまでしなければならない危険があるということなので、内心でびくびくしてしまう。


 この世界は本当に恐ろしいところらしいよ。




 やがて、街の入り口に着いた。石でできた門があって、その前に5列くらいに人が並んでいる。馬車で入る入り口は別にある。

 なんだか前世か前前世かでたぶん見たことがある、テーマパークの入り口みたい。はっきりは思い出せないけれど、もやっとそんなことがわかった。これは記憶ではなくて知識なのかもしれない。

 街の外からやってきた人は、そこで、係の人? になにかを見せてから通してもらっている。テーマパークと違うのは、チェックする人もしてもらう人もほとんどが武装をしているところだ。


「はい、帽子」


「きょん」


 アグネスさんが、僕の頭にきょんたを乗せながら「ここで門番に身分証を見せて街に入るのよ。わたしたちは冒険者専用の入り口を使うわ」と教えてくれた。


「僕には身分証なんてないんだけど、大丈夫かな」


「そのために俺たちが後ろ盾になったんだ」


 テオドールさんが、頭の上のきょんたをさりげなく撫でてから言った。


 順番が来ると、三人は身分証だというカードをどこからか出して、剣で武装した人に見せた。

 

「よお、ミカ。今日もたくさん狩れたか?」


 門番らしいお兄さんは、ミケランジェロくんに気さくに声をかけてくる。


「おう、俺のバッグにはウサギがパンパンに詰まってやがるぜ。シチューにはやっぱりウサギだよな」


「うん、ウサギのシチューは美味いね。たくさん出回って安く買えるなら、うちもシチューにするか」


 そういえば、ここに戻る時に、ミケランジェロくんはテオドールさんに言われてせっせとウサギの魔物を倒していたね。街中に行き渡るくらいに倒したのかな。


「っととと、それどころじゃねえんだった。エヴァン、ちょいと耳を貸してくれ」


「なんだ?」


「こいつ、なんだけどさ」


 門番さんが僕を見たので「こんにちは」と頭を下げた。


「ルアンの街にようこそ。変わった服を着たおぼっちゃんだな……それはネクタイなのか?」


 門番のエヴァンさんは、蝶ネクタイが気になっているようだ。


「もしや、他国の貴族のおぼっちゃんなのか? 依頼で連れてきたわけだな」


「いや、ちょいと違うぜ。いいか、よく聞けよ」


「おう?」


 ミケランジェロくんが「『神の落とし子』が来たって、上のやつに伝えてくれ」と囁く。  


 門番さんの顔つきが変わった。


「ミケの悪ふざけなら怒るぞ」


「マジもマジ、大マジだぜ」


 エヴァンさんがテオドールさんを見る。彼らは小さく頷き合った。


「冒険者ギルドのマスターへの連絡を頼む」


「ミケがいるならそうなるか……四人ともこっちに来てくれ。ロバート、ちょっと頼む、銀色対応発生だ」


「おう!」


 ダイヤモンド一家の三人と僕は、ロバートさんという人に仕事を引き継いだエヴァンさんに連れられて、門の近くの建物に連れて行かれた。


「この部屋でおとなしく待ってろよ」


「お茶とお菓子は」


「出ねえよ!」


 ということで、僕たちは殺風景な部屋で立ったまま待った。


「コロン、念のために確認だ。絶対に、神殿預かりを選ぶなよ」


 僕はミケランジェロくんに「わかったよ!」と固く誓う。


 エヴァンさんは上司っぽい人を連れてすぐに戻ってきた。


「ギルマスのイシューヴァへは人を呼びに行かせた。ギルドにいるはずだから、少し待ってくれ。決まりだから、神殿にも声をかけるぞ」


 そう言った、ヨーロッパの騎士が着ているような立派な服を着た男の人に、ミケランジェロくんは「余計なことはしないでくれよ!」と抗議した。テオドールさんが「ミケ、失礼だ」とミケランジェロくんの頭にゲンコツを落とす。


「すみません、トライザー様」


「……さーせんでした」


 不満げな顔で、ミケランジェロくんは謝った。どうやら偉い人のようだ。彼は目を細めてミケランジェロくんをにらんだけれど、それ以上は言わなかった。


「君が『神の落とし子』か? わたしはこの街を担当する騎士のトライザーという者だ」


「僕はコロンと言います。あの、『神の落とし子』という言葉はこの世界に来てから知ったので、それなのかどうかは断言できませんが……」


「コロンは他の世界からやって来て、未踏の霊峰のてっぺんに落ちた。『神の落とし子』で間違いないと思うぜ」


「そうか。ミケランジェロ、神託がくだされたということは?」


「特にはねえな。だが、敬虔なる神の使徒として、俺がコロンを保護しようと思う」


「わかった」


 あれ?

 ミケランジェロくんが頼もしいよ?

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